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【書籍化】庭に出来たダンジョンが小さい! ~人間は入れないので召喚モンスター(極小)で攻略します~   作者: フーツラ


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赤帽子

切りのいいところまで一気に投稿してみました。お楽しみ頂けたら幸いです。

ゴ治郎がやられたあの日以来、2度目の第2階層はやはりしんとしていた。第1階層のようにゴブリンが騒がしく襲ってくる事はない。静かに、こちらを狙っているのだ。


「ゴ治郎、お前は強くなった。装備も随分良くなった。焦ることはない。落ち着いて、ゆっくり進むんだ」


「……」


視界のブレでゴ治郎が頷いたのが分かる。どうやらスイッチが入ったようだ。ここからは任せよう。


転移の石柱が置かれた部屋から滑るように移動し、通路に出る。前回はこの通路の曲がったところで赤帽子に襲われた。


ゴ治郎は丸盾を構え、半身になりながらジリジリと前に進んだ。強くなったとはいえ、赤帽子のスピードは脅威。初撃が鍵となる。


壁に背をつけ、呼吸を整える。そして予め用意しておいた小石を、ゆっくりと曲がり角の先へ投げた。


カラン。


「ヒッ!」


いた! 赤帽子はすぐ側だ! 俺が思うよりも速くゴ治郎は丸盾を前にして突進を始める。


不意を突かれた赤帽子は一瞬怯むが、やはり反応がいい。バックステップでシールドバッシュを躱し、同時に腰のナイフを引き抜いた。


「止まるな!」


「ギギッ!」


大振りにならないように銅の剣を突き入れると、赤帽子はさらに後退する。しかしゴ治郎は止まらない。前回より遥かに強靭になった肉体が前へと進み、絶え間なく繰り出される突きが赤帽子の反撃を許さない。


「ヒッヒッ、フー!」


防戦一方の赤帽子の息が荒い。コイツ、スタミナがない? 一方のゴ治郎は俺がエネルギーを供給する限り無尽蔵に動ける。連続稼働はお手の物だ。今だって高カロリーで消化のいいゼリー飲料を口に咥えている。


「ヒッ!」


赤帽子が岩に躓いてよろける。


「ギギッ!」


ゴ治郎が銅の剣を振りかぶり──。


「ダメだ!!」


ゴ治郎の視界から赤帽子の姿が消え──。


「お座り!」


「ギッ!」


しゃがんだゴ治郎の上を、風を斬る音が通り過ぎ──。


後掃腿(こうそうたい)!」


「ギギッ!」


手応えありだ! 赤帽子のくぐもった声が聞こえる。


「叩けえぇぇぇ!!」


「ギャャャャャ!!」


振り向いたゴ治郎が赤帽子を叩き、血飛沫が舞う。興奮したゴ治郎は何度も何度も銅の剣を叩きつけ、やがて岩を叩く音が聞こえ始めた。


「ゴ治郎」


「……」


「ゴ治郎、もういいぞ」


「……ギッ」


「ゴ治郎、お前の勝ちだ……」


「ギギギギ?」


「本当だ。見てみろ」


視界に入るのはただの赤い水溜り。


「お前の勝ちだ」


「ゲギャギャギャギャャャャ!!!!」

「ウオオオオオオォォォォォ!!!!」


勝利の雄叫びがダンジョンと水野家に響き渡る。


一寸置いて、階段を上がる足音が聞こえた。ヤバイ。はしゃぎ過ぎた。無遠慮にドアノブが回される!


「ハルくん! どしたん!?」


「……勉強し過ぎて、頭がパンクした」


「……もう、ほどほどにしなさいよ」


そっと閉められたドアの向こうに母親の姿を幻視した。


嘘で誤魔化した罪悪感はある。だがしかし、俺は勉強では手に入れられないものを手に入れたのだ。

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