ダンジョンサークル
「マスター! お世話になります!!」
駐車場からハツラツとした挨拶が聞こえてきた。マスターとは多分、ウチの母親のことだろう。前はたしか「園長」と呼ばれていた筈だが……。
ゾロゾロと裏庭にやって来たのは、揃いのジャージを来た大学生達。運動部みたいだ。
「あれ? マスターは……?」
サークルの代表だろうか? 坊主頭の男が辺りを見渡している。
「おはよう御座います。ウチの母親はちょっと体調を崩してまして……。本日は私が案内します」
男はこちらを向いて身構える。そして──。
「マスターのご子息……。つまり……ゴ治郎の召喚者……!?」
「あっ、はい。そうですね」
俺が認めると、男はサークルのメンバーを集めて小声で何やら相談を始める。
「……何かしら?」
八乙女さんが側に寄ってきて小声で言う。
「……何でしょうね?」
相談が終わったらしい。坊主頭は一歩前に出て咳払いをした。
「は、初めまして! 自分はサークルの代表を務めるカジワラと言います! いつもマスターにはお世話になっております! 我々のサークルは水野ダンジョンランドをホームにしておりまして、持っている召喚石も全員ゴブリンです!」
10人のサークルメンバー全員が召喚石持ちなのか。結構本格的にダンジョンアタックをやっているサークルのようだ。
「そこで、もしよろしければゴ治郎を召喚して頂けないでしょうか? 我々はゴ治郎に憧れておりまして──」
「ギギッギ!」
プレハブの中にいたゴ治郎が窓から飛び出して俺の肩にのると──。
「おぉぉぉー!! ゴ治郎だ!」
「す、すげぇ」
「いつの間に現れたんだ」
「カッケェェェェ!!」
「討伐者、キタァァァ!!」
──口々に歓声が上がった。
「よし、みんな召喚しろ!」
カジワラの掛け声にサークルメンバーが胸元から召喚石を取り出し、次々とゴブリンを召喚する。カジワラだけはハイゴブリンだ。進化済みとは、なかなかやるな。
「早速ダンジョンアタックされますか? あちらのアウトドアチェアは自由に使ってください」
多分俺よりも水野ダンジョンランドについては詳しいだろうが、一応説明する。勝手知ったるサークルメンバー達は裏庭にアウトドアチェアを広げ始めた。
「ギギギギッ!」
ゴ治郎がダンジョンを指差している。
「えっ、ゴ治郎もダンジョンに行きたいの? 今はお客さんの時間だから──」
「是非お願いします!!」
カジワラがものすごい勢いで近寄ってきて懇願する。
「えっ、いいんですか?」
「勿論です! ゴ治郎と一緒にダンジョンアタック出来るなんて夢のようです!!」
カジワラの言葉にサークルメンバー達も頷く。
「いいんじゃない? 焼きそばぐらいなら私だって作れるわよ」
八乙女さんまで……。
「では、ご一緒させてもらってもいいですか?」
「「「よろしくお願いします!!!!」」」
妙な流れになってしまったぞ……。





