スタート
泡沫とは、儚く消えやすいもの。
幼馴染の彼女はにっこり笑って呟いた。
「私の好きな言葉なの。」
まるで、私のようじゃない?と言うような
彼女の顔を見ると、胸が苦しくなった。
彼女は傷だらけの腕を撫でながら呟く。
「私も君も皆、死んじゃえばいいのに」
半分冗談。いや、ほぼ本音なんだろう。
一人称が僕で、明るい笑顔を振り撒く
俺の好きだった彼女はもうどこにもいない。
全てが、遅い。
「俺にどうして欲しい?…できる限り尽すけど。」
彼女は顔だけこちらを向けて俺を見た。
ここまで戻ってきて欲しいと言えたらどれだけ幸せか。
「でも最後に言わせて。
××がずっと好きだった。きっとこれからも。」
言えるのは今日で最後だ。
シチュエーションも最悪だが、
コレを伝えなければ僕は一生後悔する
彼女は驚いた顔をして、涙を浮かべて笑った。
「もっと早く言ってよ。」
彼女はYESともNOとも言わずに空に体を向けた。
嫌だ。
「君からすれば、今日は最悪な日だね。
ざまぁみろ。でも唯一の友達に会えたのは嬉しかったよ」
「君が喜んでくれるのなら今日は最高な日だね」
そんなキザな台詞を言っても彼女は笑わない。
彼女は空を見ている。
「じゃあ。もう行こうかな」
どこへ?なんて、聞けるわけがなかった。
行かないでなんて、烏滸がましい。
彼女は空を飛んだ。
少なくとも俺にはそう見えた。
鈍い音が響いて、叫び声も聞こえた。
俺は、どこで間違えたのだろう。
正解なんて見当たらなかった。
そこにはムカつく程美しい夕日に染まる空しかなかった。
俺は