あずかり知らぬ
なんだこりゃ。
開店前のSMCに長蛇の列がある。確かに今日は土曜日で混み合うのは分かる。だからって列が出来るようなことは初めてだ。
「すいませーん。会員登録されてない方は先に登録をして頂く必要があります!」
大声で会員登録を促しているのは段田さんだ。この人数には焦っているようで、いつもの落ち着いた雰囲気がない。
「段田さん、おはようございます。今日、何かイベントやるんでしたっけ?」
振り返った段田さんの目つきが鋭い。
「水野さんが原因ですよ! 昨晩の書き込み、大反響です!」
昨晩の書き込み? なんのことだ? 昨日の夜は八乙女さんのランダムダンジョンに遅くまで潜っていた。アラクネが出現してかなりの激戦で実はぐったりしている。初めてのモンスターに八乙女さんははしゃいでいたが……。
「何の話ですか?」
「……あれ? もしかして水野さんじゃないんですか? ちょっとスタッフルームに行きましょう」
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「これを見て下さい」
スタッフルームのPCモニターにはスクショがいくつも並べられている。内容は──。
「俺と犯人が召喚石をかけて戦う!?」
「最初の書き込みではそこまでのことは言ってなかったんですけどね。周りが煽っていつの間にか召喚石をかけて闘うことになっています」
「ゴ治郎とオーガがですか?」
「……です」
「誰がこんな勝手なことを……」
「俺だ!!」
バンッ! とドアを開けてスタッフルームに入って来るなり第一声での告白。その声の主は──。
「鮒田! お前の仕業か!!」
「如何にも! 俺が盛り上がるようにセッティングしてやったぞ! 喜べ」
「鮒田さん。これはさすがにやり過ぎでしょう?」
段田さんは心底呆れている。
「やり過ぎなもんか! この盛り上がり、SMCの売り上げも期待出来るぞ! 経営者なら喜べ! そして家族を取り戻せ!!」
「……分かりました」
「鮒田。お前はどこであのカードの画像を手に入れた? あれは段田さん達ダンジョンオーナーの間で出回っていた画像だぞ?」
「ふはははっ! 段田オーナーに他のダンジョンオーナーを紹介したのは他でもない俺様だ。俺のところに情報が入って来てもおかしくないだろ。むしろ、入って来ない方がおかしい!!」
クソ。何故か鮒田が大きく見える。こいつ、本当に学生か?
「とにかく! 晴臣にはこれまで以上に客寄せパンダになってもらうぞ! 犯人が来ても来なくても俺達には利益しかない!」
「ふざけるな! なんで俺が召喚石をかけて闘わないといけないんだ!!」
グッと迫ってきた鮒田が俺の肩を掴んだ。
「か! つ! ん! だ! よ! 勝てば何も問題ない! そして星4のオーガの召喚石まで手に入る! まさか、負けるつもりか?」
「……んなわけねぇだろ! 召喚モンスターを犯罪に使うような奴に負けない!!」
「よく言った。それでこそ我が親友にしてライバルだ」
「……あの、2人とも、開店の時間です」
「はい!」
「うむ!」
本当に、オーガは来るのだろうか。





