第八話 アンリ・ローク
「より詳しく世界観を知りたい!」「よく意味の分からない単語がある。」「エールベンて誰だよ。」
などなど思ってくれた方は「白龍伝説 ~知恵の塔~ 」もどうかよろしくお願いします。(エールベンさんの出番は相当後の予定だけど・・・)
Side スウィー・ミレン
最後にユキが部屋から出たのを見届けると、スウィーは座っていたソファに深く腰掛けリラックスした体制になる。
「ふぅぅーーー。ま、なんとかなったかな♪」
『よかったのか?』
スウィーの独り言に応じるように、虚空から声が響く。
「あれ?聞いてたの~?盗み聞きはよくないぞ♪ミレン君☆」
スウィーは、その声に驚くことも無くニヤニヤとした顔をしながら虚空に対して返事を返す。
『何を馬鹿なことを。私はお前だというのに。』
「アハハ☆まぁ、そうなんだけどね♪こう·······ね?乙女としてはやっぱり思うところがあるんだよね☆」
『それこそ、馬鹿なこと、だな。そもそも私達はとうの昔に性別など失ったではないか。』
スウィーと姿無き声の主·······いや、本人曰く「ミレン」は、長年の友人のような気安さで会話をする。
「でぇ~なんだっけ?えーと『よかったのか?』だっけ?何が?」
『とぼけるな。彼らの誤解を放置したことだ。』
「あぁ~~それねぇ~~。」
そう、先ほどの会話でユキは確定事項のように様々なことを語ったが、実はいくつか誤解が存在している。
一番の誤解は、スウィーはボロスをけしかけてなどいないということだ。ボロスがあれほどユキ達に怒りを向けていたのは全くの別件だ。
そもそもスウィーは、ユキ達を殺そうなどとはしていない。まぁ、ハルだけなら討伐も視野に入れていたが、ユキ達が現れた時点でスッパリと諦めたのだ。その後、ボロスの好きなようにさせていたのは事実だが、それは、アレの観察に徹していた為だ。
それに、残念ながらスウィーは相手が王女だからと言って殺しを躊躇するほど可愛い性格をしていない。彼女はそれが必要なら例え大国の王様でも殺す。ましてやそれが特殊な国とはいえ、小国でしか無いフィレアンス王国の、それもたかだか第三王女なら、証拠隠滅も容易だ。
さすがにこんな些事で人を殺すほどスウィーは猟奇的でも無いが、少なくとも「高貴な身分そうだから殺すのを止めた」ということはありえない。
「ま!大丈夫でしょ☆ユキ君も何か隠したいみたいだったしね♪」
先ほどユキが話していた内容には矛盾があった。小さな矛盾だ。
ユキは何故ハルに冒険者達が襲いかかったことを知っているのか、という矛盾だ。当然だが、ユキ達現場に来た時には冒険者達はスライムで回収済みだったのだ。後から来たユキが冒険者達のことを知るはずが無い。
では、何故ユキが冒険者達のことを知っていたのか。様々な可能性があるが、一番ありえるのは単純に「視ていた」という可能性だ。
だが、そうなると今度は何故視ていたのに介入しなかったのか、という問題が出てくる。そしてそこから先はどのように推測しようとスウィーの妄想でしか無くなってしまう。
ここまで来ると、むしろこう考えた方が自然だろう。ユキは何かしら隠したい事があって、それに気づかせない為に自ら状況を解説したのだと。
スウィーは、テミスレーナなどどうでも良かった。スウィーが敵対したく無かったのはユキの方だ。アレはあまりに異質過ぎる。
多くのスライムの様々な特性を使いこなすスウィーは万能と言っていいだけの能力を持っている。その中には感知に特化している能力もある。だが彼女の保有する全ての感覚が訴えかけてくる。ユキの在り方は、この世のものとしてあり得ない。と。
だからスウィーは事実とは異なる殺人容疑を掛けられても否定しなかった。それは彼女にとって些末な事であるという事以外にユキと敵対したく無いという思いがあったからだ。
『······そうか。スウィーが良いのなら別にいい』
