ドロシーに渡したのですが!?
✎ 放課後
俺は部活でドロシーに渡すことにした。ドロシーはいつも部活に行くのが素早い。だから、俺も今日は早めに行って、他の人が少ないときに渡そうと思った。めあるとかにからかわれそうだから。
「あー、ドロシー、えっと。」
「え? 何?」
「勉強教えてくれてありがとう。これやる。」
「え、ありがとう〜。じゃあ私も。」
にこりと笑って、ドロシーは、キャラメルを3つくれた。
「めあるにはもう渡したんだ。んで絵真にも同じの渡そうと思ってるんだよねー。」
ドロシーがそう呟いた瞬間、絵真がやって来た。うわさをすれば何とやらだ。
「絵真いつもありがとう。」
ドロシーはキャラメル1つとマドレースを2つ、絵真に手渡した。絵真は少しフリーズした。
「えっ…ええ!? い、いいんですか!?ドロシー様から!?」
「勿論。」
「ひゃああああ〜。供給量高すぎやば……」
よく分からない声を上げて絵真はしゃがみこんだ。
「えっ? 大丈夫? と、というか多かった…?」
「むしろ、いつもの1000倍元気です〜。」
「そうは見えないけど…」
ドロシーは少し困惑した表情を浮べた。
✎
俺はちゃんとお礼もできたし、予想外にもキャラメルをもらえたし、 良い気分で帰り道を歩いた。これで今年はもらえたチョコ0個という毎年の虚しい結果にならずに…あれ? キャラメルだからチョコではない? まあ、いっか。
「きゃっ!」
目の前で、髪がハーフアップになっている女の子がつまづいて転びそうになり、バッグを手放した。
「大丈夫ですか? えっと、これ……。」
俺はバッグを拾ってそう声をかけた。
「あ、ありがとうございます……すみません」
バッグには幼稚園児くらいの子から、高校生くらいの子それと大人が1人、かなりの大人数で映っている写真が入れられたキーホルダーがついていた。
その後、俺は普通に家に帰って、いつものようにゲームをした。
✎
金曜日
「うん。ばっちり!後はテストを受けるのみだね!」
テスト前最後の金曜日、最後の勉強会をした。よく分からなかった問題も、ばっちり解けるレベルになったし、 次のテストは大丈夫そうだ。
「本当にありがとう。テスト、頑張るよ。」
勉強会のちょうど1週間後、俺は気合十分でテストを受けた。シャーペンの音がよく聞こえる。
(うわー英文長…。でも大丈夫。一つ一つやっていけば…! あっ、これ、前にドロシーに教えてもらったやつだ! これも…!)
試験終了のチャイムとともに、俺はふぅ、と溜息をついた。




