2話 片思いの大好きな彼を一生触らないといけないらしい
大好きな人からの唐突な大好物の供給に、ダリアは固まってしまった。
……大好きな者と大好きな物が目の前にある。脳が焼き切れそう。
「な、なぜ……なっ、ななな」
「俺が驚かして落としてしまったので。お詫びにどうぞ」
「………えっ」
しかしずっと固まったまま動かないダリアにノルディックはため息をついた。手首を掴まれてテーブルに連れていかれ椅子に座らせられると、手に押し付けるようにして薄紙に包まれたジャムのサンドイッチを持たせられる。
「無糖の紅茶もありますけど。どうですか」
「なっ、なぜ……」
「好きなので」
ダリアも大好きだ。昼休憩はいつも飲んでいる。……なんでこの部屋にダリアの好きなものがこんなにあるんだろう????ますます混乱した。
「……あの、私あなたに近寄っちゃいけないんじゃ……」
彼は返事をしないまま淡々と水筒から紅茶を注いでダリアの目の前に置いた。
「……あの、そちらのご飯は……」
「もう食べてきました。それはデザートです。食べて」
「……い、頂きます……」
デザートにいちごのサンドイッチをこっそりこんな所で食べようとした彼の一面が愛おしすぎて泣きそう。なにそれぇ!!こんなにいい思いを私がしていいのか!!神様ありがとう!!!!この前ノルディックが怪我した時に神様一生許さないとか思ったけど撤回します!!!!神様あなたは本当にいい人です!!!!毎日祈ろうと思います!!!!
そう考えながらダリアは薄紙を開けてサンドイッチを食べてみた。……すごく親しみやすい味だ。すんごくおいしい!!!!思わず笑顔になると、目の前の彼がずっとこっちを凝視しているのに気が付いて恥ずかしさで真っ赤になった。
「あの、あんまり見ないで下さい…!!」
「どうしてですか」
「恥ずかしくて!!」
「なんで?」
「……恥ずかしいものは恥ずかしいので……」
それ以来会話はなくなった。静かな部屋でただもそもそと美味しすぎるサンドイッチを食べる。……会話がないのになんだか落ち着く気がして不思議だった。
サンドイッチを食べ終わる頃、ノルディックがおもむろに口を開いた。
「……ここで俺に会った事、何があっても誰にも言わないでください。絶対にお願いします。一緒にいたと知られると困る」
心底嫌そうな顔だった。それを見てダリアは胸が締め付けられるような気がした。
「ごめんなさい……」
小さく呟いて俯いた。……なんでだろう。なんで命を救ったのにこんなに嫌われるんだろう。確かに彼の顔はずっと見ていたいくらい好きだしどんな顔も好きだけど、嫌われているみたいなのは心にくる。……辛い。辛すぎる。
「……ごちそうさまでした帰ります」
「おい、」
ダリアは逃げるように椅子から飛び降りて倉庫を後にした。最後まで大好きな彼の顔が見れなかった。
あの何もない倉庫はダリアだけがずっと使っていたのに。誰も来ない安全地帯だったはずなのに、なんで今日あの人は来たんだろう。
明日からどこでお昼ごはんを食べようか悩んでしまう。薬品だらけの仕事部屋の物置は食べ物をあまり食べたくないし、何よりあの隠し部屋で過ごす昼休憩が一番好きだったから困る。昼になると自然と足があそこに向かうのだ。
ダリアはため息をつきながら、仕方なく仕事部屋へ戻っていった。
翌朝、出勤しながら訓練場で朝の訓練をする軍人たちの中からノルディックをつい探して見つけ出してうわあああああああかっこいいいいいいいいいい嫌われてても大好きいいいいいいいいい!!!と脳内で叫び、10時頃の休憩の時にまた渡り廊下から彼を探して護衛魔法をかけてわああああああああ汗かいてるかっこいいいいいい!!!!といつものルーティンをこなし、……また、昼休憩の時間になってしまった。
彼は昨日、デザートをこっそり食べに図書室の隣の倉庫に来たという。なら、来るとしても昼休憩がはじまってから少し後だろう。
