青梅ダンジョン
リハビリ!
モンスターの気配に敏感なオルトロスのモカが先頭に立つ。そして三角形を形成するように、ゴ治郎と武蔵がそれに続いた。
異変が発生している青梅ダンジョンの入り口は先入観からか、随分と禍々しく感じる。まだ何もしていないのに少し額に汗をかいている。召喚モンスターを通じて、何かしらの影響が俺達にもあるのかもしれない。気を引き締めないと……。
グルゥ。
10分ほど進んだところでモカが小さく唸った。何か感じたのだろうが、ゴ治郎の感覚は何も捉えない。魔眼にも反応ない。
グルルゥ!
モカが吠え、ゴ治郎と武蔵が構えた。何か…来るのか?
──シュッッ! と空気を斬るような音がし、モカ、ゴ治郎、武蔵がそれぞれ撃ち落とした。
なんだ? ゴ治郎が天井を見上げるとそこには緑のナメクジのような体から無数の触手が生えたモンスターが三体見える。
……これは、ローパー。リアルダンジョンwikiでは星三つのモンスター。
「ヒッ!」
ナンナの悲鳴が聞こえる。ローパーの容姿に驚いたのだろう。ヌメヌメと生々しく蠢くそれは、今まで見つかっているモンスターの中でも最もおぞましい部類だ。そして厄介なのは──。
──ザンッ! 青く光る短剣を振るったゴ治郎を嘲笑うかのように二つに分裂するローパー。
そう。こいつら、斬っても斬っても分裂して生きながらえるらしいのだ。斬撃は不利。かといって打撃も効きそうにない。ここはっ!
「ナンナ! ブレスいけるか!?」
「任せて、センパイ! モカッ、お願いっ!!」
ナンナの声に反応したモカがスッと空気を吸い、二本足で立ち上がり──
ウオオオォォォンンン!!
──灼熱の息吹がダンジョンを赤く染め上げた。炎がやっと収まると、水分が蒸発して随分と小さくなったローパーがボタっ、ボタッ、ボタッと天井から落ちて来る。プスプスと煙が上がる様子はモカのブレスの威力を証明していた。
三体の召喚モンスターが警戒を解くと同時にローパーは煙になって魔石を残す。かなりの大きさの魔石をそれぞれが確保し、頬張った。星三の魔石は貴重だ。滅多にないご馳走様に喜んでいるのだろう。
「晴臣……第一階層で星三のモンスターが出てくるダンジョンなんてあるのか?」
目を開けると、いつになく真剣な表情の鮒田がいた。その隣のナンナは少し疲れた顔をしている。いきなりブレスを披露することになって消耗したのかもしれない。
「いや、聞いたことがないな。ランダムダンジョンだって、星三以上が出るのは第二階層からだ。これは……想像以上に厳しいかもしれない」
「でも、異常の原因は見つけないと! もしこのまま酷くなってしまったら、この辺に誰も住めなくなってしまいますよ!!」
「お……」
鮒田がナンナのことを「女」と呼ぼうとすると、ナンナがキッと睨んで言葉が引っ込んだ。
「……ナンナ。その意気やよし。しかし、力及ばなければ召喚モンスターは文字通り犬死となるぞ」
「でも!!」
「まぁ待て。二人とも。別に今すぐどうこうする必要もない。もう少し探索してから考えよう。幸い、モカのブレスはローパーに特効らしい。ナンナは大変かもしれないが、しっかり補給していつでもブレスを吐ける様にしておいてくれ。先頭はゴ治郎が務める。なるべくローパーを釣ってくるから、まとめて焼いてくれ。鮒田も、それでいいな?」
「了解です」
「分かった」
視覚の共有を再開すると、召喚モンスター達は随分とリラックスをしていた。モカを中心にして地面に座り、毛並みを楽しんでいるようだ。先程までの弱気が馬鹿らしくなる。
「よしっ! 行くぞ」
それから約4時間後、俺達は転移石の部屋を見つけた。
もし、読み足りない場合はどうぞ!!
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