集団戦
ゴ治郎を先頭にして総勢十一体のゴブリンが裏庭ダンジョンに入っていく。
サークルメンバーのゴブリンは最近市販されている「人型モンスター初級装備セット」に身を包んでいる。ダンジョン産の物に比べると強度がイマイチで重たいらしいが、そこは仕方がない。ダンジョンを独占出来るような環境じゃないと、全ての装備をダンジョン産で揃えることは出来ないのだ。
「よし、陣形を組め!」
ゴブリン達は前衛五体、後衛四体に別れて陣を組んだ。前衛はタワーシールド、後衛は短槍を構えている。
ゴ治郎とカジワラのハイゴブリンが遊撃という形だ。
「カジワラさん、一緒にゴブリンを釣りに行きますか?」
「是非!」
ゴ治郎の後をハイゴブリンが追ってくる。
最近明らかになったダンジョンの機能の一つに「調整」がある。それは雑魚モンスターがメインのダンジョンによくある機能で、侵入者の数によって出現するモンスターの数が調整されるというものだ。つまり、大人数でダンジョンアタックすると、モンスターも増える。
そしてこの裏庭ダンジョンは「過調整」ダンジョンとして知られているのだ。過調整とは──。
「いました! 十……二十……三十体以上います!!」
──侵入者が十体を超えると「調整」の範囲を逸脱して大量のモンスターがポップする現象のことをいう。カジワラ達が水野ダンジョンランドをホームにしているのも、この「過調整」があるからだろう。
「よし、ゴ治郎! 引きつけろ!」
ゴ治郎が魔剣を抜いて力を込める。蒼く発光するそれに気がつく敵ゴブリン達。ゴギャゴギャと威嚇する声が幾重にも重なり、地面を踏み鳴らす音がダンジョン内に響いた。
「来るぞ!」
「ギギッ!」
──ドドドドドドッ!!!! と地響きがしてゴ治郎の視界がブレた。棍棒を振り上げだゴブリンの集団が通路いっぱいに広がってこちらに迫ってくる!
「よし、行け!」
「ギギッギ!」
ゴ治郎が踏み出すと一瞬で敵ゴブリンを突き放す。そして立ち止まり、尻を叩いて敵ゴブリン達を馬鹿にする。怒り狂った集団は怒声を上げながら速度を増して駆けてくる。
「もうすぐ来るぞ!」
カジワラがサークルメンバーに檄を飛ばした。ゴ治郎の視界先にはタワーシールドが整然と並んでいる。
「ギギッ!」
「グギャ!」
ゴ治郎とハイゴブリンが飛び上がって陣の中に入った。もうすぐ……衝突する……!!
ガチンッ!! と前衛五体がタイミングを合わせてシールドバッシュを放った。カウンター気味に食らった敵ゴブリンが無様に転がり、後続に踏み潰されている。
「突き!!」
カジワラの声に合わせて短槍がシールドの隙間から突き出され、敵ゴブリンの胴体に刺さる。
「進め!!」
前衛が力強く前進して防衛線を押し上げた。雪崩のように止まらないゴブリンの波を、盾と槍で次々と葬っていく。
実によく練り上がっている。三十体を超える敵にも全く動じない。
「何かくるぞ!」
頭ひとつ背が高いカジワラのハイゴブリンが見つけたのは組体操のように肩車をしたゴブリン……。天井ギリギリまで積み重なり、そのまま倒れて来る……!!
──斬ッ!! と中空に蒼い線が走った。
そしていくつかのパーツに分かれて地面に落ちるゴブリンの体。カジワラのハイゴブリンも掬い上げるようにメイスをふるい、落ちてきたゴブリンタワーを潰している。
「流石です!」
裏庭に視界を戻すと、カジワラがこちらを見て言った。
「いえいえ。それより素晴らしい練度ですね」
まだ戦闘は続いているが、サークルメンバー達の戦いは非常に安定している。もう放っておいても平気だろう。
「二週間に一度はサークルでダンジョンアタックをしているので! 水野ダンジョンランドはモンスターのポップが凄いので召喚モンスターの成長速度も段違いです!」
魔石を摂取することによる成長と戦闘経験による成長。両面から水野ダンジョンランドは優れているらしい。なんだか誇らしい気分だ。
「今日は第二階層まで行くぞ!」
カジワラがサークルメンバーを鼓舞した。それに応えるように前衛が最後の敵ゴブリンをタワーシールドで圧殺する。
そして、裏庭にはいい香りが漂い始めた。八乙女さんが野菜と豚肉を炒め始めたのだ。
思う存分戦って、腹が減ったら野菜たっぷりのゴブリン焼きそばが食べられる。
うーん……。想像以上に良い環境だ。オカン、よく考えたなぁ……。
「さて、進みましょうか?」
「了解です!」
こうして、カジワラ率いるダンジョンサークルの面々とゴ治郎は、裏庭ダンジョンで数えきれない程のゴブリンを狩るのだった。





