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白龍伝説 ~転生した俺は白き龍となり世界を救う~  作者: 鳥之羽
第一章 冒険都市アドミレス編
14/25

第十三話 裏切り

 固有能力、能力、神器などなどを募集します。感想に書いてもらえるととても嬉しいです。名前だけとか能力の内容だけでも全然OK。


 いいセンスのものがあればどんどん本編に組み込んでいくので、どうかよろしくお願いいたします。


 カンカンカンカン!!!!


 鐘の音が街中に響き渡った。


「来たな···。」


 ヒースが呟く。今の鐘の音は魔物達が来たことの合図なのだ。


「俺はおやっさんと一緒に東門で攻撃隊に入って戦うんだけど、テミスレーナは?」

「あ、私も東門です。魔術隊で戦います。」

「じゃあ、戦うのは同じ場所か。お互い頑張ろうな!」

「は、はい。」


 そういうと最後、ヒースは先に行ってしまった。


「私も行かないと。」


 テミスレーナもすぐに動き出す。一応、鐘の音から5分ほどの猶予はあるという話だが、初撃は魔術隊の仕事なので、早めに準備しておいたほうがいい。


 今回、冒険都市の防衛において守らなければいけない門は二つ。東門と南門だ。


 アイルベット大森林はアドミレスの南東に広がっているので、急に北や西から魔物が来ることは基本的にありえない。


 そのうち、魔物達の主力が来ると言われているのが、東だ。単純に森の入口が東の方が近い、というのとテミスレーナが魔物の群れを確認したのも東だったという理由だが、圧倒的に戦力差がある現状、魔物側に小細工をする理由は無いので、基本的には東から来るものと考えて間違いないだろう。


 ちなみに今回、戦える者は4つの部隊に分けられている。


 魔物を積極的に駆逐する攻撃隊、街を守護する防衛隊、魔術で広範囲に殲滅する為の魔術隊、そして負傷者の手当てなどの戦闘の補佐をする支援隊だ。


 これが本当の戦争なら、より細かく部隊を分け戦略を練る所なのだろうが、個々で自由にしてきた冒険者を綺麗に部隊分けすることは難しいし、相手が正面から突っ込んでくる魔物の群れでは戦略もあまり意味をなさない。


 だから大きく役割だけ分けて、あとはそれぞれの役割の範囲内で好きに動くのが冒険者式、戦争の仕方だ。


「テミスレーナさん。準備はいい?あなたが最後の生命線よ。」

「は、はいっ!大丈夫です。準備できてます!」


 配置についたテミスレーナに声を掛けたのは、魔術隊の指揮を任されているフィセーラという名前の女性だ。


 彼女は第4級冒険者の女性で、ベテランの女性だ。現在、アドミレスの冒険者で最も等級の高い魔術師らしい。まさに出来る女といった感じで、周りからはとても頼りにされていた。


 ドドドドドドドドドッ


 テミスレーナがフィセーラと話していると、地響きが鳴り始める。あまりに多くの魔物に地面が揺れているのだ。


 その地響きはどんどんと大きくなっていき······


「「「グゥァァァァァァアアアアアアア!!」」」


 一斉に魔物が森から出てくる。その雄叫びは大気を震わせ、テミスレーナにまで響いた。


 あまりの迫力にテミスレーナは一瞬フリーズしてしまう。他にも、戦闘経験の少ない冒険者程、その身体が硬直した。


 いや、例え冒険者としての経験が長くても、恐怖心は抑えられない。これほどの大群が一斉に攻めてくることなど稀だからだ。


 しかし······


「恐れるなッ!!相手は魔物ッ!いつもの敵と何が違うッ!」


 布陣の最前線にいた、ギランの声が響く。その声は確かに硬直していた身体を震わせ、動かした。そして、声に触発された冒険者達は自らの恐怖を捻じ伏せ、奮い立つ。


「行くぞぉぉぉぉぉぉォォォォォォ!!!!!」

「「「おおぉォォォォォォォォォォォォ!!!!」」


 そして一斉に自らの武器を掲げ、前へと踏み出していった。


「さぁっ!攻撃隊が戦闘を始める前に出来る限り数を減らすわよっ!撃てぇぇぇぇ!」


 フィセーラの声に魔術師達は一斉に魔術を放つ。


 人によって得意な魔術や、有効射程範囲はばらばらだが、魔術による広範囲殲滅は確かに役目を果たし、魔物の先触れを殲滅した。


 しかし、そんなものは氷山の一角だ。森からは、次から次へと魔物が溢れ出す。


 それだけでは無い。一部の魔物は魔術に対して耐性があるのか、それとも全く当たらなかったのか魔術の弾幕を通過して街に迫って来る。


「うおぉぉぉぉぉぉぉおおお!!!」


 その中でも魔物の先頭にいた狼系の魔物にギランは凄い速度で近づくと、その拳を振り下ろした。


 瞬間ーー


 ドォォォォォォォォン!


