初めての奴隷仲間
奴隷編の完結です
ゆるキャラ魔獣を討伐した俺は奴隷小屋に戻っていた
少し変わったところは、さっきの討伐戦に一緒に行った女と子供?が俺から離れずに付いてきている。
異世界転移してひと月も経たずに魔獣の餌になる係になった俺は無事に戦を乗り切った形となった
魔獣討伐の報酬で女と子供を与えられたみたいな形になっている。
まぁ何処の時代も女なのだろう・・・か。
女は18才でアリシア。極限にまでやせ細り顔色もとても悪い。かつては美しかったであろう髪の毛も泥等で汚れ、グシャグシャな髪型をしていた。彼女は元商人の娘で商売に失敗した借金の代わりとして奴隷として売られた女性だ。そこそこ裕福な家庭だったらしく肉体労働にも慣れておらず即病気にかかり、餌係決定となった。
子供は16才の少女でエリア。貧しいの農村の出身で要は食い減らしとして売られた少女だ。彼女も極限にまでやせ細っている。とても16歳には見えない状態にまで痩せてガリガリになっていた。この世界は17歳位で成人となるが、彼女は子供扱いで本来ならば町の金持ちに買われメイド等の職業に就くハズだったのだが、移動中の馬車が盗賊に襲われここに来たという不幸な少女だ。
「アリシアさん、エリアさんですか? 一応仲間みたいな物なのでよろしく」
彼女達からは生きた感じが全く伝わって来ない。人生を諦めている感じで無反応だ。
しばらくすると彼女達から話を始めた。
「私たちはいったいどうすればよいのでしょうか?」
と、聞かれても俺もわからない。この世界に来て一か月位だ。俺の方が知りたい位なのだが、そんなことは言わずに
「とりあえず魔獣は俺が倒します。何とかここから逃げ出しましょう」
何度か冒険者パーティからおとり、餌役として出動の命令がかかる。
俺は基本的に盾役を行い、アリシアとエリアを徹底的に守った。この世界に来て初めての同じ環境の仲間なのである。絶対に彼女たちを傷つけさせない事を胸に誓う。
幸いながら、彼女たちを危険にさらすような危ない戦いは無かったし、敵もゆるキャラに見えるので自分的にも怖い思いはしなかった。俺自身はメインで戦う事を一切せずに、雇われ冒険者達が攻撃するのみのスタイルを続け、彼女たちを守るだけに専念し、何度かこのような事があった為、彼女たちとの信頼を構築する事が出来たようだ。
しかし彼女たちを連れての逃亡は難しかった。アリシアの体がとても弱く、逃亡するための準備や装備が入手できないからだ。
そんな感じでグズグズと日々た経過していくだけであった。
奴隷用牢屋の中で彼女達と会話が出来るようになり精神的にも余裕が出て来た頃
「そこの奴隷!仕事だ!」
奴隷組合員から声がかかる。俺と一緒にアリシア・エリアも続く形となった。
マッドブラッドというパーティグループに入れられた。アリシアはマッドブラッドと聞いた瞬間に顔色が変わり、エリアに関しては脂汗のような物と震えが止まらない感じになっていた。
マッドブラッドは強襲型の冒険者グループでパーティメンバー以外の生死については一切考えてない事で有名と、エリアが説明してくれた。レッドゾーンならば生き残る希望もあったらしい。
今回も下層に移動する、餌係である
前回と違うのは俺の戦闘力?が評価され、武器が木の棒からこん棒のような物になっていた事なのだが、代わりにアリシアとエリアを肉壁として使えというとんでもない状況だった。
この世界の仕組みを良く理解していない俺は、ここで逃げ出しても全く生きていける気がしないので現状で何とかしようと考えていたのだが、アリシア・エリアが肉壁代わりにされるとなると、いくらなんでもそれは無いだろうと思い始めていた。
マッドブラッドのリーダがパーティメンバーに説明する。
「前回の探査時に戦闘でレベル25が出たという事はここより下層はレベル25以上だと思われる探索に注意せよ」
「オッケー!リーダーいつもの作戦で行きますか!」
「そうだな、奴隷の男は案外使えると聞いているが、女どもは使えるのか?」
魔法使い風の男が言う
「イッヒッヒ・・任せて下さいリーダー」
前回の探索とはレッドゾーンと同行した時の話だと思うが、その時よりも下層階段に進んでいる、何かの気配を感じるが俺はそれが何の気配なのかはサッパリわからない
何か居るな程度の認識だ。
マッドブラッドの連中は構わず進んで行く、何か居そうな気配があるのに、進行速度を変えようとはしない。
「イッヒッヒッ・・リーダーそろそろです」
「やれ」
「第2層魔法‥発動”遠距離操り人形”」
魔法使いは何やら魔法をかけたようだ、と思った瞬間エリアの動きが急に機敏になる
おい!まさか子供を真っ先に使うのか!
エリアは恐怖でぎこちない動きから、初級冒険者のような普通の動きをするようになる
「やめて・・・怖い・怖い・怖い!!やめて・やめて」
エリアは悲鳴を出す事も出来ず、意思とは関係無くそのまま魔獣の中に走りこんで行く
勝手に魔法をかけてエリアを使う魔法使いにムカっとした俺は魔法使いを後ろから蹴り飛ばした。
「お前が行け!」
魔獣がこちらに気が付き意識がこっちに向けば良いと思ったからだ。
「てめぇ!何やってやがる!!」
剣士風の男が剣を振り上げ俺に切りかかる。俺死んだな。死の瞬間や大事故の瞬間は色んな物にスローに見えるというを昔聞いた事があるから多分それなのだろう。いくら遅く見えても自分が遅いので回避したり出来ないので結局ダメらしい。
男の剣は遅い。確かに遅い。でも遅い?ん?避けられるんじゃ?
