~インフォメーター~
「これが…インフォメーター」
出てきたものは、スマートフォンから電極のコードが出ているようなものだった。
「そうです。まず、セットアップが必要ですので、インフォメーターから出ている電極を2つ、首の後ろ辺りに張り付けてください」
電極を首にか…感電とかしそうでメッチャ怖いわ…。
そんな様子を見た亜人…そういえば名前も聞いてなかったな。
まぁ、でもここのスタッフなのだろう。
心配そうな目で見てくれるが、おそらく皆付けているのだろう。
目の前の亜人も首からチラリとコードが見えている。
ならば…安心だろう。
「わかりました。こうかな…、ってぇ!?」
首に何かピリッとした感触が走る。
まるで鳥肌を強制に立たされたような感触に背筋が伸びる。
「痛かったですか?でも初回だけなのでもう大丈夫ですよ。起動には起動ワードが必要になります。
起動したかったら『アップ』と一言見てください」
「わかりました。…『アップ』」
発声した直後、視界が白に染まる。
寝る前など、瞳を閉じた時の闇に包まれるようなソレではなく。
完全なまでの白、恐怖さえ感じる。視界を奪われるという恐怖が脳に強烈な不安をもたらす。
白白白白
白白白白
白白白白
白白白白
白白白白
白白白白
白白白白
白白白白
白白白白
わずかな時間が経った後、白の世界の中心に『初めまして』と文字が現れる。
まずは一安心。脳がイカれた訳ではないようだ。
軽快な音楽が脳に響くと共に視界が晴れていく。
目の前の亜人がとても近くに寄って…近い近い!?
「ふあっ、驚きました!……ちゃんと起動できましたか?」
「えぇ、多分起動できた…のかな。特に表示とかは無いですが…」
「あぁ、呼びかけ無いと特に表示とかはないのですよ。生活に影響が出ちゃいますからね」
「なるほど」
常に表示が上がっていると事故などの元になるからだろうか…。
実に合理的だ。素晴らしい商品だ。欲しい。
「では、これで失礼しますね。困ったらまたここに来てください。私はここのスタッフですので、困ったら案内しますよ。そうそう、インフォメーターの使用で困ったら『ヘルプ』と一言発すれば大抵のことは解決しますよ。では、またいずれ」
そういってとても美しい笑顔を向けられドキッとするが、これで、お別れだ。
こうして、異世界生活の第一歩として、文明機械を入手することに成功。
可能であればもう1つ欲しい。もし元の世界に戻ることがあれば特許取得し、商品化に踏み切ろう。
我がネットワークビジネスの主力商品となること間違い無しだろう。分解などできないものだろうか、ぜひ仕組みを知りたい。
そんなことを思いながらアクセスポイントを後にする。
建物を出た所で早速インフォメーターを使ってみる。
「『ヘルプ』」
視界に『どのようなご用件でしょうか』と現れ、その隣にマイクマークが現れる。
最初なのだ、簡単な呼びかけにすべきだろう。では…
「近くのトイレはどこだ?」
『はい、近くのトイレはここです。地図をミニマップ表示にします』
すごい、近くの地図と矢印案内まで…、画期的なシステムだ。近年のAR技術と酷似してるが…。
しかも音声はおそらく骨伝導で他者に聞かれていない。直接脳に響くこの感じには慣れないが、じきに慣れるだろう。
アクセスポイントから一番近くのトイレに行き、用を足す。
そして思考を巡らせる。
自分が今置かれている状況と、これからすべきこと。そして推測を立てること。