第四話:インフラ整備
俺が、ゴブリン爺から提案された自爆特攻とも言える案に苦虫を嚙み潰したような顔で四苦八苦しているとネクサス先生が1つの案を提案してきた。
ネクサス先生の案はこういうものだった
このダンジョンは俺が人間という事から魔族側、人間側どちらの陣営からも狙われる特殊なダンジョンになっている。
しかし、基本的にダンジョンは魔族というイメージからこちらから敵対しない限りは魔族側もこちらにアクションをしてこないと予想。
そこで、俺が人間という事もあってこのダンジョンは人間側のものと思わせる方向に舵を切ろうというものだった。
正直、人間側のダンジョンに対する思いをそんな簡単に払拭できるものではないと思うが、まぁここは仕方ない。
俺たちの戦力は非常に貧弱だからな!
「なるほど、先生のいう事は分かったが、お前らは魔族側に敵対するとなっていいのか?」
俺はそう言いゴブリン爺とがいこつ達に投げかけた。
「いえ、我々の主は魔王ではなくユウタ様ただ一人であります。魔族に敵対しても何も問題あrごっほごほ」
嬉しいこと言ってくれるじゃねぇか、俺の中でのコイツの評価は上げておこう。
((カタカタカタ))
いや、がいこつ達は何言ってるかわかんね!
まぁ笑ってるように見えるからこいつらも大丈夫だろう、知らんけど。
てか、何も考えてないんじゃないのかこいつら?
「うーん、悪くはないんだろうけど俺は人間というものを根本的には信用していないからなぁ」
《マスターのいう事は理解いたします。特性は個人の性格や経験によって異なりますが、人間は即時の利益や快楽を求める傾向がありまた、個人の利益や欲望を優先する事が多いです。なので人間を完全に”信用”するのではなく”利用”するほうに舵を切った方が得策であります》
利用する……かぁ。
抵抗が全くないと言えば嘘になるが、ちくしょう!俺はイケイケな勇者になって女の子にチヤホヤされたいだけなのに!
「まぁ抵抗がないわけではないが、先生の案は確かに魅力的だ。いつまでも悩んでてもあれだな…よし!じゃあ、俺たちはまずは人間側のダンジョンを目指すという方向でやっていくぞ。そうと決まればまずはモンスターに有効な罠だけを設置していくぞ」
そう皆に告げ第一回ダンジョン会議は終わったのであった。
俺はダンジョンの現状をネクサス先生から情報を集める。
現在のダンジョンは2階層のみでしかも初期配置と呼ばれるランダム初期から選ばれた処理の構造であり、ここ2階層目の6畳半しかないコアの部屋。
1階層は全体で大体入り口から二階層目の入り口まで直線距離で10kmぐらいで高さは10mから50mでここは可変で操作することが可能との事。
俺はこの直線距離10km内の1階層を自由にカスタマイズできるとの事であった。
壁などはDPで購入するしかないとの事だが高さは無料できるとの事。
「これ結構あれだな、1階層だけでも結構凶悪なダンジョンができるんじゃないか?」
《マスター、この世界の上位冒険者は探索のプロです。そのように楽観されるのは……》
「そうなのか?上位冒険者ってどういったダンジョンを探索しているんだ?」
《はい、ダンジョンマスターの采配にもよりますが攻略困難といわれる火山地帯のダンジョンや雪原ダンジョン、またはそれらを織り交ぜたハイブリットダンジョンなど一筋縄ではいかない高難易度ダンジョンです。ダンジョンの適正によって配置できない罠はありますが、もちろんどのダンジョンも一般的には罠を使用しています》
マジかよ…
いいなぁ火山とかのダンジョン。THEダンジョンって感じがしてめっちゃかっこいいじゃないか。
それに比べて俺らのダンジョンは凡庸なダンジョンときた。
ぴえん。
「もう俺、ダンジョンマスターやめていいか?
《マスターはこのダンジョンから出られませんよ?》
は?
今こいつなっていった?
「あ、あのぉネクサス先生や、よく聞こえなかったんですが……」
《はい、だからマスターはこのダンジョンから一歩も外に出ることはできません》
Oh!!神よ!!
さすがに引きこもりプロの俺でも外の日差しを浴びずに生活するなんて無理!絶対無理!!
てか、転移する前にちゃんと言っとけよあの管理者!
うわあああああああああああああ!!