 ギランの振り下ろした拳から赤い光線が爆ぜ、周囲の魔物全てを巻き込んで、文字通り消し飛ばした。


 その光線の正体が炎だということは、遠くにいるテミスレーナにでも感じられる熱量から分かった。


 ギランはそのまま拳に赤い炎を纏ったまま、次の標的を見つけると直接殴りに行く。その光景は、もしユキが見ていれば、まるで爆撃機みたいだな、と思わせたことだろう。


「あれが、()()2()()()()()『赤鬼』の固有能力(ユニークスキル)【情熱】よ。」


 そのあまりの威力に思わず戦闘中だということも忘れて茫然としてしまったテミスレーナにフィセーラが説明する。


「『赤鬼』?」

「あら?知らなかったの?結構、有名なんだけどねぇ。『赤鬼』っていうのは、あの人(ギラン)の二つ名よ。名を上げた冒険者には、そうやって二つ名がつくの。ああやって赤い炎を纏って鬼みたいに戦うから『赤鬼』。安直よねぇ。」


 そう言われて、もう一度見てみれば、そこには炎を纏って魔物を吹き飛ばし続けるギランがいる。


 その戦いかたは確かに鬼のようだと、納得できる光景だった。


「でも、あんな戦い方していたら、一瞬で魔力が空になるんじゃ······。」


 テミスレーナはギランが今も纏い続けている炎を見て、そう思った。


 実際、彼のような戦い方自体は、ある程度の魔術を修めて、身体を鍛えれば出来なくはないだろう。


 ただ、あんなに派手に戦えば魔力の消費が尋常じゃあ無いだろう。一般的な魔術師なら、あの規模の炎を作り出せば、いい所3,4発でガス欠になるに違いない。


 しかしギランは既に10発以上拳を放っているにも関わらず、いまだ疲れた様子は無い。そのカラクリは彼の固有能力(ユニークスキル)にあった。


あの人(ギラン)固有能力(ユニークスキル)【情熱】は、その感情を燃料に熱を作りだすのよ。感情が高ぶれば高ぶるほど、その炎は大きく熱くなる。うふふっ。あの炎を見る限り、実は今回のこと、結構ムカついていたのね。」


 フィセーラは、何処か楽しそうにテミスレーナに説明をする。


 テミスレーナも固有能力(ユニークスキル)だと知り、納得する。固有能力(ユニークスキル)というのは本当に理解の外にあるものなのだ。

 今でも魔力無しで感情だけであの威力が出せることに理不尽を感じないでは無いが、固有能力(ユニークスキル)というのはそういうものだ。


 それは固有能力(ユニークスキル)が強力な能力という訳では無い。ただ、一応存在する物理法則や原則、世界のルールとでも言えるものを固有能力(ユニークスキル)は簡単に無視するのだ。


「でもそんなこと私に教えていいんですか?」

「え?あぁ、いいのよ。あの人ったら固有能力(ユニークスキル)、隠そうとかしないから。実際、彼の知り合いなら皆、知っていることよ。」


 ふと、そこでテミスレーナはフィセーラの喋り方に引っ掛かりを覚える。その違和感を聞こうとした、その時、


「おおおぉぉぉぉぉい!!フィセーラァァァァ。サボんなぁぁぁァァァァァ!!!!」

「ああ、はいはい。今やるわよ。」


 戦場のそれなりに離れた場所からギランの怒声が響く。どうやらフィセーラが攻撃を止めていた所が見つかってしまったらしい。


 これは戦闘中に喋っていた自分達が悪いと思ったテミスレーナだが、フィセーナは特に反省の色無く、「しょうがないわねぇ~」と言いながら、戦闘に加わった。意外と彼女は肝が太いらしい。