俺は男の腕を簡単につかむ事が出来、剣を奪う
「はぁ?何やってるのお前!」
回復役らしい神官が叫ぶ。
俺は落ちている石をつかみ、エリアに近づく魔獣に投げつける。運良く魔獣にヒットした瞬間に魔獣が爆散する。
エリアは唖然としたまま、その場で動かなくなってしまった。
魔法使いが動き出す
「ひぃ!????良くも蹴り飛ばしてくれましたね!この餌奴隷が!!魔法起動!”遠隔操り人形”」
俺に対してエリアと同じ魔法を使ったようだ
「??」
何かに引っ張られるような感覚はあったが、静電気がパチッとなるような感じで何かが切れた。
「なぜ効かない!!」
「俺を操ろうとしたのか!このクソ魔法使いが!」
俺はクソ魔法使いに駆け寄り、投げ飛ばす。クソ魔法使いは魔獣の方へ飛んでいき、魔獣の叫びと魔法使いの悲鳴が聞こえた
まさかあんなに飛んでいくとは思わなかったが戦闘はパーティの内部崩壊で開始された。
魔獣VS冒険者VS奴隷。
魔獣は残り2匹。俺に敵意があるらしくゆるキャラ化している
エリアは魔獣と冒険者グループの中間あたりで座り込んでいる。
神官はアリシアを壁にして待機
リーダは魔獣と奴隷の様子を見ている
剣士は予備の剣に持ち替え俺に殺意を向けている
クソ魔法近いは魔獣と近接戦闘中。案外強い。
クソ神官は言う事を聞かないとアリシアを殺すぞ!と叫んでいるのでクソ決定だ。
俺が動けない事を確認すると、リーダと剣士はエリアの元に駆け寄り魔獣の中にエリアを投げ込んだ
「餌らしく役に立って死ね!」
このクズ冒険者ども!
「野郎ども!一度撤退だ奴隷どもをおとりにして一度出直しだ!!!」
魔法使いを引きずる剣士
何故この状況で撤退するのか俺には分からなかったが、更に奥から魔獣の気配を感じた。
アリシアを抱えていたクソ神官は若干撤退が遅れていたが、アリシアを蹴り飛ばし
「死ねクソ奴隷共が!」と言い残し戦闘フィールドから離脱しようとした瞬間
トゲのついた鎖付き鉄球が飛んでクソ神官に直撃そして死。
奥からデカイモンスターが現れたのだ。
「サイクロプス!」
俺のゲーム知識だと サイクロプス 筋骨隆々な体に一つ目の脳筋型モンスターだが若干知能はあるらしい
クズ冒険者でも伊達に上位ランカーでは無かった、引き時はしっかり感でわかるらしい
クソ神官の死体を残したままマッドブラッドの奴らは撤退した。
俺はさっき剣士から奪った剣を装備する。やっぱり異常に軽い前回の木の棒(木剣)との違いが分からない市販のオモチャの剣より軽く感じる。この世界に来てから何から何まで何か変な感じだ。
魔獣がエリアの元に近づき
サイクロプスは様子を見ている
アリシアは動かない
俺は魔獣に対して飛び出した。飛び出した瞬間に洞窟の景色が流れるような感じに変わる。
俺もびっくり、1歩か2歩駆け込んだと思ったのに魔獣の目の前に到着、猛烈な速度で移動したようだが、頭と速度が付いてきてない。剣で切るのではなく、結局魔獣1匹を殴る。殴られた魔獣は腕が胴体を貫通し千切れ飛ぶ。
残りの魔獣は少しだけひるむも、強靭そうな爪で襲いかかって来た。
俺はそれを剣で受け流そうとしたのだが、剣なんか使える訳もなくそのままスカっと空振り。
ただ、スカっと空振りした時の風圧で魔獣の胴体が切れ飛んでしまった
サイクロプスは様子を見ている
俺はアリシアとエリアを回収しサイクロプスの様子を見ていた。
サイクロプスがゆるキャラから普通の怖いサイクロプスへと変化していく
これから考えると、サイクロプスから敵意が無くなったという事だろうか?
重症のエリアを何とかしなければならないと思い、俺はクソ神官の装備から薬瓶のような物があるのを確認した
「それ、中級ポーションです」
元商人の娘アリシアは商人知識としてある程度の薬剤等の知識もあった。
サイクロプスが動く気配もなくこちらを見ているだけだ。かなり怖い。
クソ神官の装備品をはぎ取り、ポーションをエリアに使用する。
さっきまで呼吸が小さかったエリアは徐々に回復していくのがわかる。現代社会にもない凄い薬だ。死にかけが数分で歩けるレベルまで回復する薬なんて知らんぞ
色んな意味で病弱なアリシアにもポーションを飲んでもらう事にした。
やせこけた顔や体が回復していく様子に俺もびっくり。
何なんだよこの薬は本当にあり得ないぞ
そんな事をやっていると、サイクロプスが動き出す。かなり怖い顔をしているが目線でこっちに来いと言っているようだ
サイクロプスは魔獣の死骸をかかえ、ダンジョンの奥地へ歩き出した