西方の男たち : 18
日やけた白い肌を覆うくすんだ黄色のひげを蓄えた男と、鼻の小さい茶髪の男は花火を見上げて瞳をその光に輝かせる。
「くそみたいにきれいだな。ゼナード」
「ああ。言いたいことはわかるが違うぞ」
リーベンブール近郊離れ、西方訛りの声は花火の音に紛れる。
石畳の敷かれた広場の地面に座りこんでいた黄髪の男の碧眼の瞳に、大輪の青白い花火が反射した。
「おい、あいつらどこだ」
体の芯まで響く音により黄髪の男の声は掻き消える。
「おいベダ!あいつらどこいった!」
「あん?しょんべん撒いてくるって行ったぞ!まぁ、たぶんあのべっぴん妊婦の近くなんじゃねぇの」
「あいつら………」
黄髪の男はうなじを強くさする。
「いい加減我慢覚えろ」
「堅いこというなって。かわいいやつがオレたちを誘惑してんのさ」
黄髪の男は右拳を茶髪の男の左わき腹に打ち込んだ。
くぐもった呻き声上がる。
「前のとこで、あんた達の正直さに心動かされた俺はあの2人がやったんじゃないって言ったんだぞ。忘れるな」
「いってえよ!オレやってねぇしオレじゃなくてあいつらに言え!くそ!鎧越しなのになんでほんと痛ってぇ」
黄髪の男は眉根をひそめた。
茶髪の男は声を荒げる。
「はん。褒めてねぇよ。お前褒められたと思うとそんな顔―――」
「血の臭いがする」
茶髪の男は目を丸くし、口を尖らせた。
「なんだよ。ここはオレたちが守るって金巻き上げるつもりか」
「今その話はいい。俺の鼻に誓っていうが、何人かすでにやられてる」
「あ……腹痛い。1発行ってくる」
立ち上がろうとした茶髪の男の肩を、黄髪の男は掴み、あぐらをかいた体勢から立ち上がった。
「一緒行くぞ」
ふたりは広場から離れてそこに繋がっていた細い道へ進む。
「おお!そろってぶりぶりか?そりゃ………ああそうだよな………」
黄髪の男は腰に下げていた、両手では短く、片手では長い手斧を両手で構えた。
細いその道の先を黄髪の男は凝視し、手斧を握る手は絞るように強くなった。
「こっち側じゃなくてあっち側にしようかな」
茶髪の男は黄髪の男から離れるように歩く速度を落とす。
茶髪の男の手には同じ手斧が握られていた。
花火の色、青白い点滅と鎌を描く頼りない夜の月が、石畳の道を照らしており、それらは降り注ぐ。
「うああああああああああああああ!」
突如、頭上から青年と思しき悲鳴が細い道に響いた。
男性的だが低さのない声。
黄髪の男は声と同時にこの世の汚物をかき集めたような腐った臭いを嗅ぎとる。
声は頭上を通り過ぎ、広場を通り過ぎて飛んで行った。
二人の男は顔を見合わせ、互いに肩をすくめた。
ふたりが前へ顔を向けた時、黄髪の男は血の臭いと、不清潔で外にいた人間の臭いを捉えた。
「ベダ!」
黄髪の男は頭上を見上げた。
首筋を狙いすました暗夜からの短くきらめいた一撃、それは家の屋根から振り下ろされる。
黄髪の男は手斧を棒として扱い、重く落ちる人影を押しのけるよう払い、叩きつけ、地面へ崩す。
倒れた人影へ茶髪の男は手斧でその腕を切断。
1人目。
黄髪の男は手斧を左から右へ水平に払い、道の奥から現れた短剣を持つふたつの人影を牽制する。
右の人影は勢いを削がれて距離を取り、左の人影は持つ短剣を弾かれた。
黄髪の男は右へ、茶髪の男は左へ。
黄髪の男の手斧は人影の肩から胸まで肉を裂いて入り込み、茶髪の男の手斧は無防備な人影の脇腹へ差し込まれ、引き抜かれる。
2人目、3人目。
倒れた人影ふたつの頭を、黄髪の男と茶髪の男は手斧の背でそこを殴った。
黄髪の男と茶髪の男は周囲を見回し、次に倒れた人影らを観察する。
その人影らは若い男だった
「西の流れ者か」
「かもな。ああ涙出ちまう。倒れているのがオレたちじゃなかったこと太陽に感謝するぜ」
「こいつらから連れていく」
「ほらみろ、結局そうなったじゃねぇか。いくらいけそうか。あ、残りどうする」
「そいつらは後だ」
片腕となった、呻く若い男ひとりを引きずり、黄髪の男らは広場の方向へ進んで行った。




