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Pain & Painting

 私が部活をやめたのは、別に陰口を言われたからではなかった。確かに陰口が無かったらやめてはいなかったが、でもそれほどのことでも無かった。陰口はそんなにひどくもなかったし、他にそれ以上のことをされた訳じゃない。








           ✏ꔛ‬








「絵真の髪って、長くてサラサラで良いよね〜。」

「ありがと〜。でもバドミントンで汗かくとベタつくし、ショートにしようかなって思ってるんだけどね。」

 その時の私の髪は長くて、部活のときはポニーテールにしていた。

「え〜そうなの? もったいなー。」

 私はバドミントン部だけど、デジタルイラストを描くことも好きだったから、絵を描くのが好きなレナと意気投合。でも一番は、入学式の日に仲良くなりそれからずっと一緒のめーちゃんだった。

「そこの2人、今日は卒アルに使う写真を撮る日だって言ったでしょ。カメラマンさんも来たから、早くこっち来て〜」

当たり前のことだけど、3年生は大会が終わったら引退する。だからその前に3年生の卒アルのための部活写真を今日撮るのだ。3年生 2年生、1年生が順に並ぶ。私はめーちゃんの隣だった。








          

           ✄ 








 次の日

『委員会の集まりがあるから、部活に行くの遅れる』そう連絡しておいてとめーちゃんに頼んだ。しかし。

「委員会は明日にするって。」

 同じ委員会の子がそう私に伝えに来た。

「えっ」

「なんか先生が急用できちゃったみたい。」

 私が所属する生活委員会の先生は、数学の先生なのだけど、今日、数学は自習だったことを思い出し、確かにそう言えば…と思った。

「そっかあ、教えてくれてありがと!」

 私はるんるん気分で部室に向かった。委員会面倒くさいなと思ってたから。まぁ、明日あるんだけどね。部室には当然、もうすでにみんながいる。

「ねー私、目をつむっちゃってんだけどー」

「ほんとだ〜これ卒アル載るんでしょ」

「まじか…私の瞼もっと頑張れよ、もう〜!」

 ぼろぼろの部室からは少しだけ声が漏れている。バド部の部室の近くはほとんど何もなく、他の部の人は誰も来ない。会話の内容から察するに、昨日の写真を見ているのだろう。

 そうだ、いきなりドアを開けて、驚かせちゃおうかなぁ−無邪気にそう考えてた。

「芽衣は良いなあ。」

 部員の誰かがそう言った。

「何で?」

 めーちゃんが言った。

「だって写真、絵真の隣じゃん?」

 一瞬しんとして、その後笑い声が聞こえた。その時はまだ、私の頭は、?でいっぱいだった。私の隣だと何か良いことがあるのかなぁ。

「それは言っちゃだめだって〜」

「確かに芽衣が一段と可愛く見えるけどさぁ〜」 「ちょ、ちょっと! 本人いたらどうするの!」

 芽衣が少し小さい声で言った。

「大丈夫でしょ〜だって今日委員会なんでしょ?」

「委員会があること忘れて部室に来てたりしてぇ」

「それはやばすぎでしょ〜」

 今日、私は初めて部活をサボった。別にあの言葉が辛かった訳ではない。ただ、今ここで部室に入ったら、私が聞いてたことがバレる。気まずくなるに決まってるから。

 

 

 その日の夜、めーちゃんからMINEが来た。

『昨日の写真、先輩目を瞑ってるのww ウケるよねww』

そんな言葉とともにあの写真が送られていた。目を瞑る先輩のことはどうでも良く、お風呂上がりのぼんやりとした頭で、私、あぁ言われるほどそんなに写真写りひどいのかなぁ、見てやろ〜、と心の中で呟きながら見た。レナの隣に写っている私。



「私ってこんな顔だっけ。」

 そう思った。本当にそれしか無かった。その髪型その身体、その顔。見れば勿論自分だということは理解できるのに、どこか納得できない。

「ねぇお母さん、私、こんな顔だったっけー?」

 その後、お母さんに、半分冗談くらいの調子で、写真を見せながら尋ねた記憶がある。

「何言ってんの。そりゃそうでしょ」

「えっ、あっうん、だよねー。」

 お母さんは笑っていた。私は自分の部屋に戻って鏡を見た。すっと冷たい感覚。生きた心地がしていなかった。

 私、こんなにブスだったっけ? 思えば、今まで ルックスなんて気にしたことがなかった。えっ、ちょっと待ってこんな気持ち悪い顔してたの、こんな醜い顔で今まで生きてた? 

 そう思ってしまうのは、睡眠不足でくまが出来てたからかなとか、スイーツの食べすぎで太ってたからかな、とか、今なら冷静に分析できるけど、その時はそんなことを考えられる余裕はなかった。

 私は次の日、仮病で学校を休んだ。いてもたってもいられなかった。顔を見せることを考えたら吐き気がした。だから次の日から、マスクをつけるようになった。

「グリスさん、中学生とは思えないくらい上手い」

「グリスさんの絵、大好き〜」

 独りでいたって落ち着かない。なんとか気を落ち着かせようとtwetterを見たら、そんなコメントが目に飛びついてきた。

 私はイラストを売ったり、賞金の出るイラストコンテストに応募したりし始めた。初めは大して売れていなかったが、フォロワーを増やし、段々と人気が出て、そこそこお金が稼げるようになった。中学生じゃバイトはできないから、メイク代を稼ぐためにそうしていたのだ。それに、整形をしようと真剣に考えていた。だから私はもっとイラストを描きお金を稼ぐため、部活をやめたのだった。 








          ✏〜







「あははっ、なつかしいな〜」

 あの頃の私は必死だった。学校の先生にメイクしてることがバレて怒られたっけ。毎日鏡見て絶望してー。整形したいと親に頼みこんでー

 私はあの頃のことを、夢に見て思い出し、目が覚めたのだった。 

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