領主の街
2日馬車に乗り、領主の街にやって来たのだが、俺は牢屋行。今度は石造りの建物に鉄製の檻だ。
「お前犯罪奴隷だってな!人生終わったんじゃねぇか イヤッハハハッ」
「おい!奴隷ってなんだよ!何もやってないぞ俺は!?」
「領主様の大事な村人が重症だってよ!オマエがやったんじゃねぇのか?」
「あいつ自分で転んだだけだぞ!」
「そんなの知るかよ、証拠も上がっているんだ諦めな!」
さらに2日経っただろうか?出された食事には手を付けなかった、虫だらけのパンに腐ったようなスープに看守の痰入りという食事だ。奴らはこんな物しか食えない奴隷は大変だねぇと笑いながらスープにツバを吐いて行く。
不思議と腹は減っていなかったが、疲労感はあった。牢屋の中には糞入りのツボと水桶があるだけ。なれない環境で疲れているといった感じだ。
2日ぶりの日の光は眩しい。奴隷裁判と言われる一応裁判があるらしい。看守が笑い話で聞かせてくれた情報だと建前上の裁判で、奴隷側は有罪決定らしい。看守がバカ笑いしていたのを覚えている。
そして裁判所のような所に俺は居た。
「奴隷番号2048号入れ」
屈強な男2人に鎖で繋がれ、足には良くある重り玉が付けられている状態だ。逃げる場所のアテも無いのでそのまま裁判所まで来てしまったのだが、いきなり奴隷番号2048号とは酷いものだ。
高台の上に高貴なチョビ髭野郎が白い帽子をかぶってゴミを見るような目で俺の事を見ている。裁判官と呼ばれるヤツと、証言者はクソ村長とその仲間の村人数名。ちなみに俺の弁護人は居ない。
「これより奴隷裁判を開始する」
チョビ髭野郎が宣言する
「なお、奴隷は許可なく発言してはならない。許可なく発言した場合はそれ相応の罪となる。静観せよ。」
なんか無茶苦茶だ、俺に発言権は無いらしい
クソ村長があれやこれや色々言い始めた。要約すると勝手に魚を乱獲しこの冬を越える為の大事な食料源が減っただの
それを注意しに行ったら、護衛の村人を攻撃し村人は重症、助けに入った村人にも手を上げ大けがを負ったという感じ。
見るからに重症そうな治療を受けた村人が証人席に座っていた。
「おい!魚は10匹も捕って無いし、その村人だって殴り掛かって来たのを避けたら勝手に転んだだけだぞ!」
「だまれ!奴隷に発言権はない!」
クソ村長はニヤリと笑う
「村長の報告どおり、極めて危険な奴隷のようだ」
「おい!ふざける・・・な!」
屈強な男に取り押さえられ俺は身動きが取れなくなると言うよりも、呆れて反撃する気ににもならない。
「犯罪奴隷として有罪。ダンジョン送りとする。奴隷に反論は許されない、これは確定事項とする」
犯罪奴隷として確定。裁判所から連れ出され、犯罪奴隷専用の建物に収容された。
奴隷管理所のような場所だ。異世界物ならギルドとか言うヤツだろう。良くわからん。
牢屋の中には奴隷たちが死んだ目のような状態で檻の中で座っている。管理所のやつらも荒くれ者、盗賊みたいな奴らばかりだったのでどっちが犯罪者なのかわからないレベルだ。
投獄されて2日程経過して俺の順番が来た。
「おいお前!、そこの玉に手を乗せろ!」
この世界にはレベルというものがあるらしい、ゲームと同じだな。投獄されているヤツに聞いたが、犯罪奴隷はレベルが低く使い道が無ければダンジョンの中でモンスターのおとり役と呼ばれる生贄、高くてもモンスター相手の戦闘員扱い、普通の奴らは強制労働員らしい。
まぁ何処に送られるまではわからないとは言っていたが、俺の場合は裁判で”ダンジョン送り”確定になっている。
玉に手を乗せると玉が輝き判定が終了する。組合員が少し驚いた表情をしていたのだが
「ウヒャ・・・なんだコイツ、レベル3だってよ」
「ガキレベルじゃねぇか。その歳でどこかのお坊ちゃんとか?ワッヒャシャ」
「ゴミが出たよゴミが!」
「あっ、コイツすでにダンジョン送り確定になっていますよ」
「餌確定じゃねぇか。生きる希望も無ぇってやつか!」
俺はダンジョン送りのモンスター用おとり役になってしまった。