ということで、ダリアはとっとと倉庫で昼食を食べて、彼が来る前に図書室に行って本を読んで過ごそうと考えた。というか、ノルディックはもう来ないのではないだろうか。だって会うたびにあれだけ嫌そうな顔をするダリアがあの部屋にいつもいると分かったのだ。考えすぎかもしれない。
ダリアは同時に急いで倉庫へ向かうと、恐る恐る扉を開いた。
……よし。誰もいない。安心して経に入って机にお弁当を置いて、椅子に座って、
「誰にも言ってませんよね」
大好きな声がいきなりした。
ダリアは驚きすぎて飛び上がって椅子から転がり落ちていた。
倉庫の扉を開けると死角になる壁際に、ノルディックが寄りかかるようにして腕を組んで立っていた。不機嫌そうにこちらを見ている。
「ひぇえええええ!!!!」
「……ちょっと、大丈夫ですか」
「な、ななななななぜ再びここに!?あのあのあの私のことが嫌いなのでは」
転がり落ちた床からなんとか立ち上がり、とりあえず椅子にもう一度座りながらダリアはフードを被りなおした。
「先日、あなたに命を救われて困った事があります」
「は、はい……?」
ノルディックはこちらに歩いてくると、もう一つあった椅子に座った。ダリアとテーブルをはさんで向き合う形になる。
「俺はあなたに頭に大量に魔力を流し込まれて治療されたとか。普通なら死んでいたと聞きました」
かっこよすぎてガン見してしまってダリアは彼の話よりも彼の顔面が気になってしょうがない。なんでこんなにかっこよく感じてしまうんだろう。……好きすぎる。好みすぎてこまる。この声も好き。ずっと聞いていたい。
「……聞いてますか?」
「は、はい!!」
「なので、あなたの魔力を定期的に身体に流してもらわないと俺は意識を失うかもしれません。脳が動かなくなるそうです」
その言葉を聞いて、こちらの脳が止まった。
「っな、なんですって!?だからあんなに迷惑そうな顔をしていたんですか!?」
「……まあ……」
「い、いつまでですか!?いつまで魔力流せばいいですか?!治るんでしょうかこれは……!!」
「一生です」
「いっしょう…っっっ!!!」
気絶しかけたが何とか耐えた。
「……ご、ごめんなさい、迷惑かけてごめんなさい……」
ダリアはぼろぼろ泣きながら謝った。これでは彼の命……というか、人生を救ったというより荒らしてしまったではないか。
すると、向かいに座っていたノルディックがいきなりガタっと立ち上がった。びくっとしてそっちを見れば、彼はひどく焦った顔をしていた。
「……な、泣くなって」
「助けなかった方が良かったですか……っ!!で、でもあなたを死なせたくなくて…!!」
「なんでそこまで……」
「ごめんなさいいいいいいい」
好きでごめんなさいいいいとは言えなくて、ダリアはただただ謝った。
「……すみません、やっぱり、……実は」
「わかりました……!!!!」
ノルディックが何か言いかけていたが、ダリアは意を決した。
「魔力を流すとは具体的にどうしたらいいですか?あの、また頭に流したらいい感じでしょうか?」
「……………………………………はあ……、そうです。頭じゃなくてもいいと思いますが頭にしましょう」
ものすごくため息をつかれた。やっぱり嫌そうな顔をしている。それにまたダリアは心がえぐられた。
「最低だ……」
ぼそっと呟く彼にまた心がズキッとする。
「……ご……ごめんなさい……」
「……あ、ちが……」
また泣きそうになるが、今回はぐっとこらえた。泣きたいのは彼の方だ。
「私が触っても嫌じゃないですか……?」
「お願いします」
覚悟を決めてダリアは椅子から立ちあがる。
向かいの椅子に座るノルディックの前に行き、彼の頭に、手を……手、手を、
「…………んああああああああだめえええええええええええええええ」
へなへなとダリアがその場に自分の頭を抱えて座り込んだので、ノルディックは慌てて膝をついてダリアの肩に手を伸ばしたのだが、
「ダリア、」
「だめええええええええ!!!!好きすぎて無理いいいいいいいいい!!!!!」
「え」
………やってしまった。ダリアは頭を抱えてうなだれたまま目を見開いた。心の声が!!!!心の声を口に出してしまった!!!!
