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1月23日(月)M7.3(2)

「動きましょう。少し行くと内陸のほうに入れる県道があったはずです。津波情報です!」

「マジかよ」

 ぼやきながら大村はハンドルを切り、国道を北に走る。平日の昼間ということもあり、元々車通りはほとんどない。

『津波情報が発表されました』

 ラジオの…DJではなくこの時間帯は局アナがローカル番組をローカルタレントとやっている時間帯なので、局アナが読み上げる。ただ、慣れないのか、慌てているのか、たどたどしい。一息置いて、アナウンサーが読み上げる。

『津波警報です。宮崎県沿岸1.5m…』

「1.5mだァ? そんなの屁でも…」

「馬鹿言わないでください。高さ50㎝でも飲まれれば、人がさらわれる…それが津波なんです!」

「お前、なんでそんなに詳しいんだよ、冷静なんだよ! 怖ェよ」

 大村が半ばパニックに襲われていることに美奈は気づいた。だが、ここは乗り切らないといけない。1.5mの津波は川も遡上する。警報が出ているのだ。

 恩師の言葉を思い出す。ちょうど奈美が高校生の時なのだ。東日本大震災は。その直前にの地学の先生が地震発生時の心得を話していた。「ゆれから命を守れたら、次は避難行動です。まずは地震の規模と震源の確認をすること。マグニチュードが6以上の時には小さくとも津波の可能性があります。震源の深さを確認してください。浅ければ可能性が十分あります。あとは震源がどこなのかも確認してください。海でなければ津波への対策はいりません。海ならば、情報の有無は確認しなくても近づかない、離れる、高台へ逃げる。大切です。近くにいる人だけでも一緒に逃げてください。津波は川も上ります。たぶん皆さんもテレビなどで見たでしょう。東北の地震でこの前津波があまり被害が出なかったからと言って、逃げなないと次に大変なことになるかもしれません」東日本大震災の直前に、マグニチュード7クラスの地震が二回あり、その時の授業で聞いた言葉だ。まさか、その直後に震災が起こるとは思っていなかったが…。

「えっと…先輩の携帯かしてください!」

「なんだよ! 何するんだよ!」

「会社に連絡しないと!」

「あ、ああ」

 大村は信号で止まっている間に携帯を投げてよこした。周りは軽トラックばかりである。荷台にも人が乗っているのは、緊急事態であるから仕方がないのだろう。律儀に信号を守っているあたりに、この地域ののんびりとした雰囲気が伝わってきた。いや、津波がそこまで迫っているわけではないというのも理由だろう。今、海岸付近の道路を走っているのだから仕方がない。どの車も山手のほうへ向かう県道へ入ろうとしている。遠くではうーーーっ うーーーーっとサイレンが繰り返し鳴っている。津波警報が出ているときのサイレンだ。

 奈美は携帯電話にアイコン状態で出してある会社の電話番号をタップした。一応会社への連絡なのだから、一番最初は電話回線を用いる。ツーツーと話し中の音が流れている。予想はしていたが、やはりつながらない。

 メールをタップし、会社にメールを飛ばし、その後SNSでも会社のアカウントにダイレクトメッセージや無料通話アプリでも無事を知らせるメッセージを送る。これでとれる連絡手段で一応すべて連絡した。2台の携帯から行っているので、どちらかのメッセージは届くと信じたい。

 次にニュースサイトやSNSの情報を見る。震源の確認。

「トロトロ走るなよー!」

 前を走る軽トラックの列が遅いのか、大村が文句を言う。

 震源の確認をする。海。海岸線から大体40㎞ぐらいだろうか。マグニチュードは最初の情報で出ていた7.3で変わらず。震源の深さは浅い…と出ていた。

 カーナビの地図を見て、川沿いからできるだけ離れる道を選出する。

「先輩、あっちの県道439号に入ってください」

「でも、日高、川ァあるぞ」

「いいんです、どんどん行くと峠のトンネルまで上れますから」

「ああ」

 軽トラックも同じことを考えているのか、同じ方向に曲がる車が多かった。

『…津波の第1波が到達するまで、大体20分ぐらいの予想です。今のうちに落ち着いて高台に避難してください。周りが避難していなくても、一人でも行動してください。周りに高台がない場合は、津波避難ビルなど、高い建物の上階に避難してください。…』

 ラジオのアナウンサーが呼びかけている。

 たぶん、高台にある峠のトンネルまで行けば大丈夫だろう。そこにたどり着くまでの時間はありそうだ…と奈美は胸をなでおろした。

「お、トンネル…って崩れてないか?」

「あ…」

 軽トラックも立ち往生しているが、エンジンを切り落ち着いて情報の確認をしている感じである。

 奈美は大村に携帯を返し、SNSを確認した。

 ほどなく津波の第一波が1.5mの高さで宮崎県の平野部と高知県の平野部を襲ったことが分かった。

津波は50㎝で人を流すのは本当です。川も遡上するので,気象庁の津波警報は1mより高い場合に発表されます。

大津波警報とか見たくない警報の一つです。しかも特別警報扱いですし…。

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