レナちゃんとのおもいで
「泣くなって言ってんでしょ。ほら顔がぐしゃぐしゃだよ。せっかくかわいいんだから。ほら泣き止む!」
あの子の声を思い返すだけで胸がじんわりと温かくなる。幼いころ、お母さんが外国人だった私はよく皆からいじめられていた。金色の髪に、青い瞳。生まれ持って変えることができない要素は幼い私にとって、お母さんと同じ色で誇りであり、いじめられる原因の憎らしいものだった。
そんな時、いつも私を助けてくれたのは、男の子にだって負けないとっても強い女の子、レナちゃん。周りを囲んで悪口を言ってくる男の子たちを蹴散らして、私の手を引いて助けてくれた。女の子にこういうのは少しおかしいのだけれど、私にとってたった一人の王子様。私の初恋はレナちゃんに奪われてしまったのだ。
レナちゃんとの日々はある日突然終わりを迎えた。レナちゃんのお父さんのお仕事で、遠くに引っ越さなきゃいけなくなったのだ。男の子たちにいじめられることも減ってせっかく泣かなくなったのに、その日の私は人生で一番ひどい顔だったと思う。
顔がぐっしゃぐしゃな私を抱きしめて、レナちゃんはこう言ってくれたのだ。
「大丈夫。この世界は広いけど、会おうと思えば絶対に会えるよ。それにほら、手紙でいつでも話せるんだから……。ね、泣きやもう? まったく、泣き虫なんだから。じゃあこれ、あげる」
そういってレナちゃんが手渡してくれたのは猫のぬいぐるみだった。
「いいの……? これいつもレナちゃんが大切にしてた猫ちゃんでしょ?」
「いいよ。でも乱暴にしたら許さないんだからね! だから、笑って! アリサ!」
「うんっ!」
猫ちゃんのぬいぐるみがうれしかったんじゃない。涙で滲む視界でふと見えた、レナちゃんも泣きそうになっていたから。レナちゃんが我慢しているのに私だけわんわん泣いちゃ、駄目だもん。
それから数年。あっという間に高校生にまでなったのです。レナちゃんとの手紙は今でも続いている。けれど、直接会える機会はありませんでした。そこで思い至ったのです! いつも待ってばかりなのがダメなのだと。そう考えた私は頑張った。とにかく頑張った。お母さんを説得して、お父さんも説得して、勉強も頑張って。そして、私はレナちゃんの通う高校に通う権利を得ることができたのです。
家から出る前に猫ちゃんのぬいぐるみのミーナをギュッと抱きしめる。これは勇気の出るおまじない。あぁ、どうか! レナちゃんに気づいてもらえますように!




