深く潜れ!
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深夜帯のお客さんと入れ替わるように、俺と鮒田は段田ダンジョンの門を潜った。時間は朝8時前だ。
庭のテントの中にはまだ先客の熱が残っている。ギチギチに食料が詰まったリュックを下ろすと、フッと身体が軽くなった。その時の表情を見られたのだろう。鮒田が「これからが本番だぞ!」と釘を刺した。
「あぁ、分かっている」
早速、武蔵を召喚した鮒田は準備体操を始めた。ダンジョンに入る前のルーティンなのだ。鮒田はいつもこれをやる。
「ゴ治郎、来い!」
手のひらにゴ治郎を召喚すると、神妙な顔をしている。テント内のピリついた空気を感じているのか。
「前に話した通り、段田ダンジョンの深部を目指す。今までは第三階層までしか行かなかったけれど、今回は違う。時間はたんまりある。とにかく奥に進み、転移石を探すんだ。ドクロマークのついた」
「ギギッギ!」
自分の肩のドクロマークをチラリと見遣り、サムズアップ。気合いは充分だ。
「よし、武蔵。行ってこい!」
「ブィ!」
鮒田の声に武蔵はツカツカと歩き出す。その少し後をゴ治郎が音もなく付いていった。
討伐者二体によるドクロマーク探し、スタートだ。
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段田ダンジョン第三階層までのマップは公開されており、ゴ治郎と武蔵であれば何の問題もない。四時間ほどで踏破した。
そして、転移石に触れて第四階層。
ここではハイコボルトとコボルトメイジが徒党を組んで出てくる。しかし、慌てる必要はない。武蔵が正面で受け、まわり込んだゴ治郎が背後から仕留めていく。
「ブィッ!」
「ギギッ!」
武蔵とゴ治郎は何の指示をしなくても、二体で連携をとり危なげなく進む。
また正面からハイコボルトが三体。武蔵が魔剣を構えて前にでると──。
──ヒュンッ! とゴ治郎の耳元を掠めたのはコボルトメイジが放った氷の杭か? 魔剣を構えながら振り向くと増援だ。
「鮒田! 敵が増えてきた! そろそろペースを上げないと囲まれるぞ」
「よし、武蔵! 魔剣に力を込めろ」
鮒田の指示に武蔵の魔剣がほんのり輝く。そして横薙ぎにすると三体のハイコボルトが下半身を失った。
その様子を横目に、ゴ治郎は新たに現れた三体のコボルトメイジの背後を取る。
──斬ッ!!
蒼く輝く魔剣が一体を斬り捨てると、コボルトメイジは飛び退きながら魔法を練った。
「来るぞっ!」
「ギッ!」
二体から同時に放たれた氷の杭がゴ治郎に迫る。しかし、遅い。一瞬で残像となったゴ治郎の体は蒼い線を残しながら、二体の間を縫うように駆けた。
そして噴き上がる血潮。やがて死体は消えて魔石だけが残った。
「ふぅ。休む暇がないな」
「全くだ」
テント内に視界を戻すと、鮒田が汗を拭きながらエナドリを飲んでいる。武蔵の魔剣は長い分、ゴ治郎のものより消耗が激しいのだろう。ここからの戦いは召喚者の体力がものを言うのかもしれない。
「鮒田、キツくなったら言えよ。安全地帯は転移の間だけだ。そこに辿り着くまでは交代で休むしかない」
「あぁ。分かっている。先は長いから無理はしない」
あっという間にチョコバーを平らげ、鮒田は顔に生気を取り戻した。
「よし、晴臣! さっさと第五階層の転移石を見つけるぞ!」
「あぁ。夜までに転移の間に辿り着きたい。そこで仮眠をして第五階層だ。次からは新しい敵が出てくる可能性が高い。万全な状態で臨みたい」
鮒田はゆっくりと頷く。以前なら鼻で笑いながら「心配性だな!」なんてこと言っただろう。しかし、今はそんなことはない。傲慢な性格には違いないが、ダンジョンや召喚モンスターには本気で向き合う。
「なぁ、晴臣。ドクロマークの転移石の先には何があると思う?」
「マザーを倒すぐらい強い召喚モンスターしか行けないんだ。危険な場所なのは間違いないだろう」
「危険な場所……かぁ」
この時はまだ、ドクロマークの先を漠然と「危険な場所」としか認識していなかった。