 これは後で聞いた話だが、ギランは固有能力が感情由来のせいで戦闘中は、怒りっぽくなってしまうらしい。普段は頼れる優しいおやっさんだが、戦闘中は一転してもの凄く厳しくなるのだ。


「よしっ!私も頑張ろう!」


 テミスレーナは改めて集中すると、()()()()()()()()()()()()使()()()()()()魔力を練り始めた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


Side 南門


「いやー☆凄い数だね♪」


 魔物の侵攻が予想された、もう片方の南門には、しかし、冒険者は百名にも満たない数しかいなかった。


 元々魔物の侵攻は東側に確認されており、最悪南門に割いた戦力は無駄になる可能性もあったからだ。


 故に南門には、緊急時に東門に急いで駆け付けることが出来、なおかつ少数でも街を守り切ることが出来る精鋭のみが集められていた。


 スウィーに次ぐ戦闘力を持つギランとフィセーナはリーダーとして東門に配置されたが、それ以外の5級以上の冒険者は南門にいた。


 当然、第4級冒険者であるボロスも南門に控えている。


「「「グぅゥゥゥゥゥゥ」」」


 ただ予想外というか、ある意味予想どおりというか、魔物は二手に分かれており、南門の前には東門にも勝るとも劣らない数の魔物が待機していた。


 東門と違うのは魔物が綺麗に隊列を組み、大人しくしていることだろう。その口から涎が零れ落ち今にも襲い掛かってきそうだが、一匹たりとも身じろぎもしなかった。


「で?彼らはなんで来ないの?テシラちゃん♪」

「答えられません」

「ホントムカつくよね――☆······死ねばいいのに。」

「キャラが崩れていますよ。」

「おっと☆いけない♪いけない♪」


 この期に及んで情報を出し渋るテシラと彼女の主にスウィーの素が出たが、直ぐにいつもの子供っぽい笑顔に戻った。


「ですが一つだけ。」

「え?教えてくれるの?なになにー♪」


 スウィーは珍しく事前に何か教えてくれるのかと期待を込めてテシラの方を向く。しかし、そこにはいつもの感情の無い無表情では無く、少しだけだが困惑している様子のテシラがいた。

 彼女が例え少しとはいえ感情を表情にだすのは、スウィーですら初めて見る。


 その時点でスウィーは嫌な予感がひしひしとしてきた。


 テシラは少しの困惑を見せたまま、少し言い淀み言葉を発した。


「·······白い髪をしたマフラーの少年。」

「あぁ、ユキ君だね。それが?」

「彼には注意してください。」

「え?それってどういう――」


 しかし、そこから先の言葉をスウィーが紡ぐことは出来なかった。


「っ!?『魔力吸収壁(アンチマナ)』ッ!!」


 森の方角から大量の魔力攻撃が降って来たからだ。スウィーは素早く地面に擬態させているマザースライムから(エンプティ)スライムを生み出し、壁状に展開することで全ての攻撃を完全に防ぎ切った。


