第五話 人の街
ながらく更新しなくて申し訳ありません。
これからはどの程度の頻度になるかはわかりませんが出来るだけ更新していきたいとおもいます。
また先に更新していた話をいくつか変更しました。
「ユキさん·····いえユキ様。どうか私の国を救ってもらえませんか?」
テミスレーナはユキに対して姿勢を正すと、そう言ってユキに対して深く頭を下げた。その姿勢は美しく高貴さがにじみ出ており、彼女がおそらくそれなりの身分であることを伺わせる。
だが·····
「あ、あの·····テミスレーナさん。えっとー····そのー····。と、取り合えず頭上げて貰ってもいいですかね?」
「はい?」
驚かれるか疑問を投げかけられるかと思っていたテミスレーナは、予想に反して怯えてるような声をだすユキに疑問を覚え、言われた通りに顔を上げる。
するとそこには困ったような顔をしたユキと·····
小さな体をめいっぱい使ってユキの頭の上で「私、怒ってます。」と全身で表現してる子狐がいた。
具体的にはハルのふさふさの尻尾がユキの頭をべしべし叩いていた。
「あれ?私何かハルさんを怒らせるようなことしました?」
「いえ、その·····テミスレーナさんが悪いとかではないんですが·····」
ぐぎゅるるるるるるるる
「·····(´・ω・`)」
「詳しい話は街についてからでいいですか?」
「············はい」
テミスレーナは小動物のあまりに悲しそうな目に負けた。
ちなみにこの間ガルーダは道端の草を食べていた。当然だが氷でできたガルーダに食事は必要ない。
「きゅい!」
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その後、テミスレーナも乗せてハルに急かされるままガルーダは全力で街の方へ飛び、なんとか夕方には街に着くことが出来た。
近くの森の中に着地し、遠くから街の方を見てみると巨大な壁に囲まれており、その壁も全体的に汚れなどが目立ち、この城壁が多くの魔物から中の人を長い間守ってきたことが伺える。
ちなみに来る途中、あまりの速度にテミスレーナが落ちかけたり、ハルが一回実際に落ちたり、空を飛ぶ魔物に襲われてユキが瞬殺したらテミスレーナが本気で驚いていたりした。
「これが人間の街ですかーーー!!」
「おぉーー人がたくさんいる!」
が、そんなことは忘れたかのようにハルは生まれて初めて見る街というものに興奮し、ユキも実に5年振りの人の街であり、その人の多さにちょっと感動していた。
「·····あなた達はいままでどこで暮らしてたんですか?」
「「超ド田舎」」
あまりにオーバーなリアクションをするユキ達にテミスレーナは疑問を覚えたが、二人はアバロンでの戦闘に次ぐ戦闘の生活を思い出し、すぐに頭から追い出した。
「いや、でもちょっと待て。まじで人多すぎないか?」
「あぁ、それはここが冒険都市だからでしょう。」
「冒険都市?」
いくら空路で、それも急いできたとはいえ本来なら3日かかる距離があったのだ。もう既に日は沈みかけており、本来なら街の活気は落ち着き始める時間だ。
しかし落ち着くどころか、今がピークだと言われても納得出来るほどの活気が門の外にいるユキ達にも伝わり、また魔物の死体等を持った人達が続々と街の中に入っていく。
「冒険都市を知らないのですか?」
「えーと·····すいません。」
「ふふっ。別にいいですよ。冒険都市というのは冒険者のための街でありギルドによって運営される街のことですよ。」
この世界には冒険者と呼ばれる魔物討伐を専門とする職業が存在しており、その冒険者をまとめる冒険者ギルドという組織が存在する。ここまではユキ達も知っていた。元々この冒険者ギルドでアバロンの魔物の素材を売り、金にする予定だった。
テミスレーナ曰く、冒険都市とは国や貴族によって治められている普通の都市とは違い、冒険者ギルドによって治められている都市のことらしい。
「なんで魔物を討伐するはずの冒険者ギルドが都市を運営してるんですか?」
「魔物から人を守るためですよ。冒険者ギルドは各国に支部を置くことが出来る代わりに、魔物から人民を守る義務があるんです。だからここみたいに大魔境の近くには魔物の流出を防ぐ為に冒険者ギルドが街を作って背後にある街を守ってるんです。」
「なるほど。つまりここは一種の砦みたいなものですか。」
「そういうことです。」