ミレンもスウィーの考えは分かっていたのだろう。虚空に響く声はホッとした声音になる。
「アハハ☆相変わらずミレン君は私とは思えないぐらい優しいね♪」
『·······結局はどちらも「私」だろう』
「ま!そうなんだけどね☆」
スウィーは、姿の見えない「ミレン」と楽しそうに会話しながら、机の上のハルに食い散らかされたお菓子の中から無事な物を掴むと口に運ぶ。
「もぐもぐ··········。あ。」
『ん?どうした?スウィー。』
「いやね·······」
スウィーは、今思い出したという顔をするとミレンに語りかける。
「ーーユキ君達って宿屋に泊まれるだけのお金持っているの?」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「--おバカぁぁぁぁぁぁァァァァァァ」
綺麗に整えられた石畳の上で、その小さな体の何処から出てくるのかという音量でハルが叫ぶ。
「ーーお、お金が無いって······きょ、今日何処に泊まるんですか!?」
テミスレーナもかなりの衝撃なのだろう。普段の優しい声とは打って代わり、その声音が厳しい。というか少し泣きが入っていた。
「ーーご、ごめ「そもそもですね?ユキ様。あなたは普段割りと恰好つけるくせして肝心な所が抜けているですよ。正直私としては、街がスライムだとか、テミスレーナさんが王女だとか云々はどうでもいいんですよ。一貫して私はただ美味しいご飯とゆっくり出来る寝床があれば満足なんですよ。私そんなに難しいこと言ってます?なのにユキ様と来たら転移場所は間違えるわ、道が分かんないわ、挙句の果てに素材売り忘れた、だぁ?馬鹿なんですか?というより阿呆なんですかぁ?そもそもですねアバロンにいた時も·······」
「わーーわーー。ごめんって!?」
「·········グスンッ」
「テミスレーナさんも泣かないでぇぇぇーーーー」
道のど真ん中に女性二人(片方は狐だけど)の声が響く。日はもう完全に落ちており、魔術で光っている街灯のおかげで辛うじて光源は確保出来ているが、完全に夜だと言っていい時間帯だった。
そもそも最初はユキの固有能力の中に保存してある魔物の素材を売却して、ある程度纏まったお金を手に入れる手筈だった。
だが街に着いてから、というより街に入る前からトラブルったせいでスッカリそのことが頭から消えていた。
テミスレーナに至っては、自分の屋敷から転移してきた·····いや、転移させられてきたのだ。残念ながら、これでも彼女は第三王女。家の中でお金を持ち歩く程守銭奴では無い。
「--って言うか!「冒険者だぁ!」とか興奮して勝手にギルドマスターの部屋から出ていったのはハルだろう!」
「へぇーへぇーーー。そうですか、そうですかッ。私のせいにするんですかぁ!でも私のことが無くても素材売却、忘れてましたよねぇ!?」
「忘れてないしッ!ハルが落ち着いていてくれたらちゃんと思い出せてたしッ!」
「あっ!ほら今、「思い出す」って言いましたっ!やっぱり忘れてるじゃないですかっ!」
「ぐぬぬ·······」
「ぐぬぬ·······」
ユキとハルは完全に言い合いになってしまいヒートアップしていく。
「え、えと·····えと··········。」
怒りで我を忘れて喧嘩を展開する二人を見て逆に冷静になったテミスレーナは、しかし、結局どうすればいいか分からず、その場でオロオロするばかり。
ざわざわ······ざわざわ·····
さすがに天下の往来で喧嘩をする二人に周囲の注目が集まり始めた。
「--ゆ、ユキさん·····あ、あの········」
「そもそもお前は······」
「え·········えとハルさん····」
「ユキ様はいつもいつも·······」
·························
················
·········
···
「落ち着いてくださいっっっっ!!!!!」
ガツンッ!
