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二日目夜 3


「宵闇」



一番聞きたくない声が聞こえた。宵闇くんの祖父の声。ザッと血の気が引く。動かない体をどうにかして動かそうと力を込め、足掻く。動け、逃げろ、早く、どうして、なんで、いやだ、やめろ、動け!と周りの声など耳に入るわけもなく、この場から逃げる事だけを考える。


だが、私の努力などなんの意味もなさなかった。


連れていかれる宵闇くん。

行かないでと叫ぶ月光ちゃん。

無情にも去って行く、宵闇くんを乗せた高級車。

一人、闇の中で取り残される。


何度も何度も何度も、このエンドを見た。次こそはと意気込んで。まあ仕方ないと思いながら。月光ちゃんが無惨に死ぬことに飽きたと口にしつつ、何度も繰り返した。だって仕方ないじゃないか。正解のルートが分からないのだから!


だからいつものように間違えたのだ。どこかの選択肢を。必然だろう。でもこれは私が選んだわけじゃない。私は何度もその選択肢は違うと思った。そこはこの選択肢だろうと何度も何度も考えた。そうだ、私は何度も、何度も何度も何度も何度も!止めようとしたのに!!どうにもならずどんどん勝手に進んだんじゃないか!!……私のせいじゃないのに!私のせいじゃないのに!!


どのくらいの間そうしていたのか分からないが、多分ほんの数分だろう。月光ちゃんが動き出す。涙を拭い、宵闇くん……必ず助けるからと呟いた。その目は前を向いている。彼といる明日を、見ている。それなのに。


後ろから野卑な声が聞こえてきた。


こんなところにおんなのこがあぶないからおれたちとないてるじゃんなぐさめておいきこえてんのかちょうどいいあっちへつれていこう……腕を掴まれた。


泣き叫ぶ私を力尽くで森の中へと引き込み、背中を押して転ばせる。痛い。すぐに立とうとするが髪を掴まれ引き倒された。痛い。一人が暴れる腕を押さえつけると、もう1人が腹に乗ってくる。苦しい。足をばたつかせるがビクともしない。絶望する。靴が脱げる。力では敵わないと悟り、声の限りに叫ぶ。初めて聞く、女性の金切り声。黙れと殴られても構わず叫び続ける。頬と喉が痛い。黙れとまた殴られる。両頬が痛い。それでも叫び続ける。顔が痛い。黙れと首を絞められる。苦しい。首を振り、かひゅっと息が漏れる。苦しい。ばたつかせていた足が段々と動かなくなる。くるしい。腕の力もなくなり、動かなくなる。くるしい。やめて、と口を動かす。くるしい。頭に血が上る。くるしい。空気を求めて舌を伸ばす。たすけて。もう何も考えられない。あたまがあつい。いたい。くるしい。いき。とまった。しんだ。



目が覚める。



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