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児童文学

つるつるする毛皮

作者: 空見タイガ

 だれにだってうさぎの背をなでる権利がある。たとえば外出するお姉ちゃんの首のまわりに、いつもうさぎがのっている。あたたかなうさぎ、灰と青のまざったうさぎ、目も鼻もしっぽもないうさぎが、姉を見送るぼくを見ている。まるでなでてほしそうに。ぼくとうさぎのきもちは叶えられるべきだ。しかし姉はぼくの手をかるやかによける。ぼくとうさぎはそうして引きさかれる。

 今やみんながうさぎを愛している。だれもがうさぎを首にまきつけ、頭において、手にかかえている。白も、灰も、茶色も。ふわふわとしながらぼくを見ている。学校でも、みながうさぎからはなれることを惜しんで、だけど先生が室内ではうさぎを外しなさいというから、しぶしぶとうさぎを丸めてかばんに押しこむ。

 しかし羽鳥くんときたら、あんなにかわいいうさぎを毛ぎらいしている。

「うさぎは人をあたためるための道具じゃない」

 学級会は大盛り上がり。帰り道まで話がつづく。「うさぎの人気をねたんでいるのよ」「水をさしたいだけ」「すなおになでればよいのに」「おばかさんにはわからないのです」などなど。

 そう、羽鳥くんの意見はただのやっかみだ。ほんとうはうさぎをなでたくてたまらないはず。本能とはそういうもの。人間はうさぎで暖をとるんだ。

 ある日、よしちゃんのねこがいなくなった。あずくんのねこも。たくさんの首わだけがのこされて、ねこを首にまく人たちがでてきて、ねこを手に学校にゆき、ねこもしゃくしもねこでいっぱいになり、よしちゃんとあずくんだけがうつむいて、羽鳥くんはどなった。

「うさぎをゆるしたからだ、うさぎをゆるしたからだ!」

 公園であそんでいたぼくたちは黒いなにかをひきずって歩くサナちゃんを見つけた。金あみごしに声をかけるとサナちゃんは立ちどまった。

「さわってみる?」

 ぼくたちはひしがたのあみ目に手をつっこんで、なにかのどこかをなでた。すこしなまあたたかくて、ごみぶくろのようにつるつるとしている。

「これからわるい鳥でぬくまるの」

 そろそろ春がくる。その次に夏がきて、秋がきて、また冬にもどるというわけではなく、あたらしい冬がくる。流行は変わる。わるい鳥の次は何になるのか、ぼくにはまだわからない。

 それでも、だれにだって今すぐあたたまる権利がある。

「はやくわるい鳥を見つけなきゃ!」

 ぼくたちは大きな石と枝をひろい、ぼうけんにでかけた。

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