表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/8

Chapter.1 出会い

Chapter.1 出会い


・プロローグ 


桜が咲き、春を告げる。学校まで緩やかな坂を上る。今日から新たな一年が始まる。風が吹き、桜吹雪となる。トラックが煙を上げて通り過ぎる。開けた歩道でたむろする男子生徒たち。毎度のように冷たい視線を送る。ふとした瞬間に後ろから背中を押され我に返る。そして聞こえる声はずっとそばにいてくれたいつもの声だった。


「おっはよー桃!」幼馴染の楓が声をかける。

「お、おは~」眠気交じりに出ていく声は今にも力が抜けそうな声だった。

「まだ眠そうなん~? ぴしっとしろだし!!」そういうと楓は私にデコピンをした。

「いでっ!」瞬間に眠さは吹き飛んだ。ただ、直接吹き飛んだわけではなく、後で仕返しをしてやろうという思いから不思議と眠さはなくなっていた。

学校近くのバス停についたバスから多くの学生が降りる。学園都市「里見地区」。中学校から高校・大学もあり、毎日多くの学生でにぎわっている。大きな私立大学の前を通り過ぎ、少し古い門をくぐる。「千葉県立里見高等学校」ここが私の学校。

 この学校では一年から二年になるときにはクラス替えが存在しない。三年次に文理が分かれることになっている。私(名取なとり もも)は2-3。さっき私の恨みを買った小倉おぐら かえでは2-6だ。クラスは違うけれど、小学校一年からの知り合いで幼馴染のようなものだ。また後で!と私たちは別れ、それぞれの教室へ向かっていく。今日は始業式。新たな一年の始まりだ!


 始業式が終わり、ホームルームも特に面白いこともなく時間が過ぎていく。

「はい、今年もこのクラスは私の支配下だからねぇ~。」

クラスがクスりと笑う。一年のころからこのクラスの担任をしている麻野あさの先生はちょっと不思議な感じだが、その感覚にクラス全体が包み込まれている。この学年の地歴科の担当であり、私たちの部活「地理研究部」の顧問でもある。ホームルーム後私は先生を捕まえ、部室に向かう。この学校は、四階建ての生徒棟・管理棟の二つに分かれており、私たち二年生のクラスは生徒棟三階にある。二階の渡り廊下を経由し、管理棟四階の社会科教室隣にある部室へ向かう。

「やっほー!先生連れてきたよー?」

元気よく扉を開け中に入る。するとそこには突っ伏して動かない楓の姿があった。

「おっとぉ~?小倉~どうしたんだい?ゾンビにでも食われたか??」

先生はいつものテンションで楓に絡んでいく。

「うぅ、、、別になんでもないし、、、。」

「ふふん。担任が変わったからかな?」

先生はすべてを見透かしたようにその言葉を口にした。

ガバっと楓が起き、こちらを見つめる。

「ううう、、、異動なんて聞いてなかったしぃ、、、」

今にも泣きそうな目で先生を見つめる楓。それをものともせず先生が続ける。

「仕方ないでしょ~。もう決まったことなんだからぁ、、、異動もしちゃってるし。」

「どこに異動したんですか!!うち、会いに行くし!!」

楓たちのクラス担任であった三森みつもり先生は数学科の大人気教師で、彼の授業を受けた人は皆数学が好きになっていたらしい。自分のクラスも本当に大切にしており、文化祭や球技祭でも積極的に生徒に寄り添い、クラス全員から信頼されていた。

 異動先は先生も知らないと言いはり、楓はまた机に突っ伏してしまった。

「そんなことよりも、今日は部活動勧誘の方針決めでしょ~?」

「あ、そうか、、、」

楓がむくっと起き上がり、昨日までに自分たちでまとめ上げた資料に目を通す。

「ちゃんと見てくださいね?先生。私たちが、主にわ・た・しがきれいにまとめたんですから!!」桃が先生に圧をかける。

「いわれなくてもわかってるって、、もう、、、」

「あれ?悠は?まだきてないの?」

桃が悠の不在に気が付き、楓に問いかける。

「もうじき来ると思う。バレー部に挨拶行ったらしい。」

千歳ちとせ ゆう。悠は去年の夏までバレー部に所属し、身長が小さいながら超人離れした跳躍力で一年生ながらエーススパイカーを任されていた。しかし秋に突如部活をやめ、クラスの中でも誰とも口を利かなくなり、孤独になっていた。

冬のある日、楓が部室で見つけた地形図を解読しているときに悠から話しかけてきた。

「それって、地形図?」

もともと明るい性格だった悠は自分の好きな分野を目の前にすると話が止まらなくなるようだった。

その後、悠も地理研究部に入部し、三人で部活を運営していた。

「こんにちは~」

ガラガラっとドアが開き、悠が入ってきた。

部活での悠はクラスのときとはまるで違う。口数の多さ、明るさ、目の輝き、何もかもが正反対だった。

「悠!勧誘の資料ちょっと目を通しておいて!」

「おっけ~!」右手をOKマークにしてニコニコしているその姿は、心からの楽しさがにじみ出ているような笑顔だった。


 去年の秋に結成されたこの地理研究部。最初、桃と楓が麻野先生の手伝いで、十年前に廃部となり、倉庫と化していた地理研究部室を整理している際に、その当時使われていたジオラマやアルバム、地形図、古地図など地理や地学に関する資料が数多く出てきた。そして私達はその資料やアルバムを眺めていた。アルバムには昔、地理研究部が訪問した遠征先での集合写真や地形、景色の写真とその解説。アルバムというか活動記録も兼ねていた。そしてその記録はBOOK20で止まっており、最後のページには「サヨナラチリケン!」と書かれていた。

 先生もその記録を見て、私たちにこう言った。

「やってみる?地理研究部。」

私達はぽかーんと棒立ちしていた。

「君たちは部活入ってないんでしょ?」

「私たちが地理研究部ですか、、、?」

桃が先生に対して不安そうな声で問いかける。

「でも、楽しそうじゃない?色々なところに遠征したりしてみるのも。」

「確かに。以外と楽しそう、、、」楓が話す。

「でも、私たちだけで部活ってできるかな、、、」桃が不安を先生にぶつける。

「この学校では次年度開始時に三人以上の部員がいれば成立するのよ。次の四月までは同好会だけれど、基本的には大丈夫よ。」

先生が桃たちを説得するように話す。

…本当に部活をやりたいのは先生なんじゃないの???

そう思う心を押し殺し、桃と楓はチリケンを復活させ、新たな部活をスタートさせたのだった。


 新入生歓迎会の出し物も決まり、入学式の次の日から新入生の各クラスを回る許可も先生が取ってきてくれた。明日は入学式。どんな子が来るのかな。期待に胸を躍らせ、私たちは部室を後にした。




お読みいただきありがとうございました。

まだまだ素人なので色々とご指摘いただければ嬉しいです。

これからもよろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