「どうやら敵さんが行動し始めたみたいだね☆話の続きは後でね♪」


 スウィーはテシラにそう言うと、冒険者達より一歩前に出る。彼女の前に広がるのは約1万にも及ぶ魔物の大群。さらにはその全てが決して雑魚じゃない。

 普通の冒険者ならば絶望的な状況だ。またここが普通の街であったならば、直ぐに街の放棄を決断して避難すべき状況。


 しかしそこに立つのは、冒険者の中でも頂点に位置すると言われる第1級冒険者。


「全く舐められたものだよね♪たかがこの程度で私を止められると思うなんてさ☆」


 そういうと彼女の身体が地面に、否、地面に擬態しているスライムに取り込まれていく。


 しかし、完全にスライムに取り込まれて尚、彼女の声は戦場に響いた。


「じゃあ、見せてあげようか☆私の全力を♪『万能軍隊(ワンマンアーミー)』。」


 その声と同時、地面から溢れてくる大量のスライム達。だが、いずれもただのスライムでは無い。


 先頭に現れたのは酸性(アシッド)スライム。彼らはただでさえ粘性の身体を更に伸ばし触れたものを溶かすスライム池を作り出す。


 その後ろに現れたスライムは、金属(メタル)スライム。文字通り金属の身体を持つ最硬のスライム。彼らは騎士のような形をとり、金属(メタル)スライム製の盾を構える。


 最後尾にいるのはマジックスライム。元は(エンプティ)スライムだった彼らは、吸収した魔術に自らの魔力を乗せ、放つ魔術の固定砲台だ。


 魔物達は酸性(アシッド)スライムに足を溶かされ、金属(メタル)スライムに前進を阻まれ、マジックスライムの魔術で焼き払われていく。


 中には空を飛んで行こうとする魔物達もいる。


 しかし、そこには(クラウド)スライムがいる。彼らは単体では全く力の無いスライムだが、その背に(ロック)スライムを背負う。


 見つけた敵には大質量の(ロック)スライムを投下。それは百発百中の投石器だ。空を飛ぶ魔物は勿論、その下にいる地上の魔物達もまとめて吹き飛ばしていく。


 魔物達の種類も千差万別。しかしスウィーのスライムは、その全てに対して(ことごと)く相性のいいスライムをぶつけることで、一万もの大群を街に全く寄せ付けなかった。


 スライムは決して強い魔物では無い。特殊な能力を持っていても、その大体が欠陥を抱える力だ。

 しかし、その全ての力が合わせれば、お互いの欠陥を埋め合わせることが出来る。


 そして何よりスウィー・ミレンの代名詞は、その()


 今回の戦闘において、魔物の数、約1万に対してスウィーの出したスライムの()()()()()()()()


 どのような相手であろうと、その弱点を突き、攻撃を封じ、そして圧倒的な物量差で押しつぶす。


 そのありようから彼女の技名にして、必殺技にして、二つ名が······


万能軍隊(ワンマンアーミー)


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


Side ギラン(東門)


「おらぁぁぁ!『憤拳・大噴火』!!」


 ギランは地面にその拳を押し込み、そして一気に【情熱】で炎を点火する。その炎は地面を押し上げ周囲もろとも吹き飛ばした。


「はぁ、はぁ、大分倒したな······。」


 ギランが現在いるのは戦闘の最前線。ギランの技は派手なものが多いので、魔物の中にあえて飛び込むことで大量の魔物を倒していたのだ。


「おやっさん!前に出すぎですよっ!」


 ギランと共にいるのはギランの弟子、かつ現在は伝達係でもあるヒースだ。彼の能力(スキル)は熱に対する耐性だ。彼には『暑さ』だとか『熱さ』が意味をなさないのだ。


 彼が伝達係としてギランについているのは、その能力(スキル)故だった。熱耐性を持つヒース以外が全力戦闘中のギランに近づけば、うっかり蒸発しかねないからだ。


 実は戦闘中のギランは、あまり理性が効かないのだ。というより【情熱】はがむしゃらに怒り狂っている方が効果があがるので、本人が意図的に理性を飛ばしているのだ。


 そのせいもあって戦闘をしているとついついヒースを置いて行ってしまう。ヒースは将来有望な冒険者だが、さすがにギランのように魔物の群れの中を突っ切ることが出来るほどの能力は無かった。


 本当は一番危険な自分の周りから少しでも遠ざけようというギランの考えも理由の一つなのだが、そのことを知っている者は少ない。


 ヒースは現在も少し離れた所で愛用の剣を振り回しながら、ギランに近づこうと頑張っていた。


「ふむ。随分と前に出てしまったな。ここで休憩がてら一度引くか。」


 ギランの【情熱】がどれだけ優秀でも限界はある。ギラン本人の体力の問題があるし、そうでなくとも【情熱】には、ある問題があるのだ。


 それは感情の低下だ。【情熱】は比喩では無く本当に感情を燃料にしているので、使いすぎるとどんどん『感情』がすり減っていくのだ。


 簡単に言うと、ありとあらゆることに対する「やる気」が無くなっていく。戦闘中に戦う気が無くなれば待っているのは死だけだ。


 だからギランは、自分の残りの体力も考慮して、一度退散することを考える。ここでむやみやたらに敵に突っ込んでも死ぬだけだろう。そういった体調管理は上級冒険者の必須技能だった。


 しかし今回、本人が思っているよりも焦っていたのだろう。()()()()()()()()()()()()


「ギャアアアァァァァァァァァオオオオ!!」

「なにっ!?」


 今までの魔物とは比べ物にもならないような強大な魔力が突如、()()()()()()()()()()()


