先輩は尊敬の的なのですが!?
寒い中、隅に置かれたヒーターが命綱の美術室では、ドロシーは油絵を描き、絵真が国語の宿題をしていた。俺の個人的な美術部あるある①、美術室を色んな事に使いがち。宿題したり、お菓子パーティー(自分の持ってきたお菓子を勝手に机に置いておくだけ)など。割とみんな常に絵を描いている訳ではない。
「みんな〜、頑張ってる〜?」
俺は今日も爆発させないように頑張ろうと意気込んでる中、ゆる~い声が美術室に響いた。
「あ、先生、こんにちは」
ドロシーがそう言った。この部活の顧問、黄蘗先生だ。
「えー今日はですね、大変嬉しい報告がありまーす。えっとですね、11月半ばに出品した、高校美術展、通称高美展で、紺野さんの油絵が特選賞に選ばれました〜拍手〜」
「!!」
す、凄い。11月半ばの高美展は全国の作品が集まるとても大きい美術展だ。普通の賞をとるだけでも難しい。
「ありがとうございます。」
紺野先輩はそう言ってニコッと微笑んだ。みんなが一斉に拍手を送る。
「『非現実を現実に。』か……。」
朱華先輩がそう呟いた。
「…やっぱり紺野先輩は凄いなぁ…!」
ドロシーが目を輝かせて言った。ドロシーは紺野先輩の絵が大好きなのだ。元々、ドロシーは中学生の頃バレー部で、絵を描くのが好きだから高校生になったら美術部に入ってみようかなぁ、と悩んでいたところ展示されていた紺野先輩の絵を見て入部届を気づいたら出していた、と6月くらいに言っていた。
✎೯
ᝰ✍︎꙳⋆ 12月8日
「明日は〜きっと負けないから〜覚悟しててよね〜♪ 余所見をしたらだめだよ〜君を振り向かすから♬」
めあるが歌を歌っていた。実はめあるはアイドルやモデルをしているのだ。この学校は必ず部活には入らなくてはいけないが、この美術部はゆるいし必ず来なくてはいけない訳ではないので芸能活動と両立出来るから美術部に入ったという。
しかし、めあるはそれだけの理由で美術部に入ったわけではない。本当に絵が上手なのである。小さな紙にボールペン一本のみでモノクロで独特、キラキラした芸能界とは少しかけ離れた様な世界観を生み出す。
めあるは歌の練習をしながらも小さい紙に世界を創り出していた。
「それ、次の新曲?」
ドロシーが聞いた。
「うんっ! そうだよ〜」
ドロシーは真面目で、アイドルの曲はあまり聞かないようだが、めあるのアイドルグループの曲だけは聞いているのだ。
「あ、そろそろ行かなきゃ。またねー!」
めあるはいつも能天気な様だが、部活動とモデル・アイドルを両立させている。凄いなぁ…俺とは大違いだと思いながら俺は今日もあの絵の色を塗っていた。