「「うぎゃっっ!!」」
周囲の視線に耐えかねたテミスレーナが、普段出さない無いような怒鳴り声を出すと、その声に呼応するように金色の光の玉が形成され、二人の頭に凄い音を出しぶつかる。
二人は至近距離からの予期しない攻撃を頭に受け、たまらず気を失った。
「·····へ?······え、えぇぇぇ!!い、今の何ですかぁ!?ていうか!·······あ、あの二人共?だ、大丈夫ですか?········返事が無い········ど、ど、ど、どうしましょう!?ユキさん?ハルさん?······あぁぁもう!どうしましょう!どうしましょう!」
予想外の事態にテミスレーナは完全にパニックに陥ってしまった。だが、ユキとハルは完全に気を失っており、周りの野次馬も少しづつ増えてきており、これが、余計にテミスレーナをパニックさせた。
ついに、野次馬の何人かが衛兵の詰め所に行こうとしたが······
「あ·······あのっ!だ、だ、だ、大丈夫········です······か?」
「どうし·······え?」
完全にパニックになっていたテミスレーナはふいに背中から声が掛けられ、振り向く。そこにいたのは、地球でいう中学生くらいの女の子だった。
女の子は、黒髪が目の下あたりまで伸びており表情は伺えない。しかし、声のどもり方と赤く染まっている頬からして、相当緊張していることが分かった。なにより、頭の上の耳とフサフサの尻尾が彼女の興奮状態を何より雄弁に語っていた。また買い物の帰りなのだろう。手には食材の入った買い物袋を持っていた。
「······え、えと·······その·······」
「すみません!すみません!私なんかが話かけてすみませんっ!」
「えぇぇ!?」
どう言えばいいか分からずテミスレーナが困惑すると、女の子はペコペコと謝り始める。これにテミスレーナも余計に困惑した。
「あ······あの····その·····そちらの方は大丈夫·····です····か?私なんかが人の心配なんてすみません!」
「えぇぇと·······(何で「すみません」?)。」
テミスレーナの頭はもう何が何やらでパンク寸前で、まともに返事が返せない。
一方女の子は、ユキとハルが気になるのだろう。髪に隠れて見えないが、倒れてる二人にチラチラと視線を送っていることだけは分かった。
「あ、あの········よ、よろしければ私の家に来ません·····か?」
「え!?いいんですか!?」
女の子は、意を決したような顔をすると(髪で見えないが)テミスレーナに提案をする。これにテミスレーナは、驚愕し、勢い余って女の子の手を掴んで、迫ってしまう。
「す、す、す、すみません!すみません!あ····あの······私·····じ、実は··最初から見てて·······。と、泊まる宿が····無いと······。あっ!盗み見しててすみません!」
「わぁ~!ありがとうございますっ!本当にありがとうございますっ!」
テミスレーナは女の子のその厚意に感謝のあまり掴んだ女の子の手をブンブンと降った。女の子は、その行為に今まで以上に頬を赤く染め、耳がピクピクと尻尾がフリフリと動き感情を表情以外の全てで表現していた。
「では、その·····お言葉に甘えてもよろしいでしょうか?」
「は、はいっ!だ、大丈夫ですっ!」
(わぁ~、お、お姫様みたい········)
テミスレーナが改めてお願いをすると、女の子は少し食い気味で返事し、顔をさらに赤く染める。というのもテミスレーナの頼み方の所作から気品が滲み出ており、今だにドレス姿なのと、エルフとしての美貌が相まって見るからにお姫様だったからだ。
「で、では行きましょうっ!」
「はい!よろしくお願いします。······あ、でもユキさん、どうしましょう?」
さぁ、行こうか、という所でユキをどうするかを考える。現在、ハルは手に乗るサイズの狐なので簡単に持ち運べるが、ユキはこれでも男性である。
18歳という年齢にしては小柄だし、細見でもあるが王女様と中学生くらいの女の子では背負って運ぶのは少し無理があるだろう。最悪二人で手と足を持って運ぶしか無いだろうか。
と、テミスレーナは思ったが·······
「あ!···だ、大丈夫ですっ!·······し、失礼します。すみません。」
「え?」
女の子は、ひょいっとユキを軽々しく片手で持ち上げ、背中に背負う。
「えぇぇ········。」
テミスレーナは、その光景に絶句する。
確かに獣人族は、人族に比べて身体能力に優れている種族ではある。しかし、さすがに小柄な女の子が成人(こちらの世界で、だが)した男性を軽々と持ち上げるというのは、さすがに異常だ。この場に他の獣人族がいたら、顔を驚愕に染めていただろう。
しかし、幸か不幸かテミスレーナは常識知らずのお嬢様だった。彼女は、小柄な女の子の予想以上の力に驚いたが、獣人族だからそういうこともあるか、と納得した。
「·········あれ?」
しかし、そこで女の子が不思議そうな顔をする。
「ーー?どうしました?」
テミスレーナもその表情の変化に気づき、女の子に尋ねる。
「い、いえ········。あ、あの·········こ、この人········いくらなんでも軽すぎる気がしーー。」
クンクン
「あえ?なんかいい匂いが··········」
「~~~~~~!?!???!?!?!?」
女の子が、その違和感について話そうとした所で、早々に目を覚ましたユキがいい匂いのする方ーーつまりは女の子の髪に顔を近づけ匂いを嗅いでしまった。
男というものに免疫が無いのだろう。女の子は少し元の色に戻っていた頬を先ほど以上に赤く染めると声にならない叫び声をあげ、ユキを支えていた手を放してしまう。
結果······
ガンッ!
