第六話 冒険都市アドミレス
タイトル変更しました。
旧題「氷の龍は冬の精霊と空に舞う」から「白龍伝説 ~転生した俺は白き龍になりて世界を救う~」になりました。
ぶっちゃけ主人公は氷の龍じゃないし、冬の精霊も今の所出番が無かったので・・・・適当にタイトルつけてすいませんでした。
これからも拙作をよろしくお願いします。
「まったくーいきなり襲い掛かってくるとは。人というのは理性的な生き物だと聞いていたのですが、びっくりしすぎて結構な火力で吹き飛ばしてしてしまったじゃないですかぁーー······あれ?壁がない·····も、もしかしてやばいですか!?」
ハルは初めての人の街に自分で思っていたよりも興奮していたらしく、城壁を吹き飛ばしてしまったことに今更気づき焦っていた。
またユキ達が着いてきていないことにも、今ようやく気付き自分がこの後どうすればいいか分からない。
なお彼女に自分が燃やした人間のことは頭にない。殺気を持って人(狐?)に襲い掛かるのなら自ら殺されても文句言えないのは当然のことだからだ。
「······ってあれ?なんですかそれ?」
どうすればいいか分からずオロオロしてると、狐火による爆撃の煙が晴れていく。すると周囲には火傷一つ負っていない冒険者達が現れた。
とは言っても彼らが自力で炎弧から耐えきったわけではない。彼らが傷を負っていないのは身体に纏わりついている粘液状の何かのおかげだろう。
「っつ!むぐっ······っぱ、なんじゃこりゃ!!ってちょっ、待っ!もががががが。」
粘液状の何かはハルから冒険者達を守ると今度はそのまま冒険者達を覆い、その身体を拘束していく。そしてそのまま地面に沈んでいく。
この間、ハルは何がどうなっているか全く分からず混乱していた。地面に擬態する魔物はアバロンでも見たことがあり、その場合今のように地面に食われていくのも分かる。
分からないのは魔力を全く感じないということだ。いや正確には魔力は感じる。ただそれは空気中に漂う濃度の魔素とほとんど見分けがつかないほど弱くだ。こんな弱い魔力では狐火を防ぐどころか、まともな生命活動すら難しいはず。
そうしてハルが首をかしげていると自分の足元が先ほどの粘膜状の何かに覆われ、自分を先ほどの冒険者同様取り込もうとしてるのが分かった。
「ふむ·····。一体何なのかよく分かりませんが······この私を食おうとは笑止千万っ!いいでしょう!そんなに死にたければ塵も残さず消し去ってあげますっ!!
焼き尽くせ! 【炎弧】「炎てーーー
「やめんかッ!!ばか!」
「キャン!」
いざ、ハルが技を撃とうとした所で、テミスレーナを抱えたユキが来てハルを蹴飛ばした。ちなみにユキに抱えられているテミスレーナは森の中を猛スピードで通り抜けた反動で気絶していた。
「な、何するんですかっ!?」
「お前の方こそ何してんだよ!この街吹っ飛ばすつもりかっ!」
「へ?いや、それは·····」
「全くお前は·······。ん?なんだこれ?」
ハルはユキに言われて今自分がしようとしたことを振り返り反省する。さすがに街を吹き飛ばすのはまずいと理解した。(人の方は相変わらず気にしてない。)
一方その間ユキの方はこのあたり一帯に感じる変な感覚に気づいた。
「これは·····」
「どうしたんですか?ユキ様。」
「いや、この地面さぁ·····。」
ユキは自分の「ある特性」が訴えかけるおかしな感覚を不思議に思い、今立っている地面を何度か足で叩いて見た。そして、あと少しでおかしな感覚の正体を思い出せそうだった。が、
「!?······来る!」
「え?」
その前に、ユキ達の上空から何かが落ちてきた。
ユキはすばやくその場を離れた。そして落ちてきた何かが地面に衝突すると、凄まじい爆風と土埃が吹き荒れた。
ドォォォォォォン!!!!
「ひゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
「ハル!······っち!」
ユキはなんとか耐えきったが小柄になっていたハルは踏ん張り虚しく森の方へ飛んで行ってしまった。
ユキとしてもハルの方へ行きたい気持ちはあったが、土埃の中の何かから突き刺すような敵意を感じ、その場を動けなかった。
ユキは、この落ちてきた何かが放つ敵意から気絶しているテミスレーナを抱えたままではまずいと思い、一度地面に降ろすと腰に下げた愛刀をいつでも抜けるように身構える。
そして土埃が晴れ、出てきたのは若い獣人の男だった。頭には獣の耳が、尻からは尻尾がそれぞれ生えている。見た目と雰囲気からして十代後半といった所だろうか。また、黒い髪と黒い瞳を持ち、全身くまなく黒い痣のようなものが浮かんでいた。手には一本の槍を持っており、そこには男の身体の痣と同じ色と形をした紋様が見えた。
「さっきの攻撃はお前らか?」
男は手に持った槍をユキに向かって構えると口を開き、ユキに問いかけた。
「え?······あ、あぁ、それなら確かに俺らの·····!?」
尋常では無い敵意から、いつ攻撃を仕掛けられてもいいように備えていたユキは、予想外に話し掛けられたことに出端をくじかれ、つい正直に話してしまう。
すると男は文字通り目にもとまらぬ速さでユキに迫ると右手に持っていた槍を何の躊躇いもなくユキの心臓目掛けて突き刺した。ユキは余りに突然のことに避け損ね、もしそのまま何も無かったら確実にユキの胸を槍が貫いていただろう。······が
ガキィン!
「「!?」」
槍はユキの胸の前で何か固い物にぶつかったような音をたて盛大に弾かれた。これには男だけでは無くユキも驚く。今ユキは特に何もしていなかったからだ。男は自分の槍が弾かれた原因が分からない為か、またも凄まじい速さで一度大きく距離をとった。
だがユキの方は既にたった今自分を刺し殺しかけた男のことは眼中に無かった。ユキが驚いたのは男とは別のこと。
ユキは今の見覚えのある現象に、まさかと思いながらも恐る恐る背後を振り向く。するとそこには、少し前に目を覚ましユキを守るため固有能力を発動したテミスレーナが立っていた。
「えと····よく状況が分からないのですけど········。と、取り合えず喧嘩は止めましょう!」
テミスレーナとしてはユキに抱えられて人工強制スキーをさせられた挙句、目が覚めたらユキが知らない獣人に槍で貫かれそうになっていたのだ。何とか慌てて固有能力を発動させて守ったもののテミスレーナとしては危機一髪だった。
「うそだろ·······!?【精霊王の守護】··········!?それは本来······の能力。いや、····まさか·····。でもそんなこと··········」
しかし、ユキはそんなことはどうでもよかった。ユキにとって衝撃だったのはテミスレーナが今は亡きユキの、いや、この場合ファルムス・デル・ファナ・バイルドルトの実の母と同じ固有能力【精霊王の守護】を発動させたことだ。
ユキにとってこれは自らの過去に関わってくる重大な事実だった。
が、そんなことは槍を持った男には関係が無かった。彼にとって重要だったのは見たところ防壁のような物を張ったのは後ろに立つ女らしいとわかったこと。ならばまず術者の方を叩けばいいと考えたらしい男はもう一度槍を構えると再度凄まじいスピードでテミスレーナの方へ突っ込もうとした。
しかしユキは二度もそんな単調な攻撃を許すほど甘くないし、そしてなにより今のユキは、珍しく気が立っており、久しぶりの人だからといって雑魚に優しくしてやるほど余裕がなかった。
「あ゛ぁ?目障りだなぁ。固有能力【白く凍えるーー「ちょっっっっと待ったぁぁぁぁぁ」--は?」
だがユキが手っ取り早く終わらせようとすると、どこからともなく静止の声が響きわたった。その声にユキを含む全員が一瞬動きを止める。
するとユキの目の前の地面が少し盛り上がったかと思うと、そこから子供の姿をした何かが飛び出した。
「「「!?」」」
「お互い一旦落ち着こっ♪」
そして子供は無邪気な顔でそう言った。ユキは突然のことに技をとめ、獣人の男の方も槍の構えを解いた。
割って入ってきのは透き通る水色の髪と瞳を持つ少女らしき何かだった。背格好としては、まだ十歳にも満たないような子供に見えるが、この状況に飛び込んで来る度胸といい、そこはかとない演技がかった表情と口調が、恐らく見た目通りの年齢ではないことを示していた。
「······ギルマス。」
どうやら男のほうはこの似非子供の知り合いらしい。間に割って入った瞬間、落ち着きを取り戻し槍を降ろした。
依然としてユキ達に敵意こそ向けてはいるが、取り合えずこの場で戦い続ける気は無いらしい。なんらかの能力だったのか、男の身体と槍を覆っていた黒い痣のようなものはスッと消えていった。
「もうっ!ボロス君!君はいつも一直線に突っ込んで行きすぎだゾ☆」
「······すいません。」
どうやら獣人の男はボロスという名前らしい。
そしてどうやらこの「ギルマス」と呼ばれた子供はボロスの上司のような存在なのだろう。
ボロスは、見た目は子供に見える「ギルマス」とやらに怒られて黒い耳と尻尾がシュンとしていた。
「あぁ。あと、そこの白マフラーの君。」
「え、あ、はい。」
「事情、説明してくれる······よね?」
「も、もちろんですとも。」
「ギルマス」は思い出したかのようにユキの方を向くと所謂、天真爛漫な笑顔で、しかし声だけは真面目にユキに話しかけた。
(笑顔が怖い!なまじ顔が子供のかわいい笑顔に見える分余計に怖いよ!)
