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二日目夜 2


その後も普通の、とは少し言い難いが健全な交際を続ける月光ちゃんと宵闇くん。学校では時折どこか不穏な空気が流れたりもするが、特に何事もなく日々がすぎて行く。


そんな日常に、私は焦っていた。

これはいつまで続くのだろうか。いやまあ第二関門である三月で止まるだろうなぁとはうすうす気付いてはいる。だが第二関門ももれなくデッドエンドだ、切実に勘弁願いたい。

それに現実ではどのくらい経っているのかが分からないため、もしやすでに月曜日になっていて、出勤時間すら過ぎているのではないか?と社会人として真っ当な不安が拭えない。夢を見ていたせいでまったく起きられず来れませんでした、など言い訳にもならん。最悪クビになったらどうしてくれる。シャレにならんぞ。


そんな私の焦りなど全くもって分からないこの世界の方々は、今日も今日とてさり気ない闇と病みを醸し出しつつ過ごしている。担任の先生が監視するように凝視してくるのにも慣れたよ。クラスメイトが何かに気付いたのか、月光ちゃんと宵闇くんの関係をヒソヒソ噂しているのにも慣れたよ。宵闇くんのアグレッシブなスキンシップにも慣れたよ。宵闇くんの母親の過保護と過干渉にも慣れたよ。


そしてようやく、今日が最終日。

三月三十一日の夜八時。宵闇くんと会う約束をしていた月光ちゃんは、母親に出掛けてくると声をかけ、弾む足取りで夜道を進む。約束の場所にはすでに宵闇くん到着していた。タタタッと小走りで近付くと、月光ちゃんに気付いた宵闇くんが手を広げた。飛び込んでこいということだろう。そうだろう。心得たとばかりに月光ちゃんは飛び込む。そうだろう。


やはりだ。ゲームの流れ通りだ。

宵闇くんと夜の逢瀬を楽しむ月光ちゃん。そこに宵闇くんの祖父が部下を伴って現れるのだ。長い間だまされた、これからは私がお前の父親だ。そう言い、その子を連れてこいと命令された部下の人達が無理やり宵闇くんを連れていこうとする。抵抗する宵闇くんだったが、祖父に抵抗すればお前の母親とそこの娘がどうなるか分かるな?と脅され、目から光が消える。なすがままに連れていかれる宵闇くん。そんな彼の名前を叫び、行かないでと呼びかけるも応えは返らない。月光ちゃんは闇の中、取り残される。数分後、のろのろと歩き出す。の、だが。


やめて!と声を上げるもどうにもならず。


複数人の男に森の中に連れ込まれ。


翌日、無惨な姿で発見されるのだ。



その間の描写はだいぶぼかされているが、複数人の男、衣服を裂く音、首を絞められ、などで明白である。男に乱暴されたあげく首を絞められて殺されるのだ。このエンドでは靴の脱げた足が草むらから少し見えているスチルが出て終わる。恐ろしい。


今からそんな目に遭うのか?私が?……嘘だろ?



嫌だ。



嫌だいやだイヤだイヤだイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダ!!!!


起きろ!目を覚ませ!これは夢だ!夢なんだから起きられるはずだ!私は違う、違うのだから!!だって私は普通の社会人だ、女子高生ではない!なぜこんな目に合わなければいけない!?いやだ、やだ、やだ!だれかたすけて!!


私の恐慌など露知らず、恋人同士は仲睦まじく語らう。聞こえるのは睦まじい声と、車の行き交う音。そして、誰かの、足音。



地獄はすぐ側まで迫っていた。


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