そんな冒険者主体の街だから、こんな時間でもーーいや、こんな時間だからこそーー街は活気に満ちているんだろう。丁度冒険者達が魔物を狩って帰ってくるから。
「·····って、あれ?」
「どうしました?ユキさん。」
「········ハルは?」
ユキが姿の見えない小動物の姿を疑問に思うと……
ドォォォォォォォォォォォォォン
次の瞬間、遠くに見える城壁のあたりで突如爆発が起きた。
「うわっ!すごい爆発でしたね·····。急にどうしたんでしょう?」
テミスレーナはその爆発音に思わず感嘆の声を上げる。
しかし一方で――
(やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい。)
ユキは額一杯に冷や汗をかいていた。
「ユキさん・・・?」
「ちょっとすいません!」
「え・・・?きゃっ!!」
ユキはテミスレーナの手を取るとふくらはぎの裏に手をまわし、所謂お姫様だっこをした。
《氷之床》
ユキが詠唱をすると目の前の地面が薄く凍り、道を形成する。そして・・・
「キャァァァァァぁぁぁぁぁぁ」
ユキはその道を凄いスピードで滑り始める。そのあまりのスピードにテミスレーナの絶叫が周囲に響き渡った。
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爆発が起こる数分前·····
ハルは初めてみる街というものに興奮しユキ達がついてきていないことに気づかず、先に冒険都市に向かって駆け出していたのだ。
「凄いですね!これが人間の街ですか。ここに昔母様が·····」
ハルの母親は元々人間のいる地域に暮らしていたことがあると聞いたことがあり、ハルにとって人間の街に行くのは昔からの密かな夢の一つだったのだ。
実の所、別にこの都市にハルの母親がいたというわけではないのだが、ハルにとって人間の街というだけで価値があったのだ。
「·····おい、あれ。」
「あぁ、いやでも·····」
しかし、ここに3つの要因が重なり悲劇が起こった。
一つはハルが魔獣であるということ。せめて人間の姿に化けていればよかったのだが、今のハルは長年の夢が叶ったことで周りの状況が見えていなかった。
二つ目は、ここが冒険都市だということ。ハルの姿を見て魔獣だと判別でき、尚且つ討伐しようと意気込める荒くれものが多くいた。
そして三つ目は·····
ハルが人という生物を知らず、そして人と価値観が違ったということだ。
「かかれ!!!!!!!」
「「「「「「「「「「おう!!」」」」」」」」」」
「ほへ?なんですか?いきなり
燃えろ【炎弧】狐火」
ハルは突如襲い掛かってきた男達に容赦なく攻撃を放つ。
「終焉の大陸」過ごして来たハルの攻撃は、人間の大陸では十分なほどにオーバーキルであり……人類を守る都市の門は一匹の狐によって吹き飛ばされたのだった。
そう、化け物だらけのアバロンで生まれ、アバロンで育った彼女は人という生物の脆弱性を知らず、そして「襲ってきたら殺す」という価値観を持っていたのだ。
そこに「手加減」という言葉は存在しなかった。
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用語解説 魔境、大魔境
この世界において魔物は卵から等ではなく、空気中の魔素から自然に発生する。(魔獣はまた違うもの。)そして魔素は世界中に均等にあるのではなく、ある程度濃淡が存在する。
結果、どうしても魔素が溜りやすい場所というものが存在し、当然そこは魔物が大量に発生し、尚且つ強力な魔物が発生しやすい。そういう場所のことを魔境という。とは言っても魔境の多くは普通に森や洞窟であり、発生した魔物が自発的に魔境の外にでることは少ないので特別警戒しなくてはならないということはない。
ただし、中には魔素が溜りすぎる場所も存在する。そういう場所では魔物が発生しすぎて外に出てきてしまったり、高度な知能を持った魔物や魔獣が積極的に人間を襲ったりすることがある。このような場所のことを大魔境という。
一応は大きい魔境のことを大魔境と呼ぶわけではないのだが、強力な魔獣が発生する都合で付近に人が住めないため結果的に大魔境は基本的に大きい。
ちなみにこの定義にあてはめた場合、ユキとハルが今まで暮らしていたアバロンは大魔境でも魔境でもない。アバロンが強力な魔物の巣窟なのは「 」のため




