結
最終話です!
目が覚めると白い天井が見えた。
時計の針は10時40分を指している。
どうやら何処かに寝かされているようだ。
「先生!意識が戻りました!」
周りがなんだか騒がしくなる。
身体を起こそうとしたが力が入らず起き上がることが出来なかった。
どうしようもないのでそのまま寝ていることにした。
「ここは病院だよ。自分が誰かわかるかい?」
横から白衣の男が話しかけてきた。
この人が先生なのだろうか。
「私が……誰か?」
わからない。私は誰なんだっけ?
「やはりショックで記憶が飛んでるか……」
言われていることもよく分かっていない。
ショック?私なにかしてたっけ?
どうも寝る前の記憶が一切ない。自分に関しても。
「先生ぇ!琴葉の意識が戻ったってホントですか!」
そんな声と共に3人の男女が病室に入ってきた。
「わかるか琴葉?俺だ俺。大輝だ」
「智也だよ。良かった意識が戻って」
「結花よ。琴葉……ほんとに心配したんだから」
どうやら琴葉というのが私の名前みたい。
よく見るとネームタグにも『永井琴葉』と書いてある。
「大輝、智也、結花」
名前を繰り返し言ってみる。
不思議と言い慣れたような気がした。
同時に何か違和感を感じた。
「思い出したのか?」
「……ごめんなさい」
「会話してたら記憶が戻るかもよ」
「ゆっくり思い出せばいいわ」
「先生は他の患者の容態を見に行くから何かあったらすぐ呼ぶんだよ」
「はい」
親切な人たちだ。
「私はどうしてここにいるんですか?」
そもそもなぜ病院にいるのかがわからなかったことに気づいたので聞いてみた。
「覚えてねえのか……思い出さないほうがいいかもだけどな」
「あのね琴葉……琴葉はね、バイクの轢き逃げ被害にあったんだよ」
「轢き……逃げ?」
『幽玄町小松周辺でバイクの轢き逃げ事件。被害者は永井琴葉さん。12歳。
病院に搬送された後、内蔵破裂のため手術を行ったが術中に死亡』
唐突に何かしらの紙に書かれていたことを思い出す。
「……内臓破裂?」
「いや内臓破裂じゃなかったらしいよ」
「内臓に損傷はなし。でも筋肉に傷が入ったらしいから縫ったとは聞いてる」
「後は……バイクに轢かれただけなのに……だけって言い方はどうかと思うけどなぜか4階から落下した時と同じダメージを身体が受けているらしいんだよね」
「4階から落下?」
『非常階段の手すりが腐って崩れ落ち身体が宙を舞う。
――が手を伸ばすが届かなかった』
「うぅ……誰なの?」
「琴葉⁉大丈夫か?」
「智也ナースコール!」
智也がナースコールを押すと先程の医師がやってくる。
「琴葉が苦しそうなんです!」
「おそらく記憶が戻ろうとしているんだろう。精神が不安定になっているんだそばにいてあげなさい」
「はい」
結花が手を握ってくれる。
温かい。
『今夜肝試し行こうぜ!』
『幽玄第一総合病院?』
『コッチへオイデ……』
『足音が……』
『4階の西非常口!あそこずっとドアが閉まらないって言ってなかったか⁉』
『向こうの階段まで走れ!喰われるわよ!』
『結花と智也まで……』
『琴葉⁉』
あの夜の体験が全てフラッシュバックする。
「……結花?大輝も智也もどうしてここに?」
「琴葉?なんで急に泣くの⁉」
結花たちの顔を見ていると頬に涙が伝うのを感じた。
もう二度と会えないと思っていた3人に会えたから……3人?
「涼介は?涼介はどこ?」
「え?涼介?結花知ってるか?」
「えっ、いや知らないわ。智也は?」
「俺も知らない」
涼介はどうやら来てないみたい。
「最後に涼介にひどいこと言っちゃったから謝りたかったの」
「なあ……琴葉」
「何?大輝」
「もう記憶が戻ったんだよな?」
「まあ……多分。記憶とちょっと違うところもあるけど」
「そうか……」
大輝の様子が少し変だ。
「何?なんかおかしいことあった?」
「そのな……えーと……」
「大輝、私が言うわ」
「おう」
「あのね琴葉」
結花が私に向き直る。
「私達3人とも、琴葉のいう『涼介』って人のことを知らないのよ」
え?どういうこと?
「ちょっと待って、涼介を知らない?だって幼馴染だよ?幼稚園の頃から結花と涼介と3人でよく遊んでたよ?」
「幼稚園の頃は琴葉としか遊んでないわよ」
「え?……よく5人で集まってたよね?あのときも5人で肝試しに行こうって……」
「確かに俺が肝試しに行こうって言ったけどその時も4人だっただろ?」
「それに肝試しの時間に琴葉がこなかったから探しに行ったら血まみれの琴葉を見つけたんだ」
話が噛み合っていない。
「……この病院の名前は?」
「え?」
「この病院の名前は幽玄第一総合病院?」
「違うわよ琴葉。ここは幽玄第二総合病院」
「第二?第一は?」
「第一は数十年前になくなったって聞いてるけど……」
「三日月の祠の先にあったらしいぜ」
第二総合病院。私の記憶には第一総合病院。
そして三日月の祠の先には何もないはずだった。
ないはずの場所に第一総合病院の廃墟があった。
「記憶は戻ったかい?」
混乱していると医師が病室にまた戻ってきた。
「はい……でもなんか琴葉は涼介って人が私達といたらしいんですけど私達はそんな人知らないんです」
「涼介?」
「先生はなにか知ってるんですか?」
この医師が涼介への手掛かり?
今、私とみんなの記憶の違いのズレは大きい。
「涼介は君たちくらいの年の少年だよ」
「そうです!サッカー部の……」
「生きていたらの話だけどね」
「……え?」
涼介が死んでる?
「涼介は私の息子だった」
医師の首にかけているネームプレートを見るとたしかに涼介と同じ名字だった。
めったにない名字だからほんとに親子だったのだろう。
「涼介……くんはいつ?」
「4歳の頃。交通事故で……病院に運ばれたが救えなかった」
病院に運ばれたが救えなかった?
何処かで聞いたような……。
「私の本来の歴史だ……」
あのカルテに書かれていたことに似ている。
どういうことだ……?
◇◇◇◇
リハビリが終わった私は普段の生活に戻った。
あの日からズレが生じてしまった。
記憶も心も時間も。
それでも
涼介が生きていたことは私しか覚えていない。
理由は分からない。
「よいしょっと……」
私の目の前には壁に蔦が巻き付き壁が崩れた建物が立っている。
「ここに全ての答えがある」
私が再びあの廃病院に足を踏み入れるのはまた別のお話。
ということで曖昧エンドです。
最後に
幽玄のまにまに(最後までタイトル浮かばなかったからそのまま)
全4話読んで下さりありがとうございました。
長いようで短く稚拙な文ですみません。
最後も綺麗に終わらせることが出来ず……
謎はいっぱい残してしまった……
ともかく!
ここまで読んでくださった皆様に感謝です!
追記
幽玄のまにまに・続
という続編が出来ました。
曖昧に終わらせてしまったので続編で完結させるように頑張ってます!