ユキは「ギルマス」の顔と声のギャップ具合に心底恐怖した。
そんな時ユキの「ある特性」が、森から帰ってきたものの、出てくるタイミングを逸してしまい、ついでに言うとこの後怒られることを察して逃げようとする生き物の反応をつかんだ。
「おい、そこの狐。」
ビクッ
ユキはその生き物に声を掛けながら歩みよると、さきほどの「ギルマス」に勝るとも劣らない笑顔で再度話かけた。
「何処に行こうというのだね?」
「い、いやユキ様。こ、これはですね~~~。えっと……」
思っていたより大事になってしまい、その原因が自分という自覚があるのだろう。逃げようとしていた小さな狐は見つかってしまい、焦ってしまう。
「後でお仕置きだからな。」
「······はい。」
轟沈した。
「取り合えず詳しい話は中でしよっか☆ほら君たちもおいで♪」
「分かりました。」
こっちの話しが終わったのを見計らってか、「ギルマス」は気楽にユキに話かける。ユキとしても特に断る理由もないので素直に頷いた。
「あぁ、そういえば君たち、この街は初めてだよね?」
「え?えぇ。」
「ふふっ。何で?って顔してるけど、さすがに君たちみたいな目立つ人は一度見れば忘れないよ♪」
「そんな目立ちますかね?」
ユキとしては地味な恰好をしているつもりだし、事実格好だけなら少しボロボロ過ぎるという点を除けば一般的な恰好だった(テミスレーナのドレス姿は除く)。
だがユキの持つ新雪のように真っ白な髪はこちらの世界でも珍しく、また本人はその自覚は無いが、エルフの、それも只のエルフではなくエルフの王族を母に持つユキは相当に容姿が整っていた。今は身体に対して大き過ぎるマフラーが口元部分を隠してしまっているため、その魅力も抑えられているが、マフラーをとれば出てくるのは絶世の美青年である。
まぁ、ユキの容姿を抜きにしても、テミスレーナもまたエルフ族の美少女だし、「三大魔獣」の一角である九尾であるハルは違う意味で目立つことは必至だ。たとえ門で騒ぎを起こさなかったとしても、噂になっていただろうことは想像に難くなかった。
「自覚ないんだ·····。まっ!いいけどね♫取り合えずこの街が初めてだって言うんなら様式美として言っておかなきゃね☆
ようこそ!冒険都市アドミレスへ!!」
「まぁ歓迎するかどうかは話し合い次第だけだネ☆」
「·····。」
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用語解説 炎狐
「三大魔獣」一角である九尾の成体は九個の能力を持つ。炎狐はその能力の一つ。文字通り炎を操る能力。
実はこの能力で出す炎は魔術で出す炎に比べてそんなに熱くないという弱点を持つ。だが代わりに形状を好きに操ることが出来、弱点である熱量も相応の魔力を込めれば解決出来る。
もちろんそれは熱量を上げるために必要以上の魔力が必要になるということだが、九尾は自らの体毛に魔力を貯めることが出来、また通常の魔力保有量も人間よりも遥かに多いため魔力切れになることは滅多にない。
そのため種族全体の特徴として大雑把に力を使いがちという特徴がある。人を吹き飛ばすつもりが城壁まで吹き飛ばしてしまったのは、ハルが大雑把というより九尾という種族そのものが基本的に力を適当にしか振るわないのである。
また九尾は大器晩成型の魔獣であり、年を重ねる程に尻尾の本数が増え尻尾の数だけ能力を扱うことが出来る。現在ハルの尻尾の本数は5本。故に「炎弧」を含めた5個の能力が使用可能である。
九尾の能力
「炎狐」「 」「 」「 」「 」「 」「 」「 」「 」
門番「なんか城門ふっとばされたけど、怖い人達たくさん出て来たし黙っとこ。」




