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14日、なのですが!?

 2月14日、それは言わずもがな…


 地獄である。それは モテる・モテないが数値化される日だと言っても過言ではない。俺は今日、「ありが糖チョコ」というポピュラーで安い小さめのチョコレートを持ってきていた。昨日、爆発して、朝に戻ってそして帰り道に買ったものだ。ありのイラストが印刷されている。

 さて、 どうやって渡そうか…。

流石に、教室で渡すのは気が引ける。渡すなら部活のとき? しかし、他の部員もいる中でというのは……。






          ✎






 生徒達からほんのりと甘い香りがする。そんな中、私は一人、階段を下り美術室へやって来た。まだ1時間目前である。

「ふう……。」

 教員生活7年間、毎年美術部の顧問を務めてきた。見慣れすぎている景色だ。

「すみません、昨日、美術室に筆箱を忘れてきてしまって。失礼します。」

 そう言って入ってきたのは紺野さんだった。彼女はしっかり者で優秀な生徒だ。忘れ物とは、意外だった。 彼女は筆箱を手にした後長い前髪をふわりと揺らして微笑んだ。

「先生、いつもありがとうございます。これは颯と選んだ、ほんの少しのお礼です。」

 彼女の手には、私が好きなチョコレートクッキーとありが糖チョコがあった。

「ありがとう。」

「いえいえ。では。」

 私は彼女を少し、見送ってから一粒、チョコを口に放りこんだ。お礼を言われたが、お礼をしたいのはこちらの方だ。彼女の絵は私を、いや見た人全ての人に刺激をくれる。



 午前の美術の授業を終えて昼休みになった。私は部員達の、まだ未完成な絵を眺めながらコンビニで買ったサンドイッチを食べていた。

 教室の絵。淡藤悠人の絵だ。透明水彩画なので、淡くて儚い美しさを感じられる、素敵な作品になっている。けれど、いつも彼は自分の絵に満足していない様だ。

「…よし。」

 私には、この7年間のうちにできた独自のルールがある。そのルールの条件は、確かな技術を持ちながらも、自身の絵に満足していない生徒、だ。



 絵筆を持つ者にとって満足できず、さらに良い絵を、と思う気持ち。それはある意味一つの才能である。

 そして教員はその才能の、“手助け” ほんの少しの後押しをするのに精一杯頑張るのが大切なのだ。

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