ミーティング
"1ヶ月に及ぶ練習は花開くのか!? ゾンビ30体によるリアル・ゾンビダンス!!"
"何体まで召喚出来るのか!? 体力自慢のアスリート達による同時召喚数ギネスチャレンジ!!"
"そしてメインイベント!! 我らがスーパー・サモン・シスターズの3人と、地獄からの刺客!! SMCオールスターズのスペシャルエキシビションマッチだああああ!!"
「完全に悪役じゃない! なんなのこの告知動画。ひどい!!」
「女。そうカッカするな。あんなものはただの演出だ」
鮒田がつまらなさそうにナンナに声を掛ける。それでもナンナは収まらずプリプリしている。
"それでは我らがスーパー・サモン・シスターズの紹介です! 先ずはスプリットタンのハードコア系アイドル、ラミア使い・ヘム!!"
……初っ端からやばい奴きた。いきなり飛ばし過ぎじゃないか?
"次は打って変わってフワフワ系! Hカップをどう試合に活かすのか!? ハーピー使い・maー!!"
お、おう。この子はやっぱりデカいな。動画で見ると圧巻の迫力だ。ナンナと比べると明らか──。
「水野センパイ! 今見比べたでしょ!?」
「そんなことしてない!」
「許せない!!」
「比べてないってば!! ほら、次の紹介が始まるぞ」
スタッフルームに段田さんが居なくてよかった。
"そして最後はスーパー・サモン・シスターズのリーダー!! その牙で堕とされたい!! ヴァンプ使い・凛!!"
全ての紹介が終わったところで鮒田がPCのブラウザを閉じた。かなり凝った編集でサモナーズ・フィールド側の力の入れようが分かる。
「で、晴臣。凛ってやつは知り合いなんだって?」
「ああそうだ。一度一緒にダンジョンに潜ったことがある」
「デートですか!?」
「……いや。俺がモブで安牌だから誘われただけだ」
「水野センパイ、泣かないで!」
「泣いてない!」
「……ナンナ。水野さんをからかうんじゃない」
スタッフルームに入ってきた段田さんが親の顔をみせた。ナンナが軽く膨れてみせるが、それを無視して段田さんは丸いスツールに座った。
「遅くなって申し訳ない」
今日はそもそも段田さんに呼ばれてSMCに集まったのだ。これからやっと本題が始まる。
「明日、サモナーズ・フィールド側とエキシビションマッチについて打ち合わせをすることになりました。試合形式やレギュレーションを決めようってことです。そこで皆さんの意見も聞かせてもらおうと──」
「勝ち抜き戦はどうだ!?」
鮒田が良いことを閃いた! とばかりに言う。
「せっかくのチーム戦なんだから、勝ち抜き方式はないだろ。6体のモンスターが同時に戦う方が盛り上がると思わないか?」
「私は水野センパイの意見にさんせー」
「ちっ。女め」
「私も水野さんの意見に賛成です。今回のエキシビションマッチはこの業界を盛り上げることを優先すべきなので」
「お、俺様だってそんなことは分かっている!」
「しかし、ただ6体が一斉に戦うだけだとごちゃごちゃするだけで面白味にかける気がするな」
「うーん、そうかも。ちょっとゲーム的な要素を加えるとか?」
ナンナが眉間に皺を寄せながら言う。
「例えば?」
「モンスターの頭に風船をつけて、それをお互い狙う。割られたら退場」
「何かを守りながら戦うってのはいいね。風船じゃなくてもいいけど」
「女。面白いことを言うじゃないか」
「では、ゲーム的な要素を全面に押し出す方向でサモナーズ・フィールド側と会話しますね。こちらの意見が全て通るわけではないですが……」
「オーナー、弱腰だな! いざとなれば札束で引っ叩け!」
「鮒田センパイ、マジ下品……」
「俺は金で全てを解決する男、鮒田武だ!!」
「うるせえ! 段田さんが困ってるだろ」
「ははは。大丈夫ですよ。明日は善処します」
やや顔を引き攣らせた段田さんの合図で、その日はお開きとなった。





