当てるまで帰れません
掛け合いメインの作品を始めます!!
『最悪の魔道具師が地球送りにされました』
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よろしくお願いします!!
「ギギギ」
「ブイ」
「ギギギッギ!!」
「ブイブイブイッ!!」
ずっとスロットを占拠している武蔵に対して、ゴ治郎が文句を言った。しかし武蔵は譲らない。充血した瞳でスロットのリールを凝視し、力いっぱいストップボタンを叩いている。
「ちょっと! オークの旦那! そんなに力いっぱいやらなくてもリールはちゃんと止まりますよ! 重要なのはタイミング」
スケルトンの店員が諌めるも、武蔵が鎮まる気配はない。相変わらず、バンバン叩いている。
「おい、鮒田! そろそろ代われ!」
「まだだ! あと十回は回せる!」
「次からは一度に投入する魔石の数を十個までにしよう」
「勝手なルールを作るんじゃない! 魔石があるだけ入れるに決まっているだろ!」
ゴ治郎が当てた毒消しを飲ませると、武蔵はあっという間に回復して元気になった。そして、魔石があればスロットに挑戦出来ると知り、一度第五階層に戻ってガルムを狩まくったのだ。
そして、魔石を山ほど抱えてスロットを独占しているのである。武蔵と鮒田は。
「クソッ! 何故揃わない! こんだけやっているのに!」
「ブイブイブイィィ!!」
鮒田達の狙いは防具だ。
武蔵の武器は言うまでもなく魔剣だ。力を込めれば蒼く輝き恐ろしいほどの斬れ味を発揮する。
その一方で防具は普通だ。なんの変哲もない皮の胴と腰巻きをしている。
アーミースタイルで統一しているゴ治郎に比べて地味だと前々から気にしていたのだ。鮒田は。
「最後の一回だ! 武蔵、気合いを入れろよ!」
「ブイィィッ!!」
リールは小気味よく周り、スロットは怪しく輝く。
武蔵は慎重にボタンを押す。
一つ目の図柄は……鎧だ。テントの中を見ると鮒田がガッツポーズをしている。随分と気が早い。
二つ目の図柄は……また鎧だ! こちらまで熱くなってきた。
そして運命の三つ目は──。
「なんでドクロなんだよ!!」
最後に現れた図柄は王冠を被ったドクロマーク。あの六車ダンジョンにいた不死王をイメージさせるものだった。もし、不死王が三つ揃ったら、何が起こるのだろう? まさか、今度はあの不死王の間に転移なんてことはないよな?
「さぁ、代われ」
「ちっ、仕方がない。武蔵、スロットの前から退くのだ」
「ブイィィ……」
ゴ治郎の視界には、名残惜しそうにスロットから離れる武蔵の姿がある。
「晴臣。もし、いい防具が当たったらポーションと交換してくれないか? ポーションは山ほどあるんだ」
このスロットのハズレ景品はポーションらしい。武蔵の腰袋にはそのハズレが山ほど入っている。
「ゴ治郎に使えないようなモノが当たったら考える」
「頼む! オークの顔が真ん中についた鎧を当ててくれ!」
……そんな鎧、嫌だろ……?
「とにかく鎧だな。分かった。頼むぞ、ゴ治郎」
「ギギッギ!」
そして見事、ゴ治郎は鎧を当てることとなる。オークの顔の代わりに、胸部に赤い宝石のついた鎧だ。サイズを考えるとゴ治郎には合わないものだ。
当然、鮒田はそれを強請る。大量のポーションと引き換えに。
大量のポーション。これが次の火種だった。
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