裏切り
ジョブを取得してから2年後の2022年12月31日に俺は幼なじみ達とダンジョンに挑んでいた。
俺ジョブ《作成師》ではやはり皆の足を引っ張り、ハンターランクは下から2番目のEランクで足踏みしていた。
初めの頃は《英雄》の和也に引っ張って貰っていたが、1年経つ頃には完全な足でまといになっていた。
それでも俺は両親の仇を討つため努力を重ねていたが、それ以上に仲間たちの成長が早くいつしかパーティを抜けてもらいたい雰囲気を発していた。
そして俺はその雰囲気に耐えられず昨日、パーティを抜ける事を伝え、最後の思い出にダンジョンに潜ろうと伝え、今に至る。
和也「なぁ絆、思い出作りなら最後に転移トラップでも見ないか?」
百合「さすが和也、頭いいね!転移トラップも見れたならいい思い出じゃん!」
香織「確かにいい思い出になりそうやけど、そんときに後ろから魔物が来たら危険やない?」
和也「大丈夫だろ、なんたって《英雄》の俺様がいるからな!」
羽夏「···でも油断は駄目だよ?」
絆 「和也···それに皆も、俺のためにありがとう」
そうして俺の最後のダンジョン探索は転移トラップを見ることで終わることになった。
「知ってるか絆、これから見る転移トラップは転移先が最下層って話だぜ?なんでもこのトラップに引っかかったAランクハンターは片腕と片目を失い、命からがら逃げてきたらしいぜ」
「マジか、それじゃあ俺らが引っかかったら生きて帰れないな」
「ああ、しかも1回転移陣の中に入ったら転移するまで出れないみたいだぜ?」
と会話しながらトラップを見るために和也より前に出た時に後ろからドンッと押され、トラップの転移陣に入ってしまった。
慌てて振り返るとそこにはニヤニヤ笑っている和也と橋本、驚いた表情を浮かべている西山姉妹が目に映った。
和也「引っかかったな絆、さっさと俺のパーティから抜けてたらこんな目に合わなかったのにな。クソ雑魚《作成師》のくせにだらだら仇を討つためだかのために迷惑かけやがって。目障りだったんだよ」
百合「そうよ天宮、アタシの和也の足引っ張ったんだからその分の報いを受けてちょうだいよね。アタシもアンタの諦めの悪さにはウンザリしてたのよ」
幼なじみの2人がそう言い放った。
香織「ちょ!どういうことや和也!絆にパーティを抜けてもらうって聞いてたけどこんな、騙し討ちするなんて聞いてへんよ!」
羽夏「そうです!これ以上私たちに着いてくると命の危険があるからって話だったはずです!」
だが、施設で知り合った西山姉妹は俺を転移トラップに嵌める事を知らなかったみたいで必死に抗議してる。
だが、和也は冷たく言い放つ。
和也「ああ、あえて言わなかったんだよお前らにはな。絆と同じ境遇たからな、言えば絆にチクるだろうし、更に俺様の邪魔もするだろ?」
そう言われて唖然とする西山姉妹。
けれど、こんなことされて俺も黙っていられるほど出来てはいない。
「ふざけんな!抜けて欲しかったならハッキリ言ってくれても良かっただろ!なんでこんな殺すような手段を取るんだ!」
「あ?そんなの簡単な理由だよ。お前がダンジョン探索中に死ねば金がギルドから払われんだよ。お前には散々迷惑かけられたからな。迷惑料払ってもらわないと困るし、お前を生かしたままにしとくと後でまたパーティに入れてくれとか言いそうだからな。それにお前の代わりに入れる奴は決まってんだ。つい先月新たに発見されたジョブ《聖女》の陽菜って子を入れるのにお前が生きてたらその子が引け目感じちゃうだろ?」
そこまで言うと転移陣に入らないギリギリまで近づいてきて小さな声で話しかけてきた。
「それに俺のハーレムパーティのために、お前に生きててもらってちゃ困んだよ。それにもう時間だな、これで永遠のお別れだな。絆。」
転移陣の輝きが増し、最後に告げられた事実に俺は怒り、叫ぶ。
「和也ぁぁぁあ!お前だけは絶対殺してやる!」
「ハッ、雑魚《作成師》がほざくなぁ。それじゃあ楽しみに待ってるぜ」
最後まで人をバカにしたような、否、バカにしてる笑顔を貼り付けた和也を睨みつけ、俺はその場から消えた。