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1月23日(月)M7.3(5)

 飲料は、できるだけここにいる人間で均等割りをして、出した小銭については、その地区の長である永田という年配女性…といってもまだこの辺では若年といわれる60代ぐらいの若々しいおばさんに報告をした。聞くと、一緒に逃げてきている永田さんの長男という、30代ぐらいの男が東日本大震災の経験者とのことだった。

 ちょうど、稲作の勉強するために福島県にいた時に、震災に遭遇したのだという。

「昼食、一緒にどうかい?」

 畑で今から昼食というときに、津波の一報を聞き、軽トラで逃げてきたという人が多かったので、昼はいくらか分けてもらうことができた。飲料はたっぷりあり、トイレについては女性陣も数名いたのだが、誰かが幌用に軽トラックに積んであったブルーシートを提供してくれたので、何とかすることができた。畑作農家の方が多かったのは、今回幸運だったのかもしれない。様々なものが軽トラックに積んであったのも幸運だったのかもしれない。

「テレビ、見てみるか。ラジオやSNS以上の情報があるかもしれない」

 車のエンジンをかけ、公共放送にチャンネルを合わせる。宮崎県内だと民放が少なく、クロスネットになっているため、こういう時には民放の情報がダブっている場合がある。公共放送のほうが災害時は便利だ。

『…続いて交通の情報です。宮崎県と高知県では津波の被害により平野部で冠水の被害が出ています。特に宮崎県内の国道10号線を中心に通行止めの区間が広がっています。また,高速道路では宮崎自動車道の全線、東九州自動車道の全線で通行ができなくなっています。

 高知県では国道56号線、55号線を中心に通行止めが広がっています。高知自動車道でも一部区間が通行止めです。』

 映像では、宮崎県内だと思われるヘリコプターの空撮映像が流れていた。平野部が広いため、かなり広い地域を津波がなぎ払っていった痕跡が認められる映像だった。

「東日本大震災ほどじゃないが、やっぱショックな映像だな」

 独り言のように大村がつぶやく。奈美も物心ついてからの災害なのだが、福岡の片田舎で見た報道のおぼえしかない。大人になってからだと確かにいろいろ考えさせられる映像だった。

『続いて、被害の状況です。宮崎県と高知県を中心に津波の被害が出ています。宮崎県警察によりますと、津波によって12名の方の安否が不明となっています。また、高知県では船が流されたという情報が次々に寄せられているとのことです』

「これだけじゃ被害は収まらないだろうな…震災の時もそうだった」

「私は…まだその時高校生だったので…」

「だろうな。俺は30過ぎてた。ちょうど同じように海沿いの取材してたんだ。あの時は鹿児島県内だったけどな。津波注意報がわんさかなってて…今回のように逃げた。ただ、あの時は実際にこちらで被害の出るような波は来なかっただけだ。注意報だっただけに」

 大村の遠い目はいろいろなことを思い出している目だった。交友関係には関東以北の人もいたのは覚えている。たぶん、その人たちは一時期かもしれないが、被災者だったのだ。そう、奈美は思った。


――その日、結局夕方まで待って、何とか通れる海岸沿いを走り、宮崎県の都城市から高速道路が鹿児島市内まで通れたので、奈美は自宅まで帰宅することができた。

 202X年日向灘地震、そう名づけられたその地震はこれから始まる大災害の始まりであり、津波による被害で死者・行方不明者が宮崎・高知両県を中心に52名、産業や家屋の損失額が約4兆円ほどとなった。家屋被害も多少なりとも出ていたが、公営住宅の災害住宅利用などを行った結果、約3カ月後には避難住民の住宅事情も改善した…はずだった。次の災害さえなければ。

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