「痛っっったぁ!?」
ユキは尻から石畳に直撃し、その痛みに声を上げる。
「---はっ!!すみませんっ!すみませんっ!すみませんっ!」
「いやいや、大丈夫········て、あれ?どちら様?」
しばらく茫然としていた女の子は、ユキの声に我に返ると全力でユキに謝罪する。ユキはユキで全力過ぎる謝罪に反射的に許してしまいそうになるが、いまいち状況が掴めず困惑してしまう。そもそも目の前の女の子が誰かも分からない。
「··········すぴーーー」
一方ハルの方を見てみると、気絶したついでに完全に睡眠に入っており、フサフサのお腹を上に向け気持ちよさそうに眠っていた。
「---はぁぁぁぁ········」
テミスレーナはもう疲れました。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「と、いう訳でこちらの方が家に招いてくれることになったんです。」
「なるほど。それは失礼しました。」
「い、いえ·····その···すみませんでした·······」
((何故謝る?))
テミスレーナは、あまりにカオスな状況についにパニックし疲れてしまい、取り合えず歩きながら状況をユキに説明した。
ユキとしては、自分のことを助けてくれようとしてくれた子に酷いことをしてしまったことを謝ったのだが、何故か謝り返されてしまった。
(というか気絶してた?マジかよ·····ちょっと気が緩んでたかな?······いや、たぶんその力は·······)
ユキとしては至近距離の予期しえない攻撃だったとはいえ自分が気絶させられたことが、驚きだった。テミスレーナの中に神器があるのは分かっていたことだったが、そこらの神器程度ではユキを気絶させることも、そもそも感知されずに攻撃をあてることさえ難しい筈。
だとすればテミスレーナの中にある神器は、そんじょそこらの物では無いということだ。そもそも最初に感じた通り彼女はおかしい所が他にもーー
「ーーあ、あのユキさんっ!」
「え?·····あぁ、えっと何でしたっけ?」
「ですから今晩はアンリさんのお宅に泊まらせてもらいましょう。」
「あぁ、うん。お願いし·······アンリ?」
少し考え込んでしまったユキは、テミスレーナの声で戻ってくる。が、聞き覚えの無い名前が出て来て、つい聞き返してしまう。
「もうっ!聞いていなかったんですか?この子、アンリさんというらしいです。」
「え······と、アンリ・ロークです。·····すみません」
「あ、ああ。すみません。少し考え事してて話聞いてませんでした。」
(·····ん?アンリ?どっかで聞いたようなぁ······思い出せん。)
ユキは、アンリという名前をつい最近聞いたような気がして首を傾げるが、思い出せず、別にいいか、と思考を放棄した。
ちなみに、人族は基本的にセカンドネームを持つのは貴族のみである。所謂、家名という物で没落した元貴族等を除いて一般人は家名を持たないし名乗らない。王族となると今度は逆にミドルネームも増えるが、これに関してはほとんどの国では現王族しか名乗ることしか許されず、他の家に嫁いだ場合等はミドルネームを名乗ることは禁止される。
だがこれは、あくまで人族の場合だ。他種族はまた違った名づけ方をすることが多い。
その中でも獣人族では人族と違って、基本的に全ての者がセカンドネームを名乗る。これは、何処の部族を指す物かを示すためだ。というのも獣人族は最大30人程度の血縁のみで構成されたコミュニティで暮らす文化がある。人間のように国を作らないのだ。
さらに言えば同じ特徴を持つ種族ーー例えばアンリは黒狼種ーーでも、コミュニティが違えば完全に他人なのだ。しかし、それでは見分けがつかない。だから、コミュニティごとに同じセカンドネームを名乗ることで自らの所属を示すのだ。
まぁ、つまりアンリ・ロークという名前は、獣人族の黒狼種のロークという部族のアンリ。ということになる。
閑話休題
「でもいいんですか?アンリさん。お家にお邪魔してしまって?」
「·······/////」
「······あ、あれ?」
「しゅみません·······」
「えぇぇ······」
(なんか謝られてしまった········)
アンリはユキの問いかけに対して完全に沈黙してしまい下を向いてしまっている。ユキとしては、単純に二人と一匹も泊めてもらってもいいのか聞きたかっただけなのだが、何故そんなに拒否されてしまっているのか分からない。
やはり髪クンクン事件が悪かったのだろうか?と考えてしまう。
だが実際は·······
