Chapter.1ー C 河川敷
河川敷 C1-C
部室を出た四人は学校の裏手に回り、道なりに歩く。ちょっとした空き地のような場所を抜けると下に続くカーブした急坂が姿を現す。かなりの角度だった。雨の日に歩いたら確実に怪我をしそうだ。坂を下ると階段が見えた。
「怜、みてみ」
悠が怜に対して話しかける。
「うわ、」
思わず声が漏れた怜をみて三人は笑みを浮かべた。
綺麗な琥珀色に染まる地平線。
それを反射させて波をたてる川の水面。
真ん中にそびえたつスカイツリー。
そのすぐ隣に見える富士山。
雲が少し出ている。
私はこの風景をしばらく眺めていた。
階段を降りると河川敷の堤防上へ出た。整備されたランニングコースのようなもので私たちはここを歩いている。
「ここの景色ってこんなに綺麗なんですね。」
怜が先輩方にそう話す。
「そうよ、私たちはいつも見てるもんね」
桃がちょっと強がったように言った。
「いつもじゃないだろ」
すかさず楓が声を上げた。
「この言い合いはいつも通りだけどね」
怜に向けて悠が話す。
桃と楓は言い争いを始めた。
「止めないんですか?」
「止める必要はないよ。ちょっと聞いてみ」
そういわれた怜は二人の会話に耳を傾ける。
罵声や悪口は一切聞こえない。
ただただ強く言い合っているだけだった。
「仲いい証拠なんだよ。あの二人の」
悠は笑みを浮かべながら二人のことを見ていた。
「何!なんかうちらの話してた?!」
「教えろだし!」
二人が悠に攻め寄る。
「やぁ!?」
悠はそう言い残し、怜の手を引っ張って堤防の下へと下る階段を駆けた。
「まてええええ!」
二人が追いかけてくる。
「何も話してないって!!」
堤防の下はブロックが敷き詰められているようになっていた。凸凹していて、少し歩きにくい。三人は和解したようでまたさっきと同じような風景に戻っていた。
「明日って現文あるっけ?」
「いや、無いはずだよ?3時間短縮だから。」
桃と悠の会話を聞いていた咲が声を上げる。
「じゃあさ!明日お昼、公園でピクニックしない?!チリケンってそういうことするんでしょ?!」
「ちょっと違うけど、、、」
悠がそう告げると楓が食いついた。
「ええ???じゃあ行かない??」
「いや、そうじゃなくて、、、」
「私は行ってもいいぞ!」
桃がそういうと、悠も了承する。
「まあ、いっか、、、」
「よっしゃ!決まりだし!明日はお弁当持って放課後部室に集合ね!」
「地理的なこととかするんですか?」
怜が楓に聞く
「え?、、、あ」
「やっと気が付いた、、、ただ旅行をするだけじゃなかったんだよ?先輩たちの部活は。」
悠が楓を諭すように話しかける。
「まあ、いいでしょ。怜が入っての歓迎会もやりたいしさ!」
桃が部長としてその場をまとめる雰囲気を出す。
「確かに。」
「さすが桃だし!いいこと言うじゃん!!」
「だから、私まだ入るって確定したわけじゃ…」
やはり怜の声は聞こえないようで。
「よし!じゃあレジャーシートとかも持って行かなきゃだな!桃!よろしくぅ~!」
「えええ?!うち?!」
楓と桃の掛け合いを怜は眺めるばかりだった。
「怜、無理に来なくてもいいからね。」
悠が怜に落ち着いた声で話しかけた。
「い、いえ!私も行きたいですし!」
二人も見つめあって笑う。
明日への楽しみを胸に抱き、四人は家路についた。
江戸川の水面には月の形が映り、騒がしい波でかき消されていった。
C1 END
お読みいただきありがとうございました。
まだまだ素人なので色々とご指摘いただければ嬉しいです。
これからもよろしくお願いいたします!