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二日目夜 1


目を開く。


これは夢だ。

昨日、夢で見た天井が見える。

またか、と戦々恐々とする。あの痛み。死んだと錯覚するほどの、痛み。怖い。


体が動き出す。昨日と同じだ。朝の支度をして母親に挨拶。朝ごはんを食べ、家を出た。慣れたように学校へと歩き出す。


おはよう、と声をかけられ振り返る。そこには宵闇くんがいた。嬉しそうに走ってくる。私のところまで来ると、当たり前のように手を握ってきた。しかも恋人つなぎで。


なんだ!?と私は驚くが、月光ちゃんは動じない。むしろ当然と言わんばかりに手を握り返している。どうした!?


にこやかに会話をしながら歩く。私の知らない会話シーンだ。なんだこの会話、こんなの選択肢で見たことがない。


そもそもゲームでの選択肢は三択だ。なのでそれ以外の回答はないし、その選択が覆ることもない。好きな動物は?という問いにはネコ、犬、鳥という三択が出される。ネコと答えた場合、その後もずっとネコ派になる。

だが今の会話。


「月光、明日って予定ある?」

「明日?明日は宿題やって、うーん……」

「宿題やり終わったら暇?」

「暇じゃないよ!えっと、本とか読むし」

「ふーん。なら僕と会う暇はないのかー、残念だなー」

「もう!分かってて言ってるでしょ!」


甘酸っぺぇ……じゃなく、普通の会話だ。選択肢が出ているような会話ではない。どう聞いても普通の高校生同士の普通の会話だ。なんだこれは。私の混乱など知らぬ二人はその後も楽しそうに話し続ける。


変化は学校に着いてから訪れた。

この会話しってるぞ!という会話が繰り広げられたのだ。これは十一月だったはず。昨日、ゲームで私が進めたところの後からだった気がする。



『いいよ』

『いいよ』

『それは違うと思う』

『私は好きだけど』

『そうだね』



どんどん会話が進む。ゲームと同じやり取りが目の前で繰り広げられ、そのままこの日は終了。明日は宵闇くんとデートだ、楽しみだなぁとにこにこしながら布団にもぐりこむ月光ちゃんの可愛さたるや筆舌に尽くし難い。恋する乙女は可愛いとはこういう事なのだと理解した。


次の日。

午前中は宿題と家事をやり、午後は約束していた通り宵闇くんとデートをする。男とバレてはいけないので、普段とは別人に見えるほどの変装をして来た宵闇くんは、とても美少年だった。目立つ白髪を黒髪のウイッグで隠し、大きな瞳はカラーコンタクトレンズで色を変え、いつも愛らしく見えるようにと上げられている口角は真一文字に結ばれている。普段と違う格好が照れくさいのか、はにかみながら軽く手をあげ月光と呼びかける。


なんでこれスチルないんだ!?と叫びたくなるほどに完璧な構図だった。


手を繋ぎ、どうしても人目が気になるのか人気のない森の中をゆっくり散策している。時折、舗装されていない道を歩いたことが無い月光ちゃんが転びかけるが、そのたびに宵闇くんがさり気なく助けていた。一度、思いっきり胸をわしづかまれたがわざとでは無いよな宵闇くんよ!力加減が分からなかったのか知らんがけっこう痛かったぞ宵闇くんよ!!


気付くと、二人は見つめ合っていた。

えっ、これまさか、まさか?

と心臓バクバクさせていたらそのまさかでした。


宵闇くんの顔が近づいてくる。月光ちゃんも目を閉じる。私の視界も閉ざされる。

いや待ってこれは流石にいかんわ!待っていや待ってくれよ私がいなくなってからしてくれよ!!


そう心の中で絶叫していると。


私の叫びが届いたのか、そこに誰かいるのか?というオッサンの声が聞こえた。

ビクッと体が震え、目を開き、見つかったと慌てて手に手をとって走り出す。私はほっと胸を撫で下ろした。私は月光ちゃんになり隊ではなく、月光ちゃんと宵闇くんを見守り隊なのだ。仲良く(意味深)するなら私抜きでやってくれ!



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