クリスマスが近いのですが!?
俺はバスケでドロシーにボールを当てないように最大限気をつけ、無事に授業を終えた。放課後も、俺はただひたすら透明水彩の絵を描いた。海の中の海月などを描いた、淡い絵。
…めあるは、忙しいながらもボールペン画を描き、ドロシーは紺野先輩に憧れ、光の美しい油絵を描く。えまはタブレットで絵を描いて皆を喜ばす。紺野先輩は絵で人々を魅了する。俺の母は油絵に挑戦している。
俺は何か、みんなと違う気がする。絵に関して、強みを持っていない、というか。透明水彩画で良いのか? この淡さで良いのか? この色で良いのか? 俺は自身を持って絵を描いていないなって思う。俺は本当にこの絵を完成させたとき、満足できるのか、と。
もし、俺以外の皆が、何故この絵を描いたのか、って聞かれたらきっと何かしら答えられるんだと思う。
だけど、俺だけは答えられやしない。
そんなもやもやを抱えたまま、覚束ない気持ちで色を塗り続けた。
今日は誰かを怒らせること無く、下校となった。帰り道、俺は夜ご飯を買い、はぁ、良かった…と思った。
下校時にはほんの少し、雪が降っていた。学校から、最寄り駅までの道のりがいつもと同じなのに雪がほんの少し降っているだけで別の風景に見える。
「ねぇ、クリスマスの日のデート、どーする?」
「私はー、お家デートしたいなぁ♡」
目の前のいちゃいちゃカップルに少し苛つきつつ、あぁそうか、もうすぐクリスマスかぁという気持ちに駆られる。駅にも、クリスマスツリーが飾られていて、お店にはサンタの帽子やらなんやらが沢山売られている。今年も彼女なんて出来なかったな…と正直ガックリしつつ、電車に乗った。
☃
「ドロシーえまえまぁ一緒に駅まで帰ろぉ〜」
めあるがくるっと巻かれたツインテールを揺らしてそう言った。珍しく、今日はレッスンなどが無い様だった。だから、めあるは今日ボールペン画を2枚も高クオリティーで描き上げた。本当に凄い集中力だった。……流石だ。
「……ふぇっ!? わ、私も!?」
「あははっ! えまえまの反応ほんっと面白すぎ〜。てなわけで3人で帰ろ〜!」
「さんせーい」
ドロシー様がそう言ったので私達は一緒に帰ることになった。
「でさぁ、あのマネージャー本当やばくて〜」
会話はめあるの話が7割だった。めあるは私達が知らない、芸能界の面白い話を明るく話してくれる。本当に面白いもので、笑っている内にあっという間に駅に着いた。駅の多くのお店は赤と緑、白、金色など、いかにもなクリスマスカラーで彩られていた。
「あ、そうだ! 美術部1年生でクリスマスパーティーしようよ!」
それらに触発されてか、めあるはそう私達に言った。
「めあるは、クリスマス空いてるの?」
「いや空いてないけど…あっでも! 23日の夜とかなら…!」
めあるは制服のポケットからぎっしり埋められた小さなスケジュール帳を取り出してそう言った。
「わ、私も参加して良いの?」
「当たり前じゃん! …あ、ついでに悠人も誘うか。暇でしょきっと〜(失礼)」
…かなり失礼だけど、私も、あいつは絶対暇だろうなと思った。
「男子誘って、スキャンダルになったりしない?」
美声で、ドロシーがそうめあるに聞いた。
「ん~~、別に、残念ながら私そんな有名じゃないし…平気だけど……あ、そうだ。女装でもしてもらう? なんちゃって♪」
めあるは一瞬悲しい顔をした気がしたが、すぐに小悪魔な笑みでそんな冗談を言った。しかし。
「まぁ確かにそれでいっか。」
………え、ドロシー様?