「ななななななんでもないですすみません!!なんでもないです!!忘れてください!!!!」
「……忘れられない、です」
「いきます触ります!!!!」
ダリアはやけくそになってばっと立ち上がると、ぐわっと彼の頭に手を置いた。魔力を流して両手で彼の大好きな癖のある黒髪を撫でまわす。
「ちょ、ちょっと」
ノルディックの困惑する声が聞こえるが、撫でまわして流し続けた。
「どのくらいですか!!もっとですか!!」
「……もっと」
「えぇっそんなに……!?」
しばらく両手でわしわしと撫でる。そんなに必要?でも本来死ぬところを引き戻してしまったのだ。こういう異常状態もあるのかもしれない……とふと思った時、あっ、と思い出したことがあって、ダリアはばっと彼の頭から手を離して後ずさった。
そのいきなりの行動に驚いたのか、ノルディックは顔を上げた。……こちらを見上げてくる彼がかっこいい。ときめく!!!!
「……あの、ちなみに代案として、あなたに魔法をかけるのでは対応できないんですか?魔力を流すのとは違いますか……?」
「……魔法をかけるとは……?」
「例えばあなたに防御魔法をかけたら、あなたに魔力を与える事には……なりませんか……」
「それは…………どうでしょう。やってみないとなんとも」
彼の目が若干泳いだように感じた。それに「ん??」と思いつつも、
「あの、それで対応できるなら、すでに私毎日そちらにしてるので……それで足りるので、直接こんな事しなくても……」
「は?すでに毎日?」
「これまで意識は失いましたか?」
あえて「すでに毎日」についての返事は返さないでいると、ノルディックはじっとダリアを見てしばらく何か考えている様子だったが、少ししてまた一段と眉間にしわが寄った。
「……そうですね、失いかけました。直接触ってください。……直接触ってもらわないとだめですね。医者が言ってたので」
「……ダメなんですか……なんだぁ……じゃあ触らないとダメかぁ……」
「嫌ですか俺に触るの」
「あなたが……嫌そうで……」
「俺は嫌ではないです」
と、すごく嫌そうな顔で言われる。
「……ただ、本当に、絶対に誰にも言わないでください。あなたのお師匠さんにも、同僚の方や王子殿下にも」
「………えっ?それは」
「知られたら困る」
「……あの、一生……なんですか、本当にこれ……」
「一生です。一生お願いします」
「……あの、ノルディックさん、私なんとか…こんな事しなくていいようになにか方法を探しますから……」
だからそんなに嫌そうな、辛そうな顔はしないでください。そう言いたかったけど言えなかった。どう考えても一番嫌なのは彼だ。せっかく命が助かったと思ったらこんな情緒不安定なおかしい言動のストーカーに片足を突っ込んだような女に毎日触られないと生きていけないなんて。
「……別の方法探してもいいんですが、絶対に誰にも言わないでくださいよ」
「……あの……でも……私の師匠には相談させてくれませんか。師匠ならきっとなにか心当たりがると思うんです……あの、私の師匠、とってもすごくて」
「絶対にやめてって言ってるんだけど」
びくっとして彼を見る。これまでにないくらい怒った声だった。
「……はっ、はいごめんなさい……!!!!あの、今日はもう大丈夫でしょうか……ノルディックさんがここでお昼過ごすなら私帰りますけど……」
「これ」
彼は床から立ち上がると、持っていた紙袋からすごく見慣れた薄紙に包まれたものを取り出して、ダリアに差し出した。
……またいちごのジャムサンドだ!!
