勉強会なのですが!?
✎ 1月13日、金曜日
「毎週金曜日、で良い? 部活もしたいし、私も勉強時間を確保したいから。」
そういうわけで、毎週金曜日の放課後、教室で教わることになったのだった。毎週金曜なら、テストまで、5、6回程度だ。
「次のテストの範囲はレッスン9・10だけど、レッスンタの仮定法過去・付帯状況のwith、レッスン10のbe to V。そこが大切かな。」
うん、全く分からん。呪文か?
「お前ってイギリスに住んでたこともあるんだろ? 日本語みたく、こう、感覚的にできるんじゃないの?」
「外国に住んでいれば、リスニングとスピーキングはネイティブレベルになれるけど、テスト、となると違うでしょ。だって、私達は日本にずっと住んでいるけど、国語で100点取れないじゃない。」
「た、確かに。」
「もちろん、住んでいたおかげで英文のだいたいの意味は分かったりするけど。でも日本語訳にする問題とかは、使われている文法に訳を沿わせなきゃ、減点になる。意訳じゃだめってこと。それに、イギリス英語は、アメリカ英語とはちょっと違ったりするし。」
「な、なるほど。」
「そんなことはどーでも良いのよ。まずレッスン9からやろう。」
すっきりとした顔でドロシーが言った。
「レッスン9ってロボットについての英文だったよね。多分…」
「うん。この5行目の as ifが……」
「何してんの〜?」
教室のドアのところにめあるがいた。
「あ、2人ってそんな感じ? 私ってお邪魔?」
「いやいやいや!全然!」
ドロシーは即座に全力で否定した。
「でも、2人って割と仲良しだよね〜。」
「私、こんな奴嫌なんだけど……。」
「俺だって嫌だわ。」
「は?」
「あ?」
そして、見事に、爆発してしまった。
…俺が怒っても、爆発してドロシーが困ったりしないことが心底、嘆かわしい。
✎
「毎週金曜日、で良い? 部活もしたいし、私も勉強時間を確保したいから。」
「う、うん。」
次は爆発させないようにしないと。どうしたら良いんだろう? こんな奴嫌って言ったら怒らせるし。
「次のテストの範囲はレッスン9・10だけど、レッスンタの仮定法過去・付帯状況のwith、レッスン10のbe to V。そこが大切かな。」
「何してんの〜?」
教室のドアのところにめあるがいた。
「あ、2人ってそんな感じ? 私ってお邪魔?」
「いやいやいや!全然!」
ドロシーはまた、即座に全力で否定した。デジャブすぎる光景だ。
「でも、2人って割と仲良しだよね〜。」
「私、こんな奴嫌なんだけど……。」
「………ま、まぁ確かに仲良しかもね〜。うんうん。」
「はぁ?」
「え?」
……
✎
乙女心ってよく分からん。結局、何故かまた爆発してしまった。
え、これどーしたら良いの? 無理じゃね?
「毎週金曜日、で良い? 部活もしたいし、私も勉強時間を確保したいから。」
「……ごめん、今日は、ちょっと用事があって…」
「じゃあ来週からそれで良い?」
「う、うん。」
今日はやめることにした!!! ほら、逃げるが勝ちって言うだろう? 帰ってゲームしよう!!
次の週から、ドロシーの英語勉強会が始まった。ドロシーの教え方はかなり分かりやすく、呪文かと思っていた「仮定法過去」だの「付帯状況のwith」だのも分かるようになった。
まず、仮定法過去とはもし〜だったらなあ、というような訳で、非現実なことを話すときに使われるものだ。付帯状況のwith、とは、例えば、「目をつぶったまま〜した」というような、「〜したまま…」という文で使われるものだ。俺がこんなにもしっかりと理解しているなんて………!
もう金曜日の恒例になった勉強会4回目、2月10日、俺はるんるん気分で帰っていた。もし英語のテストで良い点を取ったら、神田に自慢してやろうという気持ちで。
「気持ち悪。」
「!?」
通行人に突然気持ち悪、と言われた。そう思ったらそこにいたのは同じく帰り途中の絵真だった。 「あ、ごめん、つい本音が。どうぞ一人でにやにやし続けてて下さ〜い。」
「え、待って俺一人でにやにやしてたの?」
確かにそれは気味悪いかもと思ってしまった。
「私は今、タブレットのお絵描き用タッチペンが壊れてイライラしているのです! 何故こんなときににやにや悠人に会うのです?」
絵真は誰かにそう言った。首にマフラーをつけていた。
「というか、どうしたんです? 本当に。頭おかしくなりました?」
「ふっふっふっ、ドロシーに英語教えてもらってから、今回のテスト良い点が取れそ……」「え、待って。え? 貴様ごときがドロシー様に?教えてもらった? は?許せませんよそれは!!」
絵真がノーブレスで言った瞬間、爆発してしまった。なんて理不尽!
全く、最近は爆発してばっかりだな……。