「馬鹿なっ!?地面はスウィーの奴のスライムがおるはずでは無いのか!?」


 地面の下から迫ってきる類の魔物は非常に厄介だ。大抵の人間は足場が無くなれば何も出来なくなる。


しかし今回、街の近くで戦う限り地面は、イコール地面に擬態したスウィーのスライムだ。当然、地面の下に魔物が来れば、そのスライムが対処してくれることになっていた。


 だがスウィーは今回『万能軍隊(ワンマンアーミー)』を発動し、約3万体のスライムを生み出していた。マザースライムも無からスライムを生み出している訳では無い。生み出した分だけ確かに質量が減るのだ。


 そして、減った分ほんの少しだけ地面下のスライムが普段より街側に後退していた。


 その距離、およそ5メートル。


 そしてギランはそれよりも少しだけ外側に出てしまっていた。


「グルルルルァァアアア!!」

「なっ、まさかギガントモールかっ!?」


 魔物の鳴き声と共に地面に亀裂が入って行く。このままならすぐに地面は崩れ、空でも飛ばなければ助かることは無いだろう。


 その声の正体はギガントモール。


 ギガントモールは地中を進むモグラの形をした魔物だ。しかしその大きさは30メートル。


 さらに『地面同化』という種族特性を持っており、文字通り地面と同化することで魔力感知では気づけないのだ。前兆なく現れ、地面の上にあった街一つ丸呑みにしたという伝説すら存在する。


 その等級はなんと()()。全盛期のギランですら単独では討伐不可能な魔物だ。


「くっ!『憤拳・噴出』」


 ギランは地面が完全に崩れる前に、すばやく自分の手足に炎を灯すことでロケットの容量で疑似的に飛行する。疲れた現在の出力では飛び上がることは出来ないが、浮かんで高速で移動することくらいは出来る。


 このままギランは離脱しようと、そう思った時····


「うわぁぁぁぁぁぁぁ」


 声が聞こえた。


 声の主は、自分を「おやっさん」と呼び、慕ってくれる青年だ。


 ギランもヒースのことを忘れていた訳では無い。ただ、彼はもう少し遠くにいたと思っていた。彼の実力では自分に追いつくには、まだ時間がかかると。


 だが、成長期の青年はギランの予想を超えて強く育っていたのだ。


 そして今、皮肉なことに自分について来られるだけの実力があったから、ギガントモールの被害範囲に入ってしまっている。


 ヒースは空を飛ぶ手段を持たない。このままならば、あのモグラに丸呑みにされてしまうだろう。


 ギランの残り少ない体力では二人分の体重を抱えて飛ぶことは出来ない。


「おやっさーーーーん!」

「―――――――――――ッ」


 息子のように思っていたヒースが丸呑みにされていく。


 その光景がギランには妙にスローに、そして鮮明に目に焼き付く。


 ここで正しい行為は、簡単だ。ヒースを見捨てればいい。


 それは決して自分の命可愛さに言っている訳では無い。


 ここは戦場だ。実力によって命の価値が違うのだ。


 ここでヒースが死んでも、大勢には影響はほとんど無いだろう。


 しかしギランが死ねば、実績的にも、残された冒険者の精神的にも致命的になるだろう。


 それは決して許されない。そんなことは分かっている。


 だが、だがーーーーー()()()()()






「ヒーーーーースゥゥゥゥゥ」





~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


Side ???(アドミレス内部)


 アドミレス内部は外の喧噪が嘘のように静かだった。


 現在、非戦闘員の住民はスウィーの作った地下シェルターに避難しており、街には人っ子一人いないのだ。


 そんな無人の街だが、しかし今、一人の男の姿があった。


 男はフードを深くかぶっており、その顔は確認出来ない。


 男は、街中にある一つの倉庫の前で止まる。そして少し逡巡した後、倉庫に入って行く。


 その倉庫は見た所普通のものだ。冒険都市らしく魔物の素材を保管する場所のようで辺りには様々な素材が転がっている。


 しかし男の目的は素材では無かったらしく、そんなものには目もくれず奥へ奥へと進んでいく。


 そうして倉庫の端っこに辿り着いた男は、その床をコンコンと叩いた。


 それを聞いた男は頷くと、手を床に置く。


 ――次の瞬間、男の手から()()()()()()()()()()()()()()()()と、それは床にも伝播。しばらくして痣の広がった部分はまるで負荷に耐えきれなくなったかのように一人でに崩壊を始めた。


