顛末と
学食で昼食を摂りながら昨日のことを思い返す。色々あったが、収支を考えるとかなりのプラスだ。
何せ、最も入ダン料が高いと言われているランダムダンジョンにタダで入れることになったのだ。18時以降限定とはいえ、これはとんでもないメリットだ。かなりプライベートを切り売りしたが、それは相手──八乙女さん──も同じこと。
「いつ来てもいいからね。か」
八乙女さんはそう言ってくれた。もちろん、ランダムダンジョンにゴ治郎が入る時は彼女の召喚モンスター、ファントムリザードのリドがついてくる。
八乙女さんにとってダンジョンやモンスターに関する情報を得ることは最優先らしい。黒目を大きくしてモンスターやダンジョンの話をする彼女はひどく楽しそうだった。少し揶揄うようにそのことを指摘すると、「あら。就活そっちのけでダンジョンに潜っている水野君ほどではないわ」と言われてしまったが。
「水野晴臣いい!」
ほう。久しぶりにフルネームで呼んだな。あの馬鹿野郎は。声のした方を見るとトレイにおかずを幾つものせた小太りがいる。
「よう。鮒田。召喚石に血を吸われて2、3日は寝込むと思ったが──」
「馬鹿を言うな! 俺は血の量が人より多い男、鮒田武だ!」
それは自慢なのか? 周囲の目を全く気にせずに言い放つと、鮒田は俺の正面に座ってトレイのおかずに箸を伸ばす。レバニラ炒めだ。
「レバー食べてるじゃねーか!」
「ね、念の為だ!!」
そう言う鮒田の手に光る召喚石の色は薄ピンクからハッキリとしたピンクへ変わっていた。中の武蔵もオークからハイオークに進化完了したことだろう。
「あの後、ゴ治郎はどこまで進んだんだ?」
「2番目の部屋で強力なモンスターが現れてな。なんとか倒せたが流石にそこで終わりにしたよ」
八乙女さんとの顛末は鮒田には話さないつもりだ。絶対に面倒くさいことになる。
「強力なモンスター?」
気になるのか箸が止まっている。
「ああ。キマイラが出た。まだリアルダンジョンwikiにも載ってない」
「うぬぬ。惜しいことをした。キマイラを討ち取る武蔵を見たかったのに……」
鮒田は本当に悔しそうな顔をしている。こいつも、モンスターとダンジョンに夢中だ。
「そうだ! リアルダンジョンスレ見たか?」
何かを思い出したのか、鮒田は急に表情を変えた。
「いや、今日は見ていないが、何かあったのか?」
「召喚モンスターを犯罪に使っている奴等がいると書き込みがあった!」
なんだと!?
「本当なのか?」
「まだ噂の段階だ! 都内の窃盗事件の中で召喚モンスターの関与が疑われるものがあるらしい」
「そんな奴等は潰す」
「ふはははっ! さすが我が親友にしてライバル。話が早いな」
許せねえ。
まだレバニラ炒めを食べている鮒田を置いて、俺は立ち上がった。





