最悪の誕生日
2000年にダンジョンが出現してから、世界のあり方は大きく変わった。
地球には魔力と名称されたものがダンジョンから放出され、電波はおろか、電気さえも使えなくなったが、長い間研究をした結果魔物がよくドロップする石、魔石から魔力を抽出し、電気の代わりに使用することができるようになり、魔力で動く家電などを開発し、2016年には昔と変わらないどころかより良い生活水準になった。
その頃にはジョブを持った者達がダンジョンで魔石を集めるのも職業となり、そのもの達をハンターと呼ぶようになっていた。
日本にもハンターはおり、今では日常的に銃器を持って狩りに行くが、昔は一般人が銃器を持ったら危ないと言う声は大多数あった。
しかし、バレットは魔物には有効だが生身の人間には当たっても軽く指で突っつかれる程度の衝撃しかなく、魔物以外には非殺傷武器となった。
また《銃剣士》の振るう刃物も何故か人間は切れず、魔物だけに有効なものとなったため、今ではハンターを否定する声は少なくなった。
そんなある日、両親がハンターの天宮絆は2017年の12歳の誕生日、家で両親の帰りを待っていた。
「お父さんたち、まだ帰ってこないのかな?僕の誕生日だから高級品のオーク肉を取ってきてやるって言ってくれたから楽しみだなー。それに、15歳になったらジョブを取得してお父さんたちと一緒に冒険したいな。」
などなど、考えていると電話がかかってきた。
慌てて電話に出ると
『もしもし、天宮様のお宅で間違いないでしょうか?』
「あ、はい。間違ってないです。えーと、どちら様ですか?」
『紹介が遅れました、ハンターギルドの組合員、受付担当の藤木美鈴と申します。貴方様は天宮幸雅様と天宮巴様の子、天宮絆様でよろしかったでしょうか?』
「はい、天宮絆で合ってます。その、ハンターギルドの方がなんの用ですか?」
ハンターギルドの藤木さんが、人生で1番聞きたくなかった事を告げる。
『大変申し上げにくいのですが、落ちてお聞きください。幸雅様と巴様が···お亡くなりになりました。』
「···え?」
僕は耳を疑った。今朝まで普通に会話してた両親が···死んだ?
なんの冗談?今日だって「父さん達の帰りを楽しみに待ってろよ」って、言ってたのに。
『今、係りの者をそちらに送りします。今後の事はその係りの者と話し合い、お決め下さい。』
それだけ言うと電話は切れた。
それから数十分後、係りの者、渡辺と名乗るものが来て両親の葬式の手続きや、今後の生活の事などを説明され、最後に父さんが使っていたM4A1を手渡され、「君の両親は人格者で、ギルドの者が皆悲しんでいたよ。もし、少しでも気を晴らしたいのならギルドに来るといい。必ず力になって見せよう。」と言い残し、帰って行った。
それからしばらくして、幼なじみ達が僕の両親が死んだ事を知り、僕のもとに慰めに来てくれてずっと我慢していた涙を流し、人生最悪の誕生日が過ぎていった。