ダンジョンに送られ、即おとり役になるのかと思ったが、強制労働が続く日々を送っていた。「おとり役」という仕事が良くわかっていない状態だったのだが、一緒の牢屋に入っていた男に話を聞いた。
「兄さんも運が無いな」
と言いながら話てくれた。
冒険者達がダンジョン探索を行い、強敵に遭遇した場合に討伐部隊が編成されるのだが、その中に粗末な装備でモンスター討伐に参加させられる。ようするにモンスターのおとりとして向かって行き食われるか、モンスターに攻撃されている間に、冒険者等の討伐部隊が攻撃して討伐する仕組みらしい、逃げようとしても冒険者に殺されるらしい。
そんな日が俺にも訪れてしまう。
異世界転移してモンスターの餌役とは・・ついてない人生だったな、俺の人生もあと数日で終わるようだ。
見るからに屈強な冒険者に鎖で繋がれ、バルサ材のような弱そうな木の棒を装備させられる。
他にもおとり役が居たが今は自分の事しか頭にない。
それにしてもTVのコントじゃ無いのだからもっとマシな武器よこせよと思いつつダンジョン内を探索していた。
ダンジョン内は洞窟状になっていて案外広い。魔法が有るのかわからないが洞窟内は意外と明るく見えたが、冒険者達はそれに松明を追加して明かりを取っている感じだ。
数時間程探索した所で、冒険者全員が明かりを消す。何か話をしているようだが、どうやらモンスターを発見したようだ。
俺は何かの液体を掛けられ
「お前に恨みは無いがおとりにになってくれ、この液体はモンスターが良く好む液体だ。長くモンスターの注意を引いてくれればよい。頼んだぞ」
って、頼むも何も突っ込んだら食われるだけじゃねぇのかよ!
20メートル四方位の広場に出て行くと、ゆるキャラのような某アミューズメントパークに出てきそうなホラーなモンスターが居た。薄暗い中なので案外怖い。でもなんでゆるキャラ?と思っていたらこっちに向かってぬいぐるみパンチのような攻撃をしてきた。
状況が理解できない。なぜ着ぐるみみたいなのが襲って来るのか?後ろにいる冒険者達は剣を構え攻撃の準備をしている。
その表情はとても、ゆるキャラを見ているような表情には見えない。
俺はぬいぐるみパンチを簡単に避け、ぬいぐるみがぬいぐるみの口で噛みつこうと攻撃してくる。見た感じライオン系なのかトラ系なのかわからないが、肉食系の4本脚で大きさは2~3メートルあるゆるキャラが3体。
俺は襲って来るゆるキャラモンスターがウザいので、持っていた弱そうな棒で思いっきり叩き飛ばす。叩き飛ばされたモンスターは脳みそをまき散らし、絶命する。
同時に持っていた木の棒も粉々に折れて使い物にならなくなる。
「あんな棒でゆるキャラを叩き飛ばしてしまったけど、なんじゃこりゃ!」
と叩き飛ばしたゆるキャラを見るとおぞましいモンスター状の物に変化していた。
潰れた頭にはさっきまで持っていた棒がめり込んでいる。
他のゆるキャラモンスターは一瞬ひるむが、口を大きく開けて飛びかかって来た。
上あごと下あごを手で押さえ、そのまま必死に口が閉じないように抑えようとしたら、ガバリッと音と共にあっさに顎が分離する。
口が裂けたゆるキャラモンスターはゆるキャラのまま口から大量の血を流しながらなおも、攻撃を続けて来る。
俺も血で汚れたくないので、くるりと躱し、ケツを蹴り飛ばしたら足がケツにめり込み胴体辺りまでめり込んでモンスターは絶命。
絶命と同時に、凶悪そうなモンスターに姿を変えた。
何となくわかった気がする、敵意を持っているヤツはゆるキャラ?に見えるのか?
だから敵意が無くなった瞬間に本来の姿に戻るのか?
疑問が多いが、絶命すると本来の姿に戻っているようだったので、何となくそんな気がするレベルだった。
最後のゆるキャラが突っ込んでくる。動きもスローなのでこっちから走り込んで、その頭を蹴り飛ばす。
ゆるキャラの頭に足がめり込み頭はあり得ない位置に後退して絶命。
ゆるキャラのと戦闘は終了した。時間的には数分だったと思われる。
後ろで見ていた冒険者達があり得ない物を見ているような表情になっていた。
リーダーと思われる男が
「よくやったな奴隷2048号良い働きだった」
冒険者グループの奴らは驚いている感じにも見えたのだが気のせいだろう。