ハイテンション
「ヘイヘイヘイヘーイ!! やっとお客さんが来たぜー!! 長かったぁぁぁぁー!!」
俺は幻を見ているのだろうか……? ゴ治郎の視覚はスパンコールのスーツを着たスケルトンを映している。
俺は幻聴を聞いているのだろうか……? ゴ治郎の聴覚はスケルトンの流暢な日本語を捉えている。
ゴ治郎と武蔵はドクロマークの描かれた転移石に触れた。そして予想していた通り、討伐者である二体は転移したのだが……。
「お、おい、晴臣……」
「な、なんだ」
「武蔵が幻を見ているみたいなんだ……」
「奇遇だな。ゴ治郎も幻を見ているぞ……」
「昔の漫才師みたいな格好のスケルトンがいる……」
「あぁ。いるな。そして、そいつの後には随分と派手な建物が……」
「晴臣……。あれはカジノじゃないか?」
「俺もそう思う」
そう。転移した先にあったのはネオンで彩られた洋館だったのだ。そのケバケバしい外観はカジノにしか見えない。
「ヘイヘイヘイヘーイ!! 何を突っ立てんだい? 早く中に入って遊んでってくれよ!! 魔石待ってるだろ?」
ゴ治郎と武蔵が顔を見合わせる。確かに第五階層で倒したガルムの魔石は腰につけた袋に入っているが……。魔石があればカジノで遊べるということだろうか?
「いいからいいから! 入って入って!!」
スケルトンは早く来いと手招きをしている。
「晴臣……。どうする……?」
「ここまで来たんだ……。入ろう」
俺と鮒田の気持ちが通じたのか、ゴ治郎と武蔵は恐る恐る屋敷へと入っていく。そして中は見上げるほど大きなスロットマシンが一台。
それはおどろおどろしいデザインで、王冠をかぶったスケルトンが大きく描かれている。
六車ダンジョンで見た不死王に似ているな……。嫌な予感しかしない。
「大丈夫! 大丈夫! これはただのスロットだから! 危険なんてないぜ!」
スロットのリールには薬や武器、防具の図柄が書かれてある。
「オーケーオーケー!! ルールを説明しよう!! スライムでも理解出来るくらい簡単だ!! このスロットの穴に魔石をいれる。その魔石の価値によってスロットに挑戦出来る回数が決まる」
スケルトンがスッとゴ治郎に近寄り、腰袋を奪った。そして魔石をスロットの穴に放り込む。
「おぉ! なかなかいい魔石じゃないか! スロットに10回挑戦出来るぞ? ちなみに一度入れた魔石はもう戻ってこないから、気をつけろよ?」
勝手に入れておいて、調子のいいやつだ。
「ほら、ゴブリンのにいちゃん! スタートレバーを引いてみな。リールが回り出すから。そしてこの三つのボタンを押してリールを止めるんだ。図柄が揃ったら景品が出てくるから!」
ゴ治郎がスタートレバーを引くと、リールが勢いよく回りだす。
「さぁ、よーく狙うんだ。そしてストップボタンをワン、ツー、スリー!!」
スケルトンの口車にのって、タン、タン、タン! とストップボタンを押すが、図柄は揃わない。ゴ治郎は悔しがる。
「さぁ、どんどんリールを回してくれよ! 早く毒消しを手に入れないとそっちのオークのにいちゃんがそろそろヤバそうだぜ……!?」
そうだった!! あまりの出来事に呆気に取られてしまっていたが、武蔵は毒を喰らってかなりヤバい状態なのだ。
見ると武蔵は地面に膝をついている。
「ゴ治郎! まだ魔石には余裕がある筈だ! ガンガンスロットに挑戦しろ! 薬の図柄を狙うんだ!!」
「ギギッギ!」
人生初のギャンブルが、まさかダンジョンの中になるとは……。
今までにない戦いが始まった。
掛け合いメインの作品を始めます!!
『最悪の魔道具師が地球送りにされました』
https://ncode.syosetu.com/n0537hz/
よろしくお願いします!!





