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【書籍化】庭に出来たダンジョンが小さい! ~人間は入れないので召喚モンスター(極小)で攻略します~   作者: フーツラ


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……

「晴臣! 久しぶりだな! 探したぞ!」


やはり来たか。学食の端っこでひっそりと食べていたにもかかわらず、鮒田は目敏かった。おかずで山盛りになったトレイをドンとテーブルに置き、当然のように対面に座る。


「新年早々、鮒田か」


「ふはははは! 当たり前のことを言うな! このような豪傑が俺以外、この大学にいるわけないだろ!?」


しかし、こいつ食い意地張り過ぎだろ。4人前ぐらいあるぞ。おかずが。


「それ、全部食べるのか?」


「足りないぐらいだ! なにしろ、増えたからな!」


増えた? 何のことだ? そう思っていると鮒田はわざとらしく手を胸の前でクロスさせた。その両手にはそれぞれ召喚石のついた指輪が──。


「召喚石が増えた?」


「その通りいいい!!」


「……うるさい」


「今年の鮒田武はデュアルサモナーとして名を馳せる!!」


「……うるさい」


「ふははは!! その嫉妬、心地よいぞ!!」


「うっせえ!!」


一斉に視線が集まったのを感じる。こいつといると碌なことがない。


「その召喚石、買ったのか?」


「勿論だとも!」


だろうなぁ。


「晴臣はまだ召喚石一つで燻っているのか? もう世界は次のステージへ進んでいるというのに」


「俺は一つで充分なんだよ。それに、2体同時に召喚なんて出来ないだろ?」


「晴臣のようなモブキャラには無理だろうな!」


「……ほう。見せてみろ」


「よかろう。食事が終わったらな」



#



もう使われていない古い講堂の鍵を開け、鮒田は当たり前のように入っていく。それに続くと中はひんやりとして、鳥肌を誘った。


鮒田は教卓について大見得を切る。


「晴臣、お前は幸せものだ! デュアルサモナー誕生の瞬間に立ち会えるなんて」


「御託はいい。早くやれ」


「言われなくとも、召喚してやろう」


鮒田はフーッと息を吐いて構えてから2つの指輪を教卓に置いた。そしてババっと腕を動かして血の滴る指を召喚石に押し当てる。


「出でよ! 武蔵、十兵衛!!」


十兵衛? 剣豪シリーズか。眩い光が召喚石から放たれ、そこに現れたのはハイオークとオーク。鮒田を含めてまるで三兄弟のようだ。


「お前、オーク好きだな」


「……お、オークは可愛いからな」


鮒田の様子がおかしい。教卓に手をついて、青い顔をしている。これは、今まで散々やられた仕返しのチャンス?


「そうか。せっかくのデュアルサモナーの誕生だが随分と辛そうだぞ」


「……う、うう」


ガタッと音を立てて鮒田の身体が沈んだ。武蔵と十兵衛が心配して教卓の端まで走る。


「おい、デュアルサモナー。どうした? まさか、2体同時に召喚したのは初めてだったのか?」


「……俺は本番に強い男、鮒田武だ……」


いや、どう考えても失敗だろ。


「さっさと召喚を解除したらどうだ?」


「……お、俺は負けん」


何と戦っているんだ。こいつは。


「……俺はデュアルサモナーにな──」


糸が切れたように鮒田は崩れ落ちた。教卓の上では召喚解除された2体のモンスターが召喚石に戻る。


「これ、俺が面倒見るのか……」


新年早々の面倒事に頭を抱えるのだった。

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