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二日目朝 2


昨日、止めたところからゲームスタート。

初日で私も寝るかーと思って寝たから、二日目からスタートのはず、なのだが……。


初めからになっている?


そんなはずはない。私は昨日、確かに一日目の夜まで進めたはずだ。なんでだ。


……まあいい、昨夜の悪夢のせいで記憶の混濁が起きているという可能性がなくも無い。そうだ、それしかないだろう。夢があまりにリアルだったから、ここまで進めた気になってしまったのだろう。いやはや、夢など見るものでは無い。それが悪夢なら尚更だ。


とにかく、ゲームを進めよう。


初めからをタップして、プロローグをスキップ。初日の宵闇くんとの会話からだ。


いままでのプレイを書き込んだノートや攻略サイトから得た情報をもとに、自分が正しいと思う回答を選択していく。ちなみにこのゲーム、好感度などという目に見える攻略情報はない。選択肢の正否も分からない。アプリだから当然だが、クイックセーブどころかセーブもない。ロードもないため一度選んだ選択をやり直すことだって出来ない。故に誤タップなど以ての外なのである!


昨日、夢で殺される羽目になった選択肢をタップしないよう気を付けて、今日も可愛いねを選ぶ。天気よりかはこっちの方が喜ぶのでは?という考察である。それに、男とバレたくないのだから可愛いと言われた方が安心するだろう。


その後は地雷を踏むことも無く、他愛のない会話が続く。


……三ヶ月経過。


…………十二月突入。


………………第一関門だ!


ぐぅっとお腹がなった。はたと気付いて時計を見ると、もうお昼になっていた。ご飯を食べよう。まだまだ、物語は続くのだから。


食後、再びゲームに取り掛かる。


宵闇くんが、月光ちゃんに男とバレる。これまでの会話で月光ちゃんがいい子で信頼出来ると分かっている宵闇くんは、己の過去をぽつぽつと語り出す。


幼少期から女の子として育てられたこと。

母親の異常なまでの過保護と過干渉が辛くなってきたこと。

父親の理不尽なほどに酷い母親に対する態度が許せないこと。

祖父の自分を見る異様な眼差しに恐怖を感じること。

父親が実父ではないという事実を知ってしまいどうしていいか分からないこと。

母親が愛情から自分を女の子として育てたのか、己の保身のために自分を犠牲にしたのかが分からず悩んでいること。

そして、もう何もかもを捨ててどこかに逃げてしまいたいと思っていること。


cvのないゲームだが、昨日の夢で聞いたハスキーボイスで脳内再生余裕です。

涙を流し、月光ちゃんへ縋るように手を伸ばすスチルがまあ切なくも美しい。


宵闇くんの手を握ろうと月光ちゃんも手を伸ばすのだが、ここでバンッと教室のドアが開く。

そこには目を血走らせ、包丁を持った宵闇くんの母親の姿が!なんでここまで来る途中で止められないんだよ。


私の宵闇に近付くな!!と叫び、包丁で刺そうとしてくる。すぐ殺そうとしやがる……親子だなぁ。


母様やめて!と両手を広げ、月光ちゃんを守る宵闇くん。うむ、これぞ王道。ヒーローはヒロインを守るもんだ。たとえどっちも美少女にしか見えなくても、な。


ちなみに、もしどこかで一つでも選択肢を間違えていた場合、ここで宵闇くんが動かず彼の母親に首を刺されて死ぬ。信頼が足らなかったのだ。自分から赤裸々に語ったのにひでぇや。それに殺さなくてもいいじゃないか、むしろ殺した方が大変だろ、と冷静につっこんでしまう。


宵闇くんが月光ちゃんを庇ったのがショックだったのか、呆然とした母親が包丁を落とす。

どうして、どうして、と繰り返し呟く母親をそっと抱きしめ、もういいよ母様、今までありがとうと優しく囁く宵闇くん。



よし、第一関門突破。

もう何度もここまでやっているので、感慨も感動もなくちゃっちゃと進める。


問題はここからなのだから。



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