正体は……
──バシャン!!
ゴ治郎に向かって物体が飛来し、床にぶつかって弾ける。花瓶か何かだろうか。身を躱してクルクルと回るゴ治郎の視界の端には砕けた白い破片がある。
「来るぞ!」
「ギギッ!」
部屋に入るや否や、手荒い歓迎だ。次々と飛んでくるのはこの部屋の中に元々あったものだろう。古いクマのぬいぐるみが宙に浮き、その周りをハサミやコップ、ライトや枕までビュンビュンと飛び回っている。……これは、ポルターガイストなのか? 女の歌声はなく、パキパキとラップ音がする。
「あのクマのぬいぐるみをやるか!」
「ギギッギ!」
心霊現象に遠慮なんていらない。ゴ治郎が短剣を抜くと、暗い部屋の中に青白い刀身が浮かび上がる。クマの表情が変わった気がした。浮遊する物々の動きが激しくなり──。
「いけっ!」
「ギギッ!!」
ダンッ! と踏み込み、音を置き去りにすると、その後に殺意を持った攻撃が降ってきた。さっきまで浮いてなかった瓦礫のようなものが四方八方からゴ治郎に襲いかかる。ちょっとこれ、半端ないぞ! このまま屋敷が壊れてしまいそう。大丈夫か? 物量はどんどん増えている。
「時間をかけるとまずいぞ、ゴ治郎!」
「ギギッギギッ!」
分かってる! と返すゴ治郎の声色には苛立ちが感じられる。豪雨の中、雨粒を全て躱して前に進むのが困難なように、一向にクマのぬいぐるみには届かない。痺れを切らし、足を止めたゴ治郎が短剣を構えて溜めた。
──ザンッ
青白い光が増し、横薙ぎの剣閃が一瞬で前方を打ち払う。一気に力を持っていかれ、息が漏れた。しかし、ここがチャンス。
「いけええ!!」
「ギギイイ!!」
踏み込んだゴ治郎がクマのぬいぐるみに一直線に飛んでいく。脅威に感じたのかクマの前には瓦礫が集まり、盾を形成するが──。
「貫けええええ!!」
「ギエエエエエ!!」
視界が塞がれ、そしてひらける。力を使い果たし、短剣の光は弱くなった。ゴ治郎が着地すると、少し遅れてバタバタと床に落ちる音がする。振り返ると体に大穴があいたクマのぬいぐるみが横たわっていた。
これで終わり? 原因はクマのぬいぐるみ? そう訝しんでいると、フッと部屋のカーテンが揺れた。いつの間にか窓が開いていたらしい。しかし何か不自然だな。このタイミングで……。
ゴ治郎も何かを感じたらしい。クマのぬいぐるみを一瞥した後、ずっと揺れるカーテンを見ている。
「ゴ治郎、魔眼だ」
「……ギギ」
ゴ治郎がグッと睨み付けると、窓の桟に小さな女の姿が見える。顔も何もかも青白い。ペタンと座り込んで疲れ果てているようだ。
「……召喚モンスター?」
「……ギギィ」
たぶん。とゴ治郎は言う。大技を使って消耗したのだろうか? ならば早く召喚を解除すればいいのに。しばらく様子を見ていると女のモンスターは観念したのかもう姿を隠すこともしなくなった。さて、どうしたものか……。
「今、そっちへ行く。見張っててくれ」
「ギギ」
俺は立ち上がり、ゆっくりと正門を開いた。
今日でティッシュ1箱使った! 花粉どうなってるのよ