 はたして、崩壊した床の向こう側にあったのは()()()()()()()()だった。


 男は階段の存在に驚いた様子も無く、そのまま地下に降りていく。


 そうして降りて行った場所にあったのはーーー


「これが······」


 巨大な光る玉だ。それは一見巨大な水晶玉のように見えるが、何処か妖しい光を放っていた。


 男は、その玉に対して()()()()()()()()()()と、構える。それは確実に玉を破壊しるための動きだ。


「クッーーー!」


 もう槍を一突きすれば玉を破壊出来るという段階になって男は何処か躊躇いを覚えているようだった。


 しかし、ためらったのは僅か数秒。男は改めて槍を構えなおすとーー


パリィィィィン!!


 玉を破壊した。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


Side スウィー・ミレン(南門)


「――ォォォォ」

「今のは?」


 スウィーは『万能軍隊(ワンマンアーミー)』を用いて圧倒的な物量で魔物達を駆逐していた時、東門の方から今までとは比較にならないほどの大きな魔物の雄叫びが響く。


 スウィーはすぐに東門に待機させているシンクロスライムと視覚を共有する。


「これは·····ギガントモールか。ギラン君じゃあちょっと厳しいかなぁ。少しあっちに戦力を回すかな?」


 スウィーはギルドマスターとして冷静に思考していた。


 ギガントモールは確かに強力な魔物でギランの手には余る相手だろうが、所詮は2級の魔物。1級の自分には楽勝では無いが、負けることは無いだろう。


 残念ながら正直相性はあまりいいとは言えないが、ギランと協力すれば大丈夫だろう。


 しかし、東門に戦力を割く余裕は無くなった。


「うふふっ!『大森林(グレイトフォレスト)』」


 スライムと魔物がせめぎ合う戦場の少し後方。そこにいる女が言の葉を紡ぐ。


「なっ!?」


 すると地面から大量の木々が生えてくる。その量は戦場をまるまる覆ってしまうほど。


 その大成長にはスライムは勿論、魔物達も巻き込まれ、双方に被害をだす。


 しかし、スウィーにとって重要だったのはスライム達がやられたことでは無く、戦場が森のようになってしまったことだ。


 見通しの悪い森でのゲリラ戦は個体の能力の低いスライムのとって最悪の戦場だ。


 さらに問題なのは、これが明らかに強力な力を持った魔物の仕業だということだ。


 この規模の攻撃が出来、尚且つ植物を操るとなれば事前の目撃情報通りーー


「うふふっ、ごきげんようっ!!人間の冒険者の皆さま方。そして·········死んでくださるかしら?」

「魔人ッ!」


 タイミングが最悪だ。さっきから東門の方から悲鳴が聞こえてくる。あちらの戦力ではギガントモールの相手は厳しいだろう。


 スウィーには魔人と正面からやりあって倒すことが出来る自身があった。問題なのは時間だ。


 さすがに魔人を倒すには数時間は欲しい。だがその間に東門が破られ、街が蹂躙されては意味が無い。


 スウィーは、どうするべきか頭を回転させる。


 だが結論から言えば、その悩みには意味が無くなった。


 ()()()()()


「ぐっ!な、なんで······。もしかして私のコアが!?」


 スウィーが唐突に吐血したのだ。そして自分から急速に力が失われていくのが実感できる。


 スウィーは、その身体をスライムにしている。そしてスライムというのは必ずコアがあるのだ。


 コアを破壊されれば、どんなスライムも死ぬしかない。


 しかし、スウィーのコアは秘密の部屋に厳重に保管されているはずだ。街を完全に防衛している現在、街の中のコアは絶対に安全のはずだし、もし、街の中に入れたとしてもコアの位置を特定することは出来ないはずだ。


 このままだとスウィーは確実に死ぬ。


 せめてもの抵抗に残った力でスライムを大量に作り出す。しかし、指揮することが出来ない状態ではスライムは雑魚だ。時間稼ぎにもならないだろう。


 そしてコアを破壊した存在を確認するため、コアを保管していた部屋のシンクロスライムと視覚を同期する。


 そこにいたのはフードを被り、槍を持った男。


 一見、不審者でしか無い。しかし、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 そう、スウィーのコアを破壊した男の名はーー


「ボ····ロス··············」


 その言葉を最後にスウィーの意識は闇に沈んだ。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


Side テミスレーナ(東門)


