黄蘗先生の提案、なのですが!?
ᝰ✍︎꙳⋆ 終業式前日 放課後
「ふぅ〜。」
長らく描いてきたあの教室の絵を、今日、完成させた。だけど……
「やっぱり、何だかなぁって感じだな…。いまいちというか……」
「何が〜?」
「えっ? あ」
どうやら、声に出ていた様だ。
「絵を完成させたんだけど、何か満足できない、物足りないなぁというか………」
めあるがうんうんなるほど、と頷く。どうして、俺はこの絵に満足できないのか? やはりインパクトだろうか?
「でも私は良いと思うけどなあ〜。…って、あ、先生!こんにちは〜。」
黄壁先生がいた。手にはダンボールの箱を持っていた。
「こんにちは、丁度よいところに。ねえ、淡藤くん。突然だけど、立体をやってみない?」
「りっ、立体、ですか?」
本当に突然だ。黄蘗先生がそう言うとは思わなかった。
「ええ。」
にこりと笑ってダンボールを床に、丁寧に置く。「私の先生の受け売りなの。昔通ってた、アートスクールのね。」
ダンボールの箱をゆっくりと開けて行く。
「私も、自分の絵に満足できてなかった。でもその先生が立体をやらないかって言ってくれたのよ。」
立体。美術展と言うのは大体2つのコーナーに分けられる。平面と立体だ。平面は絵のことを指す。
立体は、主に彫刻や粘土、陶芸……など。
平面(絵)も、もちろん油絵、水彩画など、様々な種類があるが、立体は比べものにならないくらい多様な作品が揃う。立体作品の幅広さに魅了され、色々な事に挑戦する人もいれば、彫刻一筋、など1つのことに終身捧げる人もいるのだ。
「立体と平面は、全く違うものに見えるかもしれないけど、立体作品を作ることで絵が上達するかも、むしろ立体を好きになるかも、その先生が言ってたの。」
ダンボールからはレジンや粘土、ビーズ、木材、紙ひも、コルク、ガラス、羊毛フェルトまで! 多くのものが入っていた。
「でも、先生、立体って何やるんですか? 彫刻ですか?」
「それは貴方が決めるのよ。このダンボールの中のものは好きに使って良いわ。木を切りたければ美術準備室の電のこ(電気のこぎり)を使って良いし、言って くれれば陶芸もできるわ。立体の条件は、それが立体(平面的ではないということ)であるということだけよ。」
-立体の条件は、それが立体であるということだけー
「自由に作って良いから。楽しみにしてる。」
そういうことで、俺は、2年生から立体作品を作ることになったのだった。めあるはすごーい、楽しそう〜とはしゃいでいた。
✎
終業式を終え、成績表をもらい、春休みが訪れた。
桜の咲く季節となったが、寒い日と暑い日ばかりで過ごしやすい気温にはならない。俺は一日中部屋着で自室にひきこもって、twetterを見ていた。
俺はとあるアニメの二次創作のクオリティの高さに感激していた。twetterを見れば、沢山の神イラストが載っている。
ちなみに銀園先輩もこのアニメが好きでグッズもたくさん持っている。 銀園先輩はあの部活初日の朱華先輩との会話通り、ヲタクで俺と気が合う。
twetterを見ていたら別のアニメの公式アカウントから通知が来た。コラボカフェ来週からというツイートだった。コラボカフェ開催のことは前から知っていたのに、すっかり忘れていた。危ない。俺としたことが。俺はすぐさま翔馬にMINEで誘った。神田はすぐに既読をつけてくれて、
「いやこんな深夜にMINEするなよ。行くけど。」
と来たのだった。




