~早瀬 翔~
早瀬翔は幼少期から好奇心旺盛であった。
周りの興味関心が流行によって変わりつつあるのにも関わらず、
病的なまでに1つのことに固執する。
『過集中』という言葉を聞いたことがあるだろうか。
文字通り、過度な集中のため、日常生活に支障をきたす程の状態になってしまうことだ。
過度な集中とは、10時間、20時間続けて一つの作業に没頭すること。
そのため、翔は何かの作業を行う際には、必ずアラームをセットしている。
インフォメーターにもアラーム機能は付いているようで安心した。
これから向かう図書館で本に集中し過ぎて倒れるなど、流石に困る。
アラームのセットを試しにしてみる。
この異世界でも時間の感覚は日本と同じで、1日24時のようだ。
元の世界と変わっていないことに安堵する。
と同時に、頭の中で考えていた1つの仮定の真実味が増す。
あまりにもここは日本と酷似している。そもそも文字が日本語ということ、
ここは日本に関係するどこかなのだ。
ではここは何処なのか、それは…
「パラレルワールドってやつかもなぁ…。」
ここはどこかで元の世界とは違う未来を歩み始めている『世界』なのではないか。
では迷い込んだ自分はどのような扱いになっているのだろう。
元の世界の自分はどうなっているのか。
死んでいるのか
生きているのか
このいずれかだが、流石に想像の域を出ない。
戻って確かめなければいけないだろう。
一番怖いのは、生きている場合。
戻った場合にドッペルゲンガーのようにもう一人の自分がいる場合。
想像もしたくないが、自分が2人いるなど、世界に受け入れられる訳がないのだ。
…仮にそうなった場合。
もう1人の自分を殺すしかないのだろうか。
勘弁してほしい、殺人などする気などはないし、自分に居場所を自分に取られるなど許容できる訳もない。
などと考え、都市大図書館に向かって15分ほど。
到着したのだが…。驚いて空いた口が塞がらない。