「……あっ!!!!!……あっあっ、いやいや、これはそちらのデザートでは」
「今日の報酬です」
「え……?」
「食べてください。んで明日もお願いします」
ダリアはノルディックから押し付けられるようにサンドイッチを渡される。
……空腹だったからなのかわからないが、サンドイッチがとっても魅力的に見えて、なんだかこれを無性に食べたくてしょうがなくなる。……た、たたたた食べたい。すごく食べたい。いますぐ食べたい……!!な、なんだこの魅力的な美味しそうなサンドイッチ……!!!!
「い、いいんですか、これ食べても……」
「はい」
「わぁあい!!!いただきます!!!!」
結局ダリアは歓喜してジャムサンドを食べた。
……ニ日連続でこんなにおいしいジャムサンドを食べてもいいんだろうか!!わーい!!!!……しかしなんでだろう。おいしすぎる……。昨日も食べたが本当においしい。今まで食べてきたどんなジャムサンドよりもおいしかった。
「……うまいの」
「はい!!これすごくおいしいです!!!!どこで買ってるんですか?」
「……まあ」
「あの、お店は……」
「いいから食えって」
また怒らせてしまった。怒ってる彼も大好きなんだけど怖いのは怖いので怖ダリアはその場に立ったままジャムサンドを食べた。……めちゃくちゃ美味しい!!!!
そうしてジャムサンドを食べ終わって、ごちそうさまでしたとぺこぺこ頭を下げてまたダリアは逃げ帰ろうと思ったのだが、そう言えば明日も魔力をながすのをやれと言われたなと思い出して一応確認しておくことにした。
「…………あの、さっき明日もって……」
「はい。明日もお願いします」
「……ま、毎日やらないとなんでしょうか……」
「医者に聞いた所、多少あいても大丈夫だとの事ですが不安なので」
「……わ、分かりました!できる限りお手伝いします……!!ごめんなさい失礼しました!!!!ごちそうさまでした!!!!!」
それだけ言って、勢いよく頭をさげてダリアは部屋から飛び出していった。
彼がドアの向こうでなにか言っていた気がするがよく聞こえなかった。
「んんんんんんんんんんんっ…………」
……午後。ダリアは呻きながら悶えながら、かつてない程よく働いて魔法薬を作りまくった。
これから私はどうなってしまうんだ!!!!
……触ってしまった。……はぁああああ彼の頭に触ってしまった……大好きなあの髪に……!!!!
どうしようどうしよう。明日も触っていいとかどうしたらいいんだろう。しかも一生????これはもう実質結婚だと思う。どうしよう大好きな人と実質結婚してしまった。向こうは凄く嫌そうで申し訳ないが浮かれすぎてもう頭がとろけそう。あぁ頭痛がいたい。
ダリアは情緒が乱れに乱れながら頭痛と戦いつつ大鍋の中身を魔力を込めてぐるぐるかき回した。はぁ、ノルさん好き。好きすぎておかしくなり……いやもうおかしくなっちゃった。
……でも。
触れて嬉しいし密室で会えるのも嬉しいけど、あんな目では見られたくない。ダリアの心中は複雑だった。
認知なんてされなくてよかったのに。
遠くから見てこっそり支援するくらいがちょうど良かったし、嫌われるくらいなら認知されたくなかった。……辛すぎて涙がじわっと出てくる。師匠にも言われたけど本当に最近情緒が不安定すぎると思う。今大量に作っているのは回復魔法薬だが、精神薬も作ろうと思った。あ、頭が痛いから頭痛薬もつくらなきゃ……。
「おーいダリア!」
聞きなれた声がして、ダリアははっとして物置部屋の入り口を見た。
「……ロシィ先輩」
同じ班の先輩魔術師であるロシィがひょいと物置部屋に入ってきた。彼は赤い長い髪を右下で結んでいてチャラ着いたピアスをたくさんあけたチャラい先輩である。ダリアはあんまり好きではない。やはりチャラいよりノルい方が好きである。
しかも、この先輩は歩くときによく棚とか台に体にぶつけるので物を落としたり壊したりするのだ。いっぱい話しかけられるのも怖いしこの人が来ると少し警戒してしまう。
「あいて」
今日も棚にごんと腕をぶつけていた。最近は通り道に壊れるものを置かないようにしているので助かったがつい先日までは高い素材の入ったガラスケースがあった場所だ!!セーフ!!
