無垢なる言い伝え
混沌の空に、母なる父創造神はあらせられた。混沌の空に底はなく、また天井もなかった。
創造神はそこに世界を創られた。初め、世界は空虚であった。何にも染まらない世界を創造神は御身の色で染め上げられた。これが紫の所以である。
創造神は染め上げられた世界を整えられ、大地、天空を創り、それを御力で満たされた。
これを知った神々のうち一柱は自身の分身を世界へ植え付けた。これが草木である。
一柱は唾を吐いた。これが水である。
それらが揃った様をご覧になり、神は言われた。
「足りぬ」
新たな神々が世界に集った。
一柱は息を吹き付けた。これが風である。
一柱はくしゃみをした。これが雷である。
それらにあおられた一柱は吐しゃを世界に撒き散らした。これが炎である。
それらをご覧になった創造神はお怒りになり、大地を揺らされた。これが地震である。
怒りに触れた神々は涙した。これが海である。
これらをご覧になり、創造神は言われた。
「足りぬ」
創造神は土へ御力を注がれた。御力の器となった土は形を成し、動き出した。それを見ていた神々は創造神に倣った。神々の力を注がれた土は動かなかった。創造神は言われた。
「見よ、命である」
神々は悔しがり、力で命を模倣した。これが生命と精霊の起源である。
神々は世界を眺め入った。そこには地中、地国に住まう者と、天空、天国に住まう者がいた。海のない大地を炎が呑み込んでいたからである。
創造神は、地上に何者もいないことを不満に思われた。精霊は隠れ、地、天、に住まう者は身を寄せ合い震えていた。
創造神は神々に涙を流せと言われた。神々は否と答えた。神々は創造神に尿を出せと言った。創造神はお怒りになられた。
創造神は神々と激しく衝突なさり、世界は壊れかけた。
それに窮された創造神は神々と御力を合わされ、世界を修復、強堅にされ、二度、三度あったとしても世界は保たれるよう世界の形を定められた。これが世界の法である。
創造神と神々を知った、他の神が創造神に言った。
「命の器を貸す。ゆえにこの世界の法則を知らせよ」
創造神は世界の法則を知らせられた。その神は炎の中でも生ける器を生み出した。創造神はその器に御力を注がれた。これが祖なる者である。
祖なる者は暴虐の限りを尽くした。地を掘り出して地国を暴き、そこに住まう者を引き裂いた。天は掻き乱され、天国は離散し、そこに住まう者の羽をむしり、引きちぎった。
創造神はそれをご覧になり、憂われた。
祖なる者の器を生み出した神は、祖なる者に枷を与えた。これが、脳、耳、目、鼻、口、筋肉、生殖器、皮膚、心臓、あらゆる肉である。その神は炎に包まれる大地を重い水で冷ました。これが金属である。頭を得た祖なる者には光、音、匂い、力が必要になった。
創造神は自らと交わられ、子たちを成された。その子らに、創造神は世界の法を司るよう命じられた。創造神は昼を創られ、青白い子に任せ、夜を創られ、赤黒い子に任せられた。祖なる者は力を鎮められていき、数多の神々が世界に関わった。それにより、世界は尊貴に満ち溢れ、世界の全てが安定した。
これをご覧になり、創造神は言われた。
「良きかな」
長き時を経て、神々の寵愛を注がれる者が生まれた。これが人である。世界に関わった全ての神々、創造神は人の生まれた世界、お創りになった全てのものをご覧になり言われた。
「極めて良きかな」
世界は完成された。これが天地創造の由来である。