(こ、こ、こ、この人、美形過ぎるッ!?ま、まともに顔見れないよぉ~~!ど、どうしよぉぉぉ。なんか話掛けられている気がするけど、私なんかが答えていいのっ!?すみませんっ!すみませんっ!だ、だれかぁ~。助けてくださ~~い。テミスレーナさんもすごい美人だし、もう私、ダメだ。こんな空間に居続けたら死んでしまうぅ~~。)
絶賛、頭の中がめちゃめちゃになっていた。彼女は、本当に男に免疫が無いのだ。兄以外の男性とは話したこと所か、目を合わせたことすら無い。八百屋のおじさんにすら緊張してしまって、まともに会話出来ないのだ。
それを見た目だけは超美形であるユキとこんなにも至近距離にいてどうにかならない訳が無い。
これは余談だが、最初テミスレーナ達が宿が無くて困っている時にすぐに声を掛けることが出来なかったのも、そのあまりのイケメンと美人っぷりに腰が引けてしまった為だった。だからユキが気絶したおかげで話掛けることが出来たとも言えた。
実は、ユキを背負う時も出来るだけ顔を見ないようにしていた。さすがに髪の匂いを嗅がれた時は心臓が止まるかと思ったが。
そして遂に彼女は願ってしまう。
(お、お兄ちゃ~~ん!!た、たすけてぇぇ~!!!)
それは、本日二度目の悲劇を呼ぶ。
いや········もはや喜劇だった。
ドォォォォォォン!!!!
「へ?·······ひゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「ハルッ!!·······って、またか!!!」
そして土埃が晴れ、出てきたのは若ーーー
「知ってるよッ!気づいてるよッ!!またお前かッ!!!」
あの、ナレーション遮らないでもらえます?
まぁ、結論から言えば、また飛んでーーいや、正確には跳んできたのは、ユキの知っている人間だった。
「なぁっ!!なんか恨みでもあんのかっ!!??ボロスッ!!」
跳んできたボロスはこちらに視線をチラッと向けると、しかし、直ぐに興味を失ったような顔をし、アンリの方に視線を合わせた。
「ッ!?アンリさん!下がっーー」
「--アンリぃぃぃぃ!!」
「「!!??」」
その視線に気づいたユキはすばやくアンリを庇おう·····としたが、それより先にボロスは、大声でアンリの名前を叫びながらアンリに跳び付いた。その姿、まさにル〇ンダイブ。
そのスピードは夕方見たものよりも遥かに早かった。
だが········
「もうっ!お兄ちゃんっ!!恥ずかしいよっ!!」
ドカンッ!
アンリは、凄まじいスピードで迫ってきたボロスに対し、完璧なタイミングで握り拳を振り下ろした。結果、ボロスは石畳に罅を入れ、そのまま地面のめり込む。ボロスは死んではいないようだがピクピク痙攣していた。
(いやいや。地面にめり込むって、どんな力だよ·····)
ユキは心の中でそう思ったが、口には出せなかった。
「え?······あ、あぁ。すみませんっ!すみませんっ!この人は私の兄でして····その········えっと·······。こんなでも普段はいい兄なんです。すみませんっ!·····いや········こんなところ見せられて何言ってんだって話ですけど·····ホントなんですっ!普段はもっとしっかりしてて·······その今日はちょっといろいろあって··········もうっ!すみませんっ!」
「お、落ち着いて、落ち着いて。」
「-----」
「テミスレーナさん?戻ってきて?」
アンリは、突然のことに自分がどうにかしなければと取り乱し、テミスレーナはパニックになるだけの力が残っておらず意識を手放そうとしていた所をユキが頑張って元に戻す。
(······ていうか、兄って·····。あぁ、思い出した······。そういえば言ってたなぁ。『君も早くアンリちゃんのとこに行きたいでしょう?』ってスウィーが。どおりで聞き覚えのある名前だと思ったわ。でもさすがにこれは予想できねぇわ·······。はぁぁぁ·······。)
ユキは心の中で大きく溜息をつく。
「すみませんっ!すみませんっ!」
「----」
ピクピク
·······················
·············
·······
··
「取り敢えず········アンリさん。」
「すみませんっ!すみませーーーえ?あ、はひっ!」
アンリは舌を噛んだ。
「---あなたのお家に案内してもらえます?」
今日は寝よう。ユキはそう思った。
小説書くのって超大変ですね。毎日更新とかしてる人を本当に尊敬します。
自分、無理っス。




