三日目朝 2
見たことの無い展開が始まった。
宵闇くんは連れ去られ、月光ちゃんは見知らぬ男共に殺される日。約束の場所にはすでに宵闇くんが待っている。またダメだったかと思ったら、何故かそこには宵闇母の姿があった。これはまさか……!
「ここにはすぐに義父が来る。捕まったら最後、宵闇は二度とあなたと会えない。逃げなさい、急いで!」
ストーリーが進んだ!!
手を握り、宵闇くんと月光ちゃんは駆け出す。とりあえず月光ちゃんの家に向かうようだ。今着いたばかりなのに、トンボ帰りしないといけない月光ちゃんの体、主に足は大丈夫なのだろうか。
体力の限界が心配だったが、月光ちゃん達は幸いにも宵闇祖父に捕まらずに家まで着いたようだ。
慌ただしくドアを開けて中に入る。月光ちゃんのお母さんがそんなに慌ててどうしたの?と声をかけてきた。月光ちゃんの方へと目を向ける。娘の傍に立つ宵闇くんの姿を見て目を丸くするが、すぐに何かを察したらしく車のキーを手に取り、表に止めてある軽自動車に乗るよう急かす。
二人が車の後部座席に乗り込みドアを閉めたのを確認するとすぐに車を走らせた。どこへ向かっているのかは分からない。
「知ってたわ。月光が宵闇ちゃん……いえ、宵闇くんとお付き合いしていたこと。そしてそろそろあの男に宵闇くんの秘密がバレそうなこともね」
車を走らせながら、月光母が衝撃発言をぶちかます。嘘だろ!?てか宵闇くんのことも知ってたんかい!!
「母さんどうして……なんで、知ってるの?私、話したことないよね?宵闇くんと付き合ってることも宵闇くんの秘密も」
「ごめんなさいね、ぜんぶ聞いていたの。そのお守りに入れておいた盗聴器で」
月光ちゃんは母親がくれたお守りを手に取り、中を見る。そこには確かに盗聴器が入っていたらしい。どういうことだ?
「母さん、どうしてこんなこと……」
「可愛い可愛い月光、私の大事な一人娘。あなたには兄がいたのよ」
「え!?」
いた。過去形。
「名前は太陽。今年で二十二になるわ」
「太陽……」
「太陽はね、あの男……宵闇くんのお祖父さんに誘拐されたの」
「なっ、誘拐!?なんで宵闇くんのお爺さんがそんなことを?!」
月光母はゆっくりと車を減速させ、路肩で一時停止する。
「スペアにするんですって」
「……なんの?」
「孫が男の子じゃなかった時のための」
「でも私、宵闇くんからそんな話、聞いたことない」
「そりゃそうよ。だって宵闇くんは知らないもの。知ってるのは私と亡くなった夫と私の父と兄、あと兄嫁だけ」
は?
「母さんの、お父さんって……まさか」
「そう。あの男、深海朝露」
な、なんだって!!?
月光ちゃんの母親が宵闇くんのお父さんの娘。つまり宵闇くんは月光母の異母弟か。
えぇー……。まさかさらなる昼ドラ要素をぶち込んでくるとは思わなかった。ドロドロにドロドロを足してどうしたいんだ。ジャンル:スライムにでもしたいのかこのゲームは。