「先輩……気を付けて歩いてくださいってば……」
「あ、お前もうそんな魔法薬作ってんの?働くねぇ、また他の班員の仕事押し付けられたりした?」
「……や、今回はまだ……でもすぐ追加の発注も来るしいっぱい作って余る事もないので……多めに作ってるっていうか……」
「お前の薬はずば抜けて質がいいもんなぁ。指名のリピーター多いんだろ。あと製薬会社からの仕事とかもさ……ほんと凄いよお前は」
この部屋ではいつもフードはとっているので、直接頭を撫でられてダリアはびくっと全身が強張った。
「……なんだよ褒めてんのにさ」
「……い、いえ……すみません……」
「お前本当にビビりだな」
「……それは……しょうがないじゃないですか……」
「大丈夫俺が守ってやるから」
「あ、あんまりそういうこと言わないで……」
なんかゾワッとする。
これだからチャラい人は。怖いのと戸惑うのと嫌悪感で俯いて、ダリアはひたすらぐるぐると鍋をかき混ぜた。ロシィはいつもこういうことを言ってくるし気軽に触ってくるのだ。こっちは怖いのに。
「なあ、今晩どっか飯いかね?」
「夜は師匠と食べるので……」
「いいじゃんたまには」
「やだぁ!お店とか店員さんとか道中とか全部怖い……!」
ちなみに全部怖いの中にロシィ先輩も含まれてるんですけどね!!とは言えないのでぶんぶん激しく首を横に振るが、そんなダリアを見てロシィは楽しそうにケラケラ笑った。……こっちの反応を見ていつも楽しそうにするのだ。意地悪な人。
「はいはい。分かったよ、また今度誘うわ」
いつか付き合ってな、とロシィは部屋を出ていった。
……やっぱり私のタイプはノルい人だ。というかノルディックだ。先輩みたいにチャラついて軽そうでこっちが嫌がったり怖がったりしているのをからかってくるようなタイプじゃなくて、平凡でちょうど良くてどこか暗い感じなんだけど硬派って言うかもう全部が好みすぎて嫌なところがひとつも見当たらないノルディックが一番いい。……嫌われてるけど……。
またため息が出た。
薬が一鍋分できてしまったので、魔法で一定量を真空にしながら小瓶を入れて、どんどん木箱に入れていく。……予定納品量よりニ箱分余った。
一箱はノルディックのいる小隊に名指しで寄付するために用紙を書いて張り付ける。こうすると優先的に彼の隊が使えるので、もしかしたら彼が怪我をした時に使ってくれるかもしれない。そう思うとでへへへへと口元が歪む。そうそう、こういう陰ながらの献身をしたいのだ。彼に認知されて嫌な顔されるとかではなくて、実は陰ながら彼の快適な暮らしに関わっているというこの距離感がとてもいいのだ。……これくらいの距離感が良かったのに。
そうだ。時間も余ったし精神薬つくろ……。
ダリアは精神薬なんて作ったことがないので本を開いて勉強したが、調べれば調べるほど自分の今の情緒不安定さをなんとかしてくれそうな薬は作れなさそうだったので、しかたなくリラックスできるサプリメントくらいの感覚でハーブや薬草などを詰め合わせてそれっぽいのを作ってみることにした。これを飲んで明日は乗り切ってやる……!!!!
……そして、翌日の昼休憩の時間。
効果があるか分からない自作の薬っぽいのはキめたダリアは、深呼吸して彼のいるであろう隠し部屋の扉をそっと開けた。
「……し、しししっし失礼します……!!」