《あの、マスターそんなことより早くダンジョンを完成させた方がいいかと思います》
そんなことって言ったよこの子。
俺の外に出るちっぽけな勇気をそんなことって言っちゃったよこの子
《はぁ……マスター、ダンジョンコアの部屋は冷暖房設備不要ですべて適温。また食事などは一般的なものでありましたらDP無しで食べ放題飲み放題ですよ》
「ほう、食べ放題飲み放題ですかぁ…」
うん、やっぱり外に出るのは諦めよう!
引きこもり最高!!
「よし、先生よ!やはり俺は素晴らしいダンジョンを作り上げていこうと思う!フゥーハハハ!」
《そうですか……》
そんな茶番劇をしていると、ダンジョンコアの部屋の入り口からゴブリン爺がせわしない感じでこちらに向かってきた。
「あ、主様ぁ……はぁはぁ……い、言われた通り、入り口に看板を置いてきましたぞ……」
「ん?設置できたか、よくやってくれたしばらく休んでいていいぞ」
「はぁはぁ……あ、主様もゴブリン使いが荒いでありますなぁ」
俺がただネクサスとコントをしていたわけではなく、粛々とダンジョン防衛について着手を初めていたのだ。
唯一この世界で普通にコミュニケーションが取れるゴブリン爺に”ある”事を書いた看板を入り口に立てに言ってもらったのだ。
本来であれば、ダンジョン内ワープという事も出来たのだが早く仕事を終わらしても暇だろうし走ってもらっていた。
「し、しかし主様。あのような看板で本当によろしかったのでしょうか?」
「多分大丈夫だ。まずはこちらから招き入れないと信用してもらえないからな」
俺が、ゴブリン爺に持たせた看板にはこう書いておいた。
”~冒険者憩いのダンジョンへようこそ~
ここは冒険者にとってもオアシスでありモンスターの脅威からあなた方をお守りします”
「完璧だ……これでまずは冒険者に信用してもらい人間側を味方につける!そして最後は裏切って俺が世界を統べる王となるのだ!!王になった暁には可愛い女の子を呼んでいっぱい…………」
《怪しいですね》
「怪しいですな」
な、なに!?このいかにも安心安全なダンジョンであるという証明であるこの看板のどこが怪しいだ!
《マスター、この世界の識字率は決して高くはありません。冒険者パーティに1人いればいい方です》
「ふぁ」
完全に盲点だった……
そうか、ここは異世界だった。
「それって、この看板の意味がわからないってこと?」
《はい、多くの冒険者にはただの木の板に見えるでしょう》
主人公は深くため息をついた。あれだけ考えて作ったのに...
「じゃあ、看板の代わりに何かしらのシンボルやサインを使って、安全だと伝える方法はないのか?」
《例えば、ダンジョンの入り口に特定の花や草を植えることで、その意味を知っている冒険者にメッセージを伝えることができます。》
「それなら試してみる価値はあるな」
主人公はゴブリン爺と遊び呆けているがいこつブラザーズにそういったシンボルを作るための花や草を植えるように指示した。
そして、ダンジョンの入り口にその花を植え、冒険者たちがその意味を理解してダンジョンに入ってくることをただただ祈った。
《マスター、指示されていた罠の設置と壁の配置、完了いたしました》
「お、ご苦労さん。さすが先生だな仕事が早い」
《お褒めにあずかり光栄です。しかしこのような罠の設置でよろしかったのでしょうか?》
「そこは大丈夫だ、罠の方は上手くいくはずだ」
《……看板》
「うるさい!!!」
俺はネクサス先生からこの世界のダンジョンについて聞いている間に人間を味方につける1階層の整備を頼んでおいたのだ。
俺が先生に頼んだ罠と構造はこういうものだ。
入り口を入ってしばらくは一本道になっているが実はここに関してはネクサス先生の方で冒険者かそうでないかによって道を操作している。
普通の人であればそのまま突き当たりまでいくと大広間兼休憩スペースになり、そうでないモンスターなどはトラップ部屋に振り分けられるといったものだ。
実は1階層目の1/5もスペースを取っておらず残りはすべて罠に費やした1階層目になっている。
とはいっても一本道には少しの罠にダンジョンコアの部屋前にたくさんといった罠の配置だがな……
1階層に使ったDPは12,600DPで残りのDPが10,200DP
10,000DP残しておいたのにはちゃんとした理由がある。
トラップだけではさすがに不安なため上位のモンスターを呼ぶために残しておいたDPだ。
「よし、じゃあ仕上げに上位の虫種モンスターを召喚するぞ」
俺は目を細めウィンドウを立ち上げて上位虫種アイコンをタッチし、召喚ボタンを押した。