 その光景は正に地獄と言っても過言では無かった。


「うわぁぁぁぁ」

「た、助けてくれぇぇぇぇ!!」

「俺の腕がぁぁぁああ!」


 あたりに響き渡るのは冒険者達の悲鳴。そして彼らの身体だった肉だ。


 ギランというカリスマを持つリーダーを失った冒険者は烏合の衆になり果てた。元々冒険者という職種は誰かの命令で動くような人間では無い。


 加えてギガントモールという圧倒的な力を持った魔物の出現。それは彼らの冷静さを奪い、集団を瓦解させるには十分だった。


「攻撃隊を急いで下がらせてッ!魔物の相手は防衛隊に任せるのよ!あのモグラは私達(魔術隊)が足止めするわ。ともかく今は負傷者の救助最優先ッ!」


 ギランがいなくなった今、フィセーラが必至に指令を出していた。しかし、この危機的状況に完全に手が回らなくなっている。


 特に最前線で戦闘をしていた攻撃隊の被害は大きく、生き残ったものも何処かの四肢を失っている場合がほとんどだった。


 今はかろうじて魔術隊がギガントモールの足止めをし、防衛隊が魔物の相手をすることで最悪の状況は避けられているが、それもいつ崩壊するか分からない。


 さらに悪いことにーー


「フィセーラさん!」

「なにッ!今、忙しいの見て分からない!?」

「そ、それがギルマスのシンクロスライムが······」

「――え?」


 伝令役をしていた男の言葉にフィセーラだけでなく周囲の喧噪が止む。


 そして男の方を見てみれば、その手に乗る小型のスライムーースウィーから連絡用で渡されていたシンクロスライムが溶けて死んでいく所だった。


 シンクロスライムは二体で一体のスライムだ。片方が死ねば、もう片方も自動的に死ぬ。だがこのスライムが同期していたのはスウィー本体だ。


 それはつまりスウィーの死亡を意味する光景だった。


「うそ·······」

「あのギルマスが····負けた?」

「そんなぁーーーもうだめだぁぁぁぁああ!」


 そうして絶望が周囲を支配する。現在スウィーを除いてギガントモールを倒せる者はこの街にはいない。


 全員の頭に全滅の二文字が浮かんだ。


「―――っ」


 それはテミスレーナも変わらない。彼女は生まれて初めての死の恐怖に心が折れていく音が聞こえるようだった。


 自分よりも圧倒的に強かったギランやスウィーが次々とやられ、今ではもうこの状況をひっくり返せる手は無い。


 温室でぬくぬくと育ってきたテミスレーナに耐えられる状況では無い。


 もう死ぬしかーー













()()()()()()()()?』


 声が聞こえた。


 小さい女の子の声だ。テミスレーナは思わずあたりを見回す。


 しかし、周りにいるのは大人だけだ。子供など影も形も無い。


『ちから、あげようか?』


 しかしまた声が聞こえる。見てみると自分以外に声に気づいている様子の人間はいない。


 その声は不思議と安心するような声だった。


『わたしのちからをつかえば、あんなのかんたんにころせる、よ?』

「みんなを助けられるの?」

『みんな?よくわかんないけど――ちからがほしい、でしょ?』


 その声は確かにテミスレーナの問いに答えた。


 テミスレーナは、不思議と声の主を不審には思えなかった。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 だからテミスレーナは彼女の提案を――



『テミスレーナ――』

「――ッ!?」



 ()()()()()()()()()()()。ただ自分の名前を呼んだその声は、だがしかし、()()()()()()()()()()()()()()()


 その声が聞こえた瞬間、彼女は一瞬ためらった。


 本当に一瞬、()()()()()()()()()()()()()()()()()


「お、おい!なんだあれっ!?」


 近くにいた男の声があたりに響いた。その男はどこか焦ったような表情で東を指さす。


 まさか魔物達になにかあったのかとそちらの方向を見れば、そこにいたのは――








「グゥゥゥラァァァァアアアアアアアア!!!!!!」




 巨大な竜だ。


あれ?この終わり方見たことが・・・・・気のせい、気のせい。


来週は引き続き本編更新「第十四話 助っ人」です。お楽しみに。


 あと「白龍伝説 ~知恵の塔」で神器の説明も上げているので、そちらもよろしくお願いいたします。今回結構、世界観についての大事なことを乗せているので、おススメです。


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