Chapter.3ー B 本質
チリケンは名前の上では地理について研究すると書くからかなり硬い部活に見えるかもしれない。しかし、私たちは実際に旅をしてあたりを散策する。自然を感じ、都会では味わえないような体験をする。どちらかというと観光、これが目的なのだ。ただ、地理でよく聞く扇状地とかいう地形を実際に見てみたいというのも彼女たちの中にはしっかりと宿っている。
遠征についての話し合いが進み、条件として[日帰りが可能なところ。往復の交通費が5000円以内であること。地理的な地形を見に行くこと。疲れないようなところ。富士山が見えること。 など多くの意見が出ていた。しかし、この日に行き先が決まることはなかった。
家に帰って桃はネットで今回の遠征先(旅先)について調べていた。
「交通費や日帰りという面から考えて、関東の中で収まるのは確定ね。」
「千葉でもいいし、神奈川でもいいし。埼玉でも」
ただ、地理的な地形がみたいという意見があったことを思い出し、検索をかけるがうまく引っかかってくれなかった。
「はあ、もう寝るか。」
また明日みんなで考えて決めていこう。そう考えて布団に入る。
疲れていた私はすぐに眠りについた。
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私は海のそばにいる
砂浜の上
気持ちよく寝転んでいる
どこだろう。海岸か?
起き上がると目の前には青い海。右には海岸が広がっていた。
左に目をやると私のいる砂浜が緑が生い茂る島と繋がっていた。
この景色。好きだ。
私は砂浜を歩き回る。
こういうのなんて言うんだっけ…
あ。
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ピピピピッ
思いつきそうなタイミングで朝を迎えた。
急いで教科書を開く。
…これだ!。
放課後
「やあ!みんな!!今回の遠征テーマが決まったぞい!」
遠征テーマ?桃以外の三人が首をかしげる。
「そう!テーマを決めてそれについて調べながら現地を楽しむ!それが我らチリケン!!」
「それで先輩、どこに行くんですか???」
怜は桃に早く聞き出そうとする。
「まあマテ、焦るんではない。まずはテーマの発表だ!」
桃は黒板に大きく書き出した。
【陸繋島と東京湾・江戸安房の歴史】*1*2
「いや、歴史もやるんかーーーい!!」
楓がつっこんだ。
「一応、歴史ではあるんだけど色々面白いものも観れるらしいし行ってみる価値はあるのさ!」
ゴールデンウィークにチリケンがいく旅先が決まった。
直ぐに桃が先生に報告。結局先生も顧問として同行するらしい…
「え?!先生も来るの?!」
悠は目を丸くして驚いたがすぐに元に戻って続けた。
「そうだよね、そういえば顧問だもんね~」
ここからチリケン初めての遠征準備が始まった。
<桃にとってのチリケン>
今、私はこの高校でチリケンの部長をしているが私が小さなとき。お父さんとよくキャンプに行っていた。自然の中は緑豊かで川は透き通っている。そんな中で私は寝転んで考えていた。大きくなったらいろんなところを旅してみたいと。日本各地の自然に飛び込んでみたいと。それは山でも川でも海でもいい。私が好きな自然は時に優雅で時に牙を見せてくる。そんな自然が私は大好きだ。だからこそ、実際の自然を感じながら学ぶことができるこの機会は私にとって最高の舞台なんだ。
帰り道
「いや、意外な場所で来たな…」
「何があるんですかね。私はよくその辺りのこと知らなくて。」
怜と悠が話している。江戸川の河川敷。この前皆と帰ったルートだ。
今日は二人仲良く下につながる階段に腰を掛けて語らっていた。
「それにしても陸繋島とか…桃らしいっていうか。」
「そうなんですか?」
「うん、桃はやっぱ少し抜けているところもあるし、それがよくわからないしいいところでも悪いところでもあるんだけど。」
怜と悠の話は、遠征場所についての話から桃の話へと変わっていった。
「普通陸繋島なんて誰も思いつかんよ…本当によくわからん…」
「そうですよね…しかも行き先をそこそこ小さめに書かれて読みにくかったですし…」
テーマを発表した後、その下に行き先を書いていた。
「館山」
小さく書かれた文字はなぜかわからないが暖かく見えた。チリケンが最初に活動する行き先。初めての遠征。それらが詰まったこの二文字。千葉県館山市。私達がチリケンとして初めて足を踏み入れる舞台だ。桜が散り、緑の葉が際立つ皐月に動き出す私たち。さざなみが今にも聞こえてきそうで、海を臨むその景色は一生の思い出になるはずだ。
用語解説
*1
陸繋島
…河口などから供給された砂や礫が海岸付近を流れる沿岸流によって運搬され、
海岸付近に堆積した地形で、先端がとがり湾の入り口をふさぐようにして発達し
た砂州と連結した島のこと。島と海岸の間の砂州のことを陸繋砂州と
いう。例)函館(北海道)・江の島(神奈川県)・男鹿半島(秋田県)など
*2
安房
…房総半島南部の旧国名。千葉県は江戸時代大まかに北から下総・上総・安房と別れていた。
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