二日目朝 1
悲鳴を上げながら飛び上がるように上半身を起こす。
私は今、死んだ。
そう感じていた。
バクバクと今までにない速さで動く心臓を胸の上から押え、生きていると小さく呟く。
首に手をやり、あらぬ方向に曲がっていないことを確認する。
手や足を見遣り、こちらも異常がないことを確認。
そこでようやく呼吸が止まっていたことに気付き、大きく息を吸った。ああ、体が自在に動く!
枕元の時計を見ると、まだ朝の五時だった。
二度寝をする気にはならず、大きく息を吐いてから立ち上がる。
なんだったんだろう。
夢にしてはやけにリアルだった。
何気なく頬に触れると、びっしょりと濡れていることに気付く。
急いで洗面所に向かうと、鏡に映った私の顔は汗と涙にまみれており、死人かと思うほどに蒼白だった。
ひっ、と声が漏れた。
痛みを思い出し、手が震え出す。
顔を洗いたいが目を閉じることに恐怖を感じ、震える手でどうにかハンドタオルを水で濡らして顔を拭いた。
つられたように足も震えだし、立っているのが困難なほどになってしまう。深呼吸を繰り返し、心を落ち着ける。
大丈夫、私は生きている。
涙が溢れてこぼれ落ちる。堪らずしゃくり上げ、濡れタオルに顔を埋めた。
なんだったんだあれは。
自分が死んだと錯覚するほどの夢。
その恐怖が全身を支配し、ガタガタと体は震え、寒所にいるかのようにカチカチと歯が鳴る。
震えが落ち着くまで、一時間半を要した。
暖かいスープを飲み、私は生きていると何度も唱え、心を落ち着かせる。
今日は休日だ。
気兼ねなくお昼近くまで寝て、起きてからはゲーム三昧になるはずだったのに。
考えても答えは出ないと分かっているのに考えてしまう。
あの夢はリアル過ぎる。
なんであんな夢を見たんだ。
宵闇くんマジで美少女だった。
よし、けっこう回復したな。
二日目の朝、男の子みたいな声ですねという選択肢を選ぶと月光ちゃんは宵闇くんに階段へ突き落とされる。首の骨が折れ、ほぼ即死。事故として処理され、月光ちゃんの母親が泣き崩れて終わる。
なんとも酷いエンドである。
いくらなんでも男だとバレた訳でもないのに即殺害はヤベぇやつ過ぎんだろ!もうやだ宵闇担やめます!みたいになりかけたが、あまりにも月光ちゃんが可哀想すぎたのでとりあえず続けた。そして深みにはまっていくのである。
あそこは無難に、今日もいい天気ですねか今日も可愛いですねを選択する場面だったのに!
寄りにもよってなんでそんな地雷ワードを選んだんだよ!
はあああぁ……。
よし、落ち着いたところでゲームやるか。