髪遊び、なのですが!?
次の日 放課後の教室掃除でじゃんけんに負けた俺は、ごみを捨てに行ったため部活に少し遅れた。早く作品を作りたくて、気持ち急ぎめに美術室に入る。
「…。」
ドロシーはめあるみたくツインテールに、といってもめあるより長めの、ストレートなツインテールにしていた。めあるはドロシーの様にお団子+みつあみをしていて、黄金さんは緑川さんの様にポニーテール 緑川さんは左右のみつあみの先端をピンでとめて0の形にされている。このお嬢様っぽい髪形はどこぞのドーナツ屋の蜂蜜チュロスを思い出す。
一瞬見た後、俺は無言で作品作りを始めた。
「いや、ちょっとちょっと、何か言うことないの〜??」
ツインテドロシーがずいっと顔を寄せて来た。ツインテールだから、長い髪が揺れてふいに当たる。
「えっ、二、ニアッテルトオモイマス」
嘘では無かった。クールなドロシーにツインテールはちょっと、と思いそうだが、似合っている上、普段より親近感が沸くような感じがした。
少しーーードキッとした。
「もう、何その片言は。本当に思ってる?」
「思ってるよ。似合ってると思う。」
俺は気持ちを沈めて、真顔でそう言った。
ドロシーはほんのわずかな間、無言になって「ゆ、悠人のくせに真顔でそういうこと言うんじゃないわよ!」
「えっ!?」
そして、爆発した。
えっ、何で俺、怒られたの? あっもしかして照れ隠し!? なんて…ドロシーに限ってそんなことはないか。
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2度目の俺はしっかりじゃんけんに勝ち、部活に行った。何を出すか分かっているから勝つのは余裕。
今度はまだみんなは髪イジリしてなかった。 「ねーねードロシー。今度遊びに行くとき双子コーデしようよ! ドロシーのツインテールも見てみたいし、インセタで最近よく見るし。」
「えー、私にツインテールは似合わないよ、きっと。」
「大丈夫大丈夫。 絶対似合うって! ねっ悠人!」
「えっ俺!?」
ど、どう言ったら良いんだろう。
「似合うと思いますよ〜。私も、ちょっと見てみたいです。」
緑川さんがそう言ってくれたので何も起こらずにすんだ。救・世・主!!
「ほら、後輩も言ってるんだし、やってみよーよ!」
とめあるは言いながら、すでに問答無用でドロシーの髪をくしでとかしていた。
「そうだ、このはもやろーよ。」
「私ですの? ま、まあ? やってほしいならしてあげなくもないですわ。」
「はいはい」
「ねっ、逆にさめあるもお団子してみてよ。」
「良いよお〜。」
こうして、女子の髪形交換がスタートしていた。「あれっ、そういや絵真は? ドロシーのツインテール見たら反応凄そうなのに」
そう言った時、ドアが開いた。
「わっ………! ドロシー様のツインテール……! 神々しい……!」
うわさをすれば 何とやら、だ。
パシャッ
「ちょっと絵具、 勝手に 撮らないでよ…」
ドロシーが照れていた。
「あっ、すみません、手が勝手に…」
「盗撮を手のせいにするな。」
俺がツッこんだ。
「ドロシー様もですけど、みんな素敵です。似合ってます!」
絵真がにこっとして言った。
「“みんな”……? ねえ、そう言えば、白井さんって、初日以来、1日も来てないよね。」
その言葉で、はっとした。
「あの子、確かに来てないね。」
「俗に言う幽霊部員化…?」
「まさか部活忘れてる?」
「そんなわけないでしょ。」
次々にみんなが呟く。作業をしていた紺野先輩や朱華先輩も顔を見合わせていた。ヒカルも、はっとしていた。
「私、今度聞いてみますよ。」
緑川さんがそう言った。
「同じクラスなんです。あの子、誰とも喋ることなく、いつも勉強してる子なんですけど。」
「ん〜、そうだね。でも事情があるんだろうし、軽くで良いよ。」
…白井さんあの子は どうして、来ないのだろうか。
来ればこんなに明るくわいわいしている、楽しい部活…なのにな。




