人工ダンジョン
人工ダンジョンの入り口は一つで、少し進むと広間に出た。その広間から幾つものルートに分かれている。コボルトに首を振るよう命じてよーく観察すると、そこから先は20ものルートに分かれていた。
試験の主旨を考えるとどのルートに進んでも宝箱はある筈。ただ、感覚の共有と召喚モンスターのコントロールを問うのだから、視覚、もしくは聴覚で感じられるヒントがあるかもしれない。
少し考えていると他の受験生のコボルトは先を争うように各々が選んだルートへ駆けていった。残っているのは俺と、もう一人だけだ。
どうやら上手く指示が伝わっていないようで、コボルトはただボケーっとしている。たぶん、「私、召喚石を持ってないんですけど!」と騒いでいた女の子だろう。
普段からモンスターを召喚していない人が、いきなり思い通りにコントロールするのは難しい。特にこんな複雑なダンジョンでは、"進め!"と念じるだけでは足りない。共有された視界をしっかりイメージしながら、指示を飛ばさないと、ご覧のようにぼんやりと立ち尽くすコボルトが出来上がる。
さて、俺も進むか。誰も選ばなかった一番右端のルートを指示すると、コボルトは小走りで進み始め──。
「付いて行って!」
これは、共有した聴覚で聞いたものではない。試験会場の中で直接聞こえたものだ。つまり、この子は俺に付いてくるつもりなのか? いやー、それ多分、合格できないよ?
#
どうしてこうなったのか。今、俺はダンジョンを攻略している。2人で。いや、2人と2体で。
他の人の召喚モンスターを妨害するのは禁止。即失格。では、協力するのは? 試験官の説明を聞く限り禁止されているわけではない。
俺達にピタリと付いてきたコボルトを邪険にすることは、妨害にあたる可能性がある。そう思っているうちに2組で攻略という形になってしまった。女の子に悪意がなかったことは分かっているし、振り切るのも大人気ない気がする。
ふむ。三叉路だ。パッと見ではどちらの道も同じ。横にいる女の子のコボルトはオロオロしている。きっと、召喚者の動揺が伝わっているのだろう。
「何か聞こえるか?」
「ウォン」
聴覚を強く意識すると、片方から"プーッ、プーッ、プーッ"と聴力検査のような音が聞こえる。これがヒントってことか?
「よし、音のする方だ!」
「ウォン!」
俺のコボルトが手で合図をしてから、進み出す。当然のようにもう一体のコボルトも付いてくる。これ、この先に宝箱が一つしかなかったらどうしよう。